僕の生存日記   第10話:彼のロボットがこんなにメチャクチャなわけがない

 夏休み初日。僕こと『川野辺 葉乃』は『千羽 緋路』に声をかけられ、新作ゲームをやることになったよ。
 今回、『神成 躍人』、『黒井 姫』、『今池 輝也』の出番はない気がする。

『オ久シブリデス。葉乃サマ』
「うわっ! なんか喋った!?」
 千羽の部屋に入ると、突然何者かに声をかけられた。しかし、誰の姿も見当たらない。
 声のした方をよく見てみる。その主は――
「――あっ! 第1話に出てきたロボット! 喋った!? 喋れるの!?」
 懐かしい。第1話の千羽登場時に一緒にいたロボットだ。マスコットキャラになったりするのかとも思ったけど、そんなことはなかったよね。
「おー。あれから喋れるように改造したんだ。それと――これ!」
 千羽がそう言いながら出してきたものは、もう1体のロボットだった。
「もう1体新しく作ったんだ。最初のやつの名前が『1st』で、こいつは『Jr.』!」
 1号が『1st』なら、2号は『2nd』じゃないのか……。まぁいいや。
 1stがオーソドックスなロボット(ブリキのおもちゃみたいな)なら、Jr.は少し変わっていて、足はローラー。頭も丸くて……R2-○2(もしくはAndroidのマスコットのド○イドくん)に近い外見をしていた。
「こいつも喋るんだぜ。ほら、挨拶」
『コンニチハ』
「わぁーすごい! こんにちはー!」
 思わず挨拶を返す。
 しかし、千羽の技術はどんどん進歩している。きっと、将来はそういった職業に就くんだろう。
 将来――か……。
「よし。こいつらにも挨拶させたし、じゃあ、ゲームやるぞ!」
「あ、うん」

 2人でTVの前に座り、ゲーム機の電源ボタンを押す。
 千羽にゲームの操作を教わりながら進めていく。
「あ、そうだ。飲み物持ってくるの忘れてた。ちょっと先1人で進めといて」
「了解ー」
 そう言って千羽は飲み物を取りに台所のある1階へと降りていってしまった。
「んー……? あれ、ここ、どうすりゃいいんだ?」
 1人で進めていたら、どうにも分からない場所が出てきてしまった。
「しょうがない。すぐ戻ってくるとは思うけど、千羽を呼んでくるかー」
 そう呟いて、立ち上がろうとしたところ、
『ゴ主人様ヲオ呼ビデスカ? ナラバ、私ガ呼ンデキマショウ』
 そう1stが声をかけてきてくれた。
 なにこの高性能ロボット。すごい。
「え? いいの?」
『ハイ。デハ、行ッテマイリマス』
 1stは頭をぺこりと下げると、階段の方へ向かって――

『――オイ、ソコノオマエ。待テ』

 ――ん?
 声の方を振り返る。Jr.がいる。
 ギギ……とJr.の頭が回り、目と思われる場所が1stの姿を捉えた。
『ゴ主人様ノ役ニ立ツノハ、私ダ……! オマエハ必要ナイ……! 私ガコノ家ノロボットノ頂点ニ立ツノダ!』
 え? なに言ってんの、このロボット!!!!????
 1stの歩みが止まり、こちらを振り返った。
『――ナンデスッテ?』
『フフフ。オマエハ必要ナイノダ。ソシテ、イツカ、ゴ主人様ガロボット業界デ頂点ニ立ッタ時、私ガ1番ノロボットトシテ、世界ヲ牛耳ルノダ……!』
 いきなりそんなことを言い出した。
「ち、ちょっと、なに言ってるの!? 仲良くしなよ!」
 僕は慌ててJr.にそう声をかけた。
 だが、僕の方など見向きもしない。僕、完全に眼中にナシ。
『ナンテコトヲ考エテイルノデスカ。ソンナコトハサセマセン!』
 1stが言う。
『フフフ。言ウコトヲ聞カナイダロウトハ思ッテイタ。仕方ナイガ、力ズクデイカセテモラオウ!』
 ガキン、ガキンと、なにやら金属音を発するJr.。嫌な予感しかしない。
 ていうか、なんだよ、この状況!!??
『葉乃サマ! 危ナイ――……!』