僕の生存日記 第9話:偽装ラバーズ
1学期も最終日。
僕、『川野辺 葉乃』は、なんだか気まずい状態の『黒井 姫』に頑張って話しかけようとしていたところ、毎度の『千羽 緋路』にお邪魔されました。凹む。
それにしても、最近、『神成 躍人』と『今池 輝也』の影が薄い気がする。
「はぁ……。帰るか……」
深く沈みながら、廊下へと出た。
と、丁度向こうから歩いてきた今池君とすれ違う。
まぁ別に今池君に興味があるわけじゃないから、特に挨拶もせずにそのまますれ違ったのだが(考えてみれば、一言くらい挨拶してもよかったとは思うけど)――
「あ、輝也~♪」
今池君を追いかけて、数人の女子が向こうから来ては通り過ぎていった。
「ね~、一緒に帰ろ~?」
「駅前のアイスクリーム屋で、今キャンペーンやってるの! 一緒に行こうよ」
「あと、カラオケ行こうよ! またあの歌聴きたいな~♪」
黄色い声が後ろから聞こえてくる。
目で見なくとも、ハートマークが飛び交っているのが分かるような声だ。
そんな中、驚くべき言葉が聞こえてきた。
「ごめん。俺、今日はちょっと無理なんだ」
!?
思わず、僕も千羽も振り返っていた。
あの今池君が、女子からの誘いを断る……だと……!?
「えー!? 輝也、どうしたの!? 付き合い悪いよー!?」
「誰か他に彼女でもできたの!?」
女の子達が問い詰めている。
今池君は困ったように答えた。
「ごめんね。今日だけは用事が入っちゃってさ。また今度絶対に付き合うから。後でメールするよ」
「えー? つまんなーい」
「絶対メールしてよね!」
「うん。絶対連絡するからさ」
まだ納得していない様子の女の子達をなんとか帰してから、今池君は小さくため息をつき、ある教室へと入っていった。
「――千羽、見たか……?」
「……あぁ。ぶっちゃけ、あいつ自身には1ミクロンほども興味が湧かないが、一体どういう風の吹き回しだろうな……?」
僕達は頷くと、静かにその教室の前へ行き、窓からそっと中を覗き込んだ。
「迎えに上がりましたよ。俺のお姫様」
既に他の生徒は帰ったのか、2人きりの教室で今池君が恭しく頭を下げた相手。それは、ボブヘアーのおとなしそうな女の子だった。
「あ、あの。やめてください。すみません、なんか……///」
その子は顔を真っ赤にしながら慌てて今池君に謝った。
今池君は顔を上げると、
「いいんだよ。今日は琴音の恋人だって言っただろ?」
なんて言いながら、琴音と呼んだその女の子の手の甲に軽く口付けをした。
うっわ――――――――!! なんてキザなんだ! 見てるこっちが恥ずかしい!
琴音さんは赤い顔を更に赤くしていた。それはもう湯気が出そうなくらい真っ赤だ。
今池君はそんな彼女の手を優しく引いた。
「それじゃあ、行こうか」
「ハ、ハイッ!///」
って、ヤバイヤバイ! こっちに来る!
僕達は2人して、慌てて隣の教室へと飛び込む。
ガラガラと扉を引く音が聞こえ、足音が向こうへと少しずつ遠ざかっていくのを確認した後、僕達はそっと教室を出た。
そして、彼らの後ろ姿を捉えると、音を立てずに尾行を始めたのだった。
1学期も最終日。
僕、『川野辺 葉乃』は、なんだか気まずい状態の『黒井 姫』に頑張って話しかけようとしていたところ、毎度の『千羽 緋路』にお邪魔されました。凹む。
それにしても、最近、『神成 躍人』と『今池 輝也』の影が薄い気がする。
「はぁ……。帰るか……」
深く沈みながら、廊下へと出た。
と、丁度向こうから歩いてきた今池君とすれ違う。
まぁ別に今池君に興味があるわけじゃないから、特に挨拶もせずにそのまますれ違ったのだが(考えてみれば、一言くらい挨拶してもよかったとは思うけど)――
「あ、輝也~♪」
今池君を追いかけて、数人の女子が向こうから来ては通り過ぎていった。
「ね~、一緒に帰ろ~?」
「駅前のアイスクリーム屋で、今キャンペーンやってるの! 一緒に行こうよ」
「あと、カラオケ行こうよ! またあの歌聴きたいな~♪」
黄色い声が後ろから聞こえてくる。
目で見なくとも、ハートマークが飛び交っているのが分かるような声だ。
そんな中、驚くべき言葉が聞こえてきた。
「ごめん。俺、今日はちょっと無理なんだ」
!?
思わず、僕も千羽も振り返っていた。
あの今池君が、女子からの誘いを断る……だと……!?
「えー!? 輝也、どうしたの!? 付き合い悪いよー!?」
「誰か他に彼女でもできたの!?」
女の子達が問い詰めている。
今池君は困ったように答えた。
「ごめんね。今日だけは用事が入っちゃってさ。また今度絶対に付き合うから。後でメールするよ」
「えー? つまんなーい」
「絶対メールしてよね!」
「うん。絶対連絡するからさ」
まだ納得していない様子の女の子達をなんとか帰してから、今池君は小さくため息をつき、ある教室へと入っていった。
「――千羽、見たか……?」
「……あぁ。ぶっちゃけ、あいつ自身には1ミクロンほども興味が湧かないが、一体どういう風の吹き回しだろうな……?」
僕達は頷くと、静かにその教室の前へ行き、窓からそっと中を覗き込んだ。
「迎えに上がりましたよ。俺のお姫様」
既に他の生徒は帰ったのか、2人きりの教室で今池君が恭しく頭を下げた相手。それは、ボブヘアーのおとなしそうな女の子だった。
「あ、あの。やめてください。すみません、なんか……///」
その子は顔を真っ赤にしながら慌てて今池君に謝った。
今池君は顔を上げると、
「いいんだよ。今日は琴音の恋人だって言っただろ?」
なんて言いながら、琴音と呼んだその女の子の手の甲に軽く口付けをした。
うっわ――――――――!! なんてキザなんだ! 見てるこっちが恥ずかしい!
琴音さんは赤い顔を更に赤くしていた。それはもう湯気が出そうなくらい真っ赤だ。
今池君はそんな彼女の手を優しく引いた。
「それじゃあ、行こうか」
「ハ、ハイッ!///」
って、ヤバイヤバイ! こっちに来る!
僕達は2人して、慌てて隣の教室へと飛び込む。
ガラガラと扉を引く音が聞こえ、足音が向こうへと少しずつ遠ざかっていくのを確認した後、僕達はそっと教室を出た。
そして、彼らの後ろ姿を捉えると、音を立てずに尾行を始めたのだった。