クリスマス・テール2012

 昔々あるところにおじいさん(ストーム)とおばあさん(アルト)が住んでいました。
「童話っていうか日本昔話ですか!?」
 住んでいました。
「スルーかよ!」
「それに、私がおばあさん役で、おじいさん役が……って……!」
「そこだけはいーじゃねーか」
 そう言って、あわあわしているアルトばあさんの肩を抱くストームじいさんでした。
「待て――――ぃ!!」
 と、そこへ、桃が上がりこんできました!
「え!? 桃が!? 上がりこんできた!!??」
 桃から手足だけ出ているという奇怪な姿は、どう見ても化け物でした。
「ひぃぃ! 悪霊退散悪霊退散!」
「おい! 攻撃だ! 剣3本一気投げ!」
「や、やめてよぉー! 化け物じゃないよぉ」
 桃がそう言うと、突然それは真っ2つに割れ、中から1人のかわいらしい女の子(ティル)が現れました。といっても、手足は桃の外に出てる状態。つまり、中途半端に桃の服を着てる風になっていました。
「金太郎だよ」
「桃太郎でなく!? せめてかぐや姫……!」
「つーか、どんな生まれ方だよ! 拾ってきたわけでもねーし!」
「というわけで、お世話になるよぉー☆」
「なんて強引!」
 ――というわけで、金ティル太郎は(無理やり)ストームじいさんとアルトばあさんと一緒に仲良く暮らしましたとさ。
 めでたしめでたし。

「いえいえ、めでたくないし、終わってもいませんよ!?」
「ていうか、名前が金太郎から金ティル太郎に変わってるし、ツッコミどころしかないよっ! ていうか、アルトさんがツッコミとか前代未聞だよ!」
「いきなりどなたですか――――!? ていうか、前代未聞じゃないですよ!」
「まぁボケ3人が集まっちゃって、誰かがツッコミ入れないとまとまらないしね……。あ、魔女っ子サンタのマニュアちゃんだよ☆」
「数年前に引き続き、また魔女っ子サンタさんですか!」
 魔女っ子サンタ(マニュア)が突然現れました!
「ふふふ。かごに入ったパンとワインを戴きだぁ――っ!!」
 突然、魔女っ子サンタ・マニュアはそう叫ぶと、かごを奪って逃走を始めました。
「えぇっ!?」
「はぁっはっは――――! 返してほしくば、森の奥の鬼が島まで来ることだな!」
 ほどなくして、彼女の姿は見えなくなってしまいました。
「っていうか、サンタのくせに物を奪うってどういうことですかー!? 泥棒じゃないですかやだー! ていうか、森に島があるの!? 魔女なのに鬼なのー!?」

「――というわけで、金ティル太郎よ。森の奥の鬼が島に住む魔女っ子サンタを退治してくるのだ」
「えぇー。面倒くさいよー」
 ストームじいさんの言葉に、全くやる気のない金ティル太郎。
「でないと、おまえの今日の晩ご飯ねーぞ」
「行ってきます」
 あっさり行くことを決意する金ティル太郎でした。
「気をつけてくださいね。あと、これ――」
 アルトばあさんは、台所から――
「きび団子?」
「包丁です」
 包丁を持ってきて、金ティル太郎に渡しました。
「危険物!! 銃刀法違反だよぉ!?」
「だって、魔女っ子サンタを退治するのに、武器が必要でしょう」
 もう完全に退治する方向に話がまとまっていました。
「えぇー!? じゃあ、とりあえず持っていくよぉ」
 ――こうして、金ティル太郎は旅に出ました。

 金ティル太郎が森をしばらく歩いていると、小人の家が見えてきました。
「まぁ、なんてかわいらしい小人の家!」
 金ティル太郎は家に入ろうとしました。
 しかし、小人の家は小さすぎて(高さ推定1.5cm)入れませんでした。本当にかわいらしいサイズでした。

 金ティル太郎は諦めて、先へと歩いていきました。
 またしばらくすると、前方に、今度はお菓子の家が現れました。
「まぁ、なんて美味しそうなお菓子の家!」
 金ティル太郎はお菓子の家を食べ尽くして、怒り狂うお菓子の家の主である魔女(明子)に追われながらも、目的地を目指します。
「え!? 私の出番、これだけ!?」

 しばらく走ると、次は茨の城、略して茨城が見えてきました。
 茨城に入ると、中で眠り姫(日向)が眠っていました。
「まぁ、なんて美しい姫!」
 金ティル太郎が日向眠り姫にキス――
「――するのは、俺の役目だ!」
 と、突然どこぞの王子(輝也)が現れました。
「じゃあ、任せるよー」
「美味しいところはいただくよ☆」
 王子がキス(魚)を食らわすと、日向眠り姫の口からリンゴが零れ落ちました。
 そして、日向眠り姫は目を覚ますと――
「このセクハラヤロ――――!!」
 ブチ切れた日向眠り姫に追われながらも、金ティル太郎は目的地に向かいます。
「キスしたの私じゃないんだけどねー!?」
「というか、『キスなんて、キャッ(照)』な健全な読者のために、わざわざ魚にしてみたんだけどね。本当はちゃんとキスしたかったよ」
「いらないわよ!」
 日向眠り姫はブチ切れたまま、セクハラ輝也王子を追いかけていってしまいました。
「その呼び名、ひどいなぁ」

 また森の中を行く途中、赤い靴を履いて踊り狂う少女(アリス)に出会いました。
 踊り狂うアリスは言いました。
「あぁ、そこを行く金ティル太郎! 赤い靴を履いたら踊りが止まらなくなってしまったので、助けてください!」
「まぁ、なんてかわいそうな少女! しょうがないなぁ。この金ティル太郎が助けるよ〜!」
 そう言うと、金ティル太郎は包丁を手に――

 ――……この先は恐ろしくてとても書けません……(震え声)

「って、ちょっとストップ! ストーップ!!!!」
 迫り来る金ティル太郎を慌てて止める踊り狂うアリス。
「え? なんでぇ? どうしたのー?」
 なんで止められたのか、まったくもって理解していない様子の金ティル太郎。
「包丁持って迫ってくれば、そりゃ止めるって! 金ティル太郎、怖い!」
「大丈夫。一瞬で終わるよぉ」
「一瞬で終わるってなにが!? 命が!?」
「逃げないでよぉ!」
「逃げるよ!」
 なぜか金ティル太郎が踊り狂うアリスを追いかけるはめになりながらも、一応先を進みます。

「はぁはぁ……。ここ、どこ……?」
 踊り狂うアリスが踊りながら辿り着いたのは、鬼が島でした。
「ところで、その呼び名、なんか変じゃない?」
 そう? なら、少女アリスが踊りながら辿り着いたのは、鬼が島でした。
「普通の呼び名になった……。って、ここ、鬼が島なの? 私が着いちゃって良かったの?」
 正確には、鬼が湖でした。
 鬼が島は、森の奥の湖の真ん中に小さくありました。
「あぁ、なるほど……」
 少女アリスは踊りながら湖の真ん中に浮かぶ鬼が島を見つめました。
 ――と、そこへ。
「踊り狂ってるアリちゃん見つけたー!」
「きゃああああああああ!! 金ティル太郎キタ――――――――!!!!」
 ドン!
「「あ」」
 どっぱーん!
 金ティル太郎は勢い余って踊り続ける少女アリスを湖に突き落としてしまいました。
「あー……」
 踊ったまま沈んでいく少女アリスを見つめる金ティル太郎。
 やばい。このままでは犯罪者になってしまう。どうしよう。
 慌てる金ティル太郎でしたが――
「ま、いっか☆」
 とすぐさま開き直るのでした。
 と、その時。突然湖面が光り、そこから怖い顔の精霊(躍人)が現れました。
「精霊って、美しいものだと思ってたよ」
「えー。おまえが落としたのは、金の都? 銀の京太??」
 金の都(都)と銀の京太(京太)――あまり聞き覚えのない名前に、金ティル太郎は「?」を浮かべつつ、答えました。
「赤い靴です!」
「人じゃなかったか!?」
「ん〜。赤い靴を脱ぎたいって言うから協力しようと思ったんだけど逃げられちゃって。とにかく、赤い靴なんです!」
「そ、そうか……? えーと、じゃあ、よくわからんが正直なおまえには――」
「金銀財宝をください!」
「そう。金――って、えぇ!? 正直過ぎじゃないか!?」
 あまりの正直っぷりに、頭を抱える精霊躍人でした。
「えー? 正直者には宝物くれるんでしょ?」
「いや、たしかに正直者だが、そもそも宝物をあげるって話ではなかったと思うぞ」
「えー? 宝物欲しいよー」
 正直者というより、わがまま金ティル太郎でした。
「金銀財宝はやれないが、金の都と銀の京太だったら――」
「いらないよー。金銀財宝がいいよー!」
 精霊躍人の言葉に、あっさり「いらない」とか言っちゃうのでした。
「あー……。では、そうだな。金銀財宝の代わりに――」
 悩みに悩んだ末、精霊躍人の出した提案は――?

「立派な船を貰いましたー」
 船に乗って鬼が島を目指しながら、金ティル太郎は立派な船を見回しました。

 以下、回想シーン。
 精霊躍人曰く、
「風の噂で、おまえは鬼が島へ行くと聞いたのだが、鬼が島へ渡るのに船が必要ではないか? 鬼が島になら、きっと金銀財宝があると思うのだが」
 ということでした。
 金ティル太郎もそれに頷き、
「わかったよー。その代わり、豪華客船ね」
「え!? ボートではいかんのか!?」
「妥協はしないよ!」

 ――と、こうして鬼が島に向かう金ティル太郎でしたが、突然船が傾き始めました。
「え!? なに!?」
 傾き出した方を確認しにいくと、なんと! 船底に穴が開いていました。
 そして今更気付いたことですが、なんと! 船は泥でできていました。
「えぇぇぇぇ――――!?」
 わがままを言う金ティル太郎に、精霊躍人からの逆襲でしょうか。
 当然泥舟は沈み、金ティル太郎は大ピンチとなりました。
(あぁ、こんな志半ばで死ぬなんてぇ……! まだ若いのに、美人薄命……しくしく)
 そんなことを自分で思っちゃう金ティル太郎なのでした。

 気が付くと、金ティル太郎は鬼が島の浜に打ち上げられていました。
「あぁ、助かったぁ……奇跡の生還! 九死に○生スペシャル〜生きてるって素晴らしい!」
 1人感動していると、いつの間にか金ティル太郎の後ろに1つの影がありました。
「……金ティル太郎〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
 それは、湖の藻屑となったかと思っていた踊り狂う少女アリスでした。
「はっ! 踊り狂ってたアリちゃん! 忘れてた!」
「湖に突き落として助けてくれないなんて、ひどいよ!」
「とりあえず、その靴を脱がせてあげるってー」
「怖いからいらない」
「大丈夫だよぉ」
 ぎゃーぎゃーわーわー。
「じゃあ、よし! この島の真ん中の塔のてっぺんまでかけっ子しましょう! 私が勝ったら謝ってよ!」
 踊りながら少女アリスが提案します。それに、金ティル太郎は――
「やだ」
 完。

 続編。
 踊り続ける少女アリスは金ティル太郎に言いました。
「それじゃあ話がすぐ終わっちゃうでしょ」
「しょうがないにゃあ……いいよ」
「じゃあ、行くよ!」
「はーい!」
「よーい、ドン!」
 こうして、よくわからない勝負がスタートしたのでした。

 金ティル太郎は塔に向かって走りながら思いました。
(踊り狂ってるアリちゃん、踊り狂いながら走るなんて大変そうだなぁ)
 踊り狂っている少女アリスも塔に向かって走りながら思いました。
(すごいハンデじゃない、これ!?)

 金ティル太郎が面倒になってその辺で居眠りを始めると、そこへ狼(大輝)が現れました。
「そんなところでなにをしてるの?」
 大輝狼が金ティル太郎に尋ねます。
「寝てたんだよー。邪魔しないでよぉ」
 寝起きで不機嫌ながらも、金ティル太郎は答えました。
 大輝狼はちょっと困ったような顔をして、
「でも、そんなところで寝てたら風邪を引くよ。あ、そうだ。塔のてっぺんの部屋には立派なベッドがあるらしいよ。そこで寝たらどうかな?」
 と、助言をしてくれました。
「んー、じゃあそうするよー。ありがとー」
「いえいえ。気を付けてね」
 そんなこんなで、大輝狼に見送られ、金ティル太郎は塔に向かって再び走り出しました。
「って、狼のクセになんで先回りしないの!? 金ティル太郎を食べるんじゃないの!?」
 金ティル太郎が去った後、突然狩人(日和)が現れ、大輝狼に文句を言い出しました。狩人のセリフじゃありません。
「えぇ!? さすがに食べないよ。食べるなら牛肉とか豚肉とか鶏肉にするって」
「なにその普通の食事!?」
「え。うん、普通の食事だけど」
「そうだけど、そうじゃなくてー!」
「ん? なに?」
「……もー!」
 本来はボケで振り回す側なのにツッコミをするはめになり、なおかつそのツッコミがままならず、不機嫌(?)な狩人日和でした。

 気を抜きつつ走っていると、今度はマッチを売っている少女(?)(陽二)に出会いました。
「えーマッチ〜マッチはいらんかね〜」
「あ、間に合ってます」
 金ティル太郎はスルーしようとしました。が、
「待てえぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
 横を通り過ぎた金ティル太郎を、マッチ売りの少女(?)陽二がものすごい勢いで追いかけてきます。
「ひゃああぁぁぁぁ!? な、なにぃ!?」
「いいからマッチを買えー! マッチでーす」
「近藤○彦はいらないよー! ていうか、そのネタ若者には通じないよ!?」
「マッチデース」
「似てないよ!」

 金ティル太郎は必死に逃げ続け、そして、やっと塔へと辿り着きました。
 大急ぎで塔に入り、近くにあった柱時計の中に隠れました。
 マッチ売りの少女(?)陽二は言いました。
「こんな塔、吹き飛ばして、お前を見つけてやるぅ!」
 しかし、塔はれんがでできていたので、壊れませんでした。
 マッチ売りの少女(?)陽二は肺活量が足りずに酸欠となり、ぶっ倒れてしまいました。
「ていうか、そもそも塔を吹き飛ばせるわけがないよねぇ」

 と、その時。柱時計が12時を告げました。
 金ティル太郎は驚いて、
「あぁ! 12時だよ! 急いで家に帰らないと……魔法が解けてしまう!」
 一体なんのことなのかわかりませんが、慌てて大時計から飛び出すと、猛ダッシュで家に向か――
「って、ちょっと待って!!」
 ――おうとしたところを、誰かが必死に止めます。
 それは、未だ踊り狂う少女アリスでした。
「私との勝負はどうなったの!?」
「あぁー忘れてたよ。でも、もう塔の中に入ったよ。私の勝ちだよ!」
「ゴールは塔のてっぺんって言ったでしょ!」
「えぇーめんどくさいよぉ」
「問答無用! 私は一足先に塔のてっぺんへ向かうからね!」
 そう言って、少女アリスは踊り狂いながら塔を上り始めました。

「うーん。どうしようかなぁ」
 金ティル太郎は顔をしかめて塔を見上げました。
「ん?」
 よく見ると、塔のてっぺんの窓から美しい少女(姫)が顔を覗かせていました。
「おぉ! ロ○リー!!(違)」
 金ティル太郎は某魔法陣マンガをパクリつつ歌い出しました。
「♪ロ○リーよロ○リー その長い髪を たらしておくれ カモンエブリバディ アーイエー」
 すると不思議なことに、ロ○リー(仮)の髪はするすると伸びて、塔の下にいる金ティル太郎の元へと垂れてきたではありませんか!
 金ティル太郎はその髪をつたって塔を上る――はずでしたが、重みに耐えかねて、ロ○リー(仮)の方が引っ張られて落ちてしまいました。
「髪で上るなんて無理ですよぉ〜。あ、ラプンツェルの姫です〜」
 ラプンツェル姫が自己紹介をします。
「あ、私は金ティル太郎だよぉ〜。ところで、なんで塔のてっぺんに?」
 金ティル太郎の質問に、
「それは、私の階段代わりなんだよ! だってその塔は私の家だからね!」
 そう答えたのは、今回の騒動の元凶――魔女っ子サンタのマニュアでした。
「あー! マー! パンとワイン返してよぉ!」
「はーっはっはー! よくぞここまで辿り着いたな、金ティル太郎よ!」
「ところで、なんで階段代わり? だって、塔の中に階段あるでしょー?」
「あぁーそれがねー……」

 その頃、踊り狂う少女アリス――
「……なっ、なんなのコレぇ――――!!!!」
 踊り狂いながら少女アリスの見る先には、階段がありませんでした。というか、崩れていました。
「あと1階上がればてっぺんなのに! 99階も上がってきたのにーっ!! おかげでレベル99まで上がっちゃったじゃない! ラスボスだってすぐ倒せそうなくらいなのに、もー!」
 塔に踊り狂っている少女アリスの叫び声が響き渡りました。

「――というわけなんですよ」
「アリちゃん、ゴシューショーサマです……」
 金ティル太郎は、踊り狂う少女アリスを思い、合掌しました。
「なんにせよ、階段代わりとか言っても、髪で上るなんて無理あるよねぇ」
「う、うるさーい! で、金ティル太郎! パンとワインを取り返しにきたの!?」
 ごまかすように魔女っ子サンタ・マニュアが声を上げました。
「そうだよー。それがなかったら晩ご飯抜きだよぉ」
「それより先に昼ご飯じゃない? 今12時過ぎだよ」
 マニュアが塔の中の柱時計を確認して言いました。
 すると、金ティル太郎は思い出したように、
「あっ! そうだよ! 急いで家に帰らないと!」
「え、なんで!?」
「魔法が解けちゃうよー」
「魔法!? ていうか、パンとワインいいの!?」
「あっ! いるよ! じゃあ、どうしようか!?」
「えーっと、じゃあ、化かし合いでどう!?」
 魔女っ子サンタ・マニュアが勝負方法を提案します。
「え、私、化けられないよ?」
 金ティル太郎が困ったように言います。
「だって魔法が解けるとか言ってるし、なにか化けられるんじゃないの?」
「魔法=化けるなの?」
「んーと、童話的にそうかなって」
 わけのわからないことを言いつつ、結局化かし合いに決定したようです。

「じゃあ、まずは私から! なにに化けようかなー?」
 魔女っ子サンタ・マニュアは腕を組みながら考えます。
「2人とも、頑張ってください〜」
 ラプンツェル姫がにこにこしながら見守っています。
「ねー。豆とか小さいものにも化けられるのー?」
 金ティル太郎がふと尋ねると、
「誰が豆粒どチビか――――っ!!!!」
 と、某錬金術師のようなキレ方をする魔女っ子サンタ・マニュアでした。
「違うよ。普通に訊いただけだよー」
「なんだ、そうかね。もちろん、化けられるよ!」
 そう自慢げに言うと、グローリの変身の呪法を唱えて豆に化けました。
 金ティル太郎はその豆になった魔女っ子サンタ・マニュアを拾い上げると、
「へーすごいねぇ」
 と感心したように言いました。
 そこへ、和尚さん(ニール)が現れました。
「あ。そこを行く和尚さーん」
 金ティル太郎はニール和尚を呼び止めました。
「ん? なんだ?」
(あ……)
 豆の姿をした魔女っ子サンタ・マニュアは、ニール和尚にひとめぼれしました。
(え、そ、そんなことないよっ!)
「って、なんか『ひとめぼれ』って書かれた米が大量に出てきたんだが……」
 魔女っ子サンタ・マニュア、無意識の魔法(呪法)でしょうか。いつの間にか、ニール和尚の周りに大量の米が出現しています。
(そ、そんな! か、勝手にフラグ立てなくていいよ!)
「フラグかこれ!?」
(心の声にツッコまれたー!)
「んで、和尚さん。この豆あげるよー」
 金ティル太郎がニール和尚に、豆に化けた魔女っ子サンタ・マニュアを勝手にプレゼントしました。
「お、おう? ありがとう?」
(え、そ、そんな。も、貰われちゃう!?)
 どぎまぎする魔女っ子サンタ・マニュア。
「じゃあ、そういうことでー。あ、パンとワインの入ったかご、返してもらうよー」
(お酒はハタチになってからだよ!!)
「わかってるよー。これ、ワインっていうかシャンメリーだよー」
(あ、そうだったんだ!? ていうか、また心の声読まれた!)
 こうして、金ティル太郎は家へと帰っていきました。
「気を付けて帰れよ」
「また遊びに来てくださいね〜」

 さて、金ティル太郎が去った後。
 魔女っ子サンタ・マニュアはニール和尚の腕の中――じゃなくて手の中で思いました。
(こーなったら、魔女のところへ行って、声と引き換えに人間の姿にしてもらうしかないわ)
「いやいや、おまえ魔女だろ! ていうか、元の姿に戻れば普通にしゃべれるだろー!?」
 と、心の声に今度ツッコミを入れたのは、長靴を履いた狼のヤンでした。
「猫じゃねーのか」
「俺が人狼だからしょうがない」
「で、なにしに来たんだ?」
 ニール和尚の問いに、
「いや、オーガの城を奪いにきたんだが」
 そう答える長靴を履いたヤン。
「ここはオーガの城じゃなくて、魔女っ子サンタの塔らしいぞ」
「んじゃ、それでいい。貰うぞ」
「いいんじゃね?」
 こうして魔女っ子サンタの塔は、めでたく長靴を履いたヤンのものになりました。
(えー!? 塔奪われたー!?)
「さて、この豆だが――」
 ニール和尚は豆を見つめました。
(え……?)
 豆に化けている魔女っ子サンタ・マニュアは、顔(?)を赤らめドキーンとしました。
 ニール和尚は言いました。
「今夜は豆料理だ!!」
 ドドン!!
(……え゛……?)

 後日、ニール和尚談。
「割と歯ごたえがあってなかなかおいしい豆だった……こんなにおいしい豆は初めてだ」
 とのこと。

「あのー……」
「ん?」
 豆を料理する前。ニール和尚は牛を連れた少年(葉乃)に声をかけられました。
「すいません。僕はジャック葉乃。その豆を牛を交換してもらえませんか? 牛を売らなきゃならないんです」
 売らなきゃいけないのに豆なんかと交換でいいのかわかりませんが、ジャック葉乃がそう言いました。
「なんかすごい名前だな。だけど、悪ぃな。これ、今日の晩ご飯なんだ。もう豆料理で頭がいっぱいなんだわ」
「そうですか……。すいません」
 どう考えても牛料理の方が豪華な気がしますが、断られてしまうジャック葉乃でした。
 ジャック葉乃はしょぼーんとしながら、引き返します。
「あ、ちょっと待て」
 ――と声をかけたのは、ワラの先にアブを結びつけたものを持った男(緋路)でした。
「え? それと交換? それはさすがにちょっと――」
 とジャック葉乃が言ったところ、
「違う! 牛はいらない! おまえが欲しい!」
「――は?」
 こうして、ジャック葉乃とワラ(中略)を持った男緋路の追いかけっこが始まりましたとさ。
「おーい……。なんだったんだ、あれ……」
 その場に取り残されたニール和尚がボー然としながら呟きました。

 さて、金ティル太郎はというと――
「あー。また湖渡るのに、どうすればいいかなぁ」
 鬼が島の浜辺で、湖を眺めながら呟きました。
 困り果て辺りを見回すと、なんと、ボートの貸し出しを行っているじゃありませんか。
 ボートには種類があり、どれもペダルで漕ぐタイプのものでしたが、見た目がアヒル、白鳥、みにくいアヒルの子と、3パターンありました。

 ――そんなわけで。
「毎度ーなんだZE!」
 金ティル太郎はみにくいアヒルの子ボートを選び、お金の代わりに少しのパンを渡し、乗り込みました。
「楽しいー♪」
 金ティル太郎はペダルを漕ぎながら、湖上を満喫していました。
 と、その時!
 ……おや!? みにくいアヒルの子ボートの様子が……!
 チャンチャンチャンチャンチャンチャンチャンチャーン♪
 おめでとう! みにくいアヒルの子は白鳥(KIRA)に進化した!
「えー! BボタンBボタン!」
 しかし、もう遅いのでした。
「えー。このみにくいアヒルの子ボートが気に入ってたのにー」
「白鳥の方がカッコイイんだZE!」
「ていうか、進化した白鳥って、さっきの貸しボートのお店にいた店員さんじゃないのー!? なんで中の人などいない状態から中の人ができちゃったのぉ!?」
「そこは気にしちゃダメなんだZE。とにかく、飛ばしていくんだZEー!」
「え? ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
 店員兼白鳥KIRAが湖を音速で飛ばしていきます。

「うー……。気持ち悪いよぉ……」
「またのご利用をお待ちしてますなんだZE〜」
 こうして、無事(?)湖を渡りきった金ティル太郎は家を目指します。
 途中、道端にランプが落ちていました。
 そのランプをこすってみると、中から強面の魔人(PIKA)が現れました。
「ご主人。3つの願いを叶えよう」
「え? 唐突だね! それじゃあ、富、名声、あと、どこで○ドア」
「答えるの早いな! 了承した」
 そう言って、管理しきれないほどの富、そして実感はないけれど名声、そして、一瞬でどこへでも移動できるどこで○ドアを置いて、魔人PIKAは消えてしまいました。
「よーし、これで一瞬で帰れるよぉ」

 そうして、一瞬で家に着くと、金ティル太郎はストームじいさんとアルトばあさんに言いました。
「おじいさん、おばあさん。ただいまー! あ、これ、お土産の大量の富。あと見えないけど名声。それとどこで○ドアだよ」
「あらまぁ、ありがとうございます」
「それより、パンとワインはどーしたんだよ?」
 ストームじいさん、富と名声とどこで○ドアよりも、パンとワインが大事なのでしょうか。
「ちゃんと取り返してきたよー。あ、パン1個だけボート借りるのに使っちゃって足りないけど」
「なにをぉ!?」
 富や名声やどこで○ドアに比べればたいしたことでもない気がするのに、怒り狂うストームじいさんでした。
「ご、ごめんなさいぃ! それと、おじいさん、おばあさん! 実は私、月に帰らなければならないよぉ。あ、でも、晩ご飯食べてからにするよぉ」
 突然の金ティル太郎の言葉に、驚くストームじいさんとアルトばあさん。
「よくわからないけど、そんな悠長でいいんですか!?」
 驚いたのはそっちに対してでした。
「きっと大丈夫だよー。さっき12時に魔法が解けるってのは、ただ言ってみただけだよ」
「言ってみただけ!?」
「それで、今まで育ててもらったような気がするお礼に、竜宮城につれていきましょう!!」
「よくわかんねーけど、やった!?」
 こうして、金ティル太郎にストームじいさん、アルトばあさんは晩ご飯を食べてから竜宮城に向かいました。

「今までよく金ティル太郎の世話をしてくれました。お礼に宴会を楽しんでいってくれ」
 乙姫様(太一)はそう言うと、ストームじいさんとアルトばあさんを盛大にもてなしてくれました。
 そうしてしばらく竜宮城で遊び、いざ家に帰ろうという時、乙姫太一様が玉手箱を2人に渡して言いました。
「これは玉手箱です。しかし、1つ注意があります。それは……絶対に開けてはいけません!!」
「「なら渡すな――――――――っ!!」」
 ストームじいさん&アルトばあさんのユニゾンツッコミ。

 そして、家に帰ったストームじいさんとアルトばあさん。中を見たいという好奇心に耐えられず、玉手箱の蓋を開けてしまいました。
 すると、中から怪しい煙が!
「うはっ!?」
「な、なんですか?」
 煙が収まり、中から出てきたものとは……!?
「――……せーきゅーしょ……」

『宴会料金1,000,000,000円、今月中にお支払い下さい』

 ショックのあまり2人は(ご老人設定だから最初から白髪だった気もするけれど)白髪になって、請求書を燃やし、その灰を撒いて、
「枯れ木に花を咲かせまSHOWッ!」
 と言って、世界各地を渡り歩いたそうな……。
 めでたしめでたし?





☆ おまけ ☆
キャスト
グローリ・ワーカ 出演キャラクター
マニュア・ホワイト 魔女っ子サンタ・マニュア
呪法が使える魔女でサンタ。
ティル・オレンジ 金ティル太郎
月からやって来て桃から生まれた。
ストーム・カーキー ストームじいさん
なぜかパンとワインにこだわっている。
アリス・ヘイズル 踊り狂う少女アリス
靴の呪いで踊り続ける踊り子。
ニール・クラベット ニール和尚
今夜は豆料理と決めたら譲れない。
アルト・クリーム アルトばあさん
本来は天然ボケのはずのツッコミ。
ヤン・サンド 長靴をはいたヤン
美味しいところはいただいていく長靴をはいた人狼。
僕の生存日記 出演キャラクター
川野辺 葉乃 ジャック葉乃
牛と豆を交換しちゃうのはOKな少年。
神成 躍人 精霊躍人
怖い顔をした湖の精霊。
千羽 緋路 ワラ(中略)を持った男緋路
好きな人さえいれば長者とかどうでもいい。
黒井 姫 ラプンツェル姫
鬼が島の塔の階段代わりの美しい少女。
今池 輝也 セクハラ輝也王子
プレイボーイな王子様。
ひので町コント 出演キャラクター
太一 乙姫太一様
女の格好をするはめになっているけれど男な竜宮城の主。
陽二 マッチ売りの少女(?)陽二
下手なモノマネを売りつけてくる少女じゃなくて本当は少年。
明子 お菓子の家の主である魔女明子
お菓子の家の主であり魔女だけど別に悪さはしていない。
大輝 大輝狼
人間は食べない優しい狼。
KIRA 店員兼白鳥KIRA
貸しボートの店の店員兼みにくいアヒルの子から進化した白鳥。
PIKA 魔人PIKA
強面なランプの魔人。
日和 狩人日和
本来は振り回すタイプのボケ役な狩人。
日向 日向眠り姫
セクハラは許さない。
神様の望んだセカイ 出演キャラクター
片井 京太 銀の京太
銀色をした少年だと思われる。
新井 都 金の都
金色をした少女だと思われる。


本を閉じる