僕の生存日記   番外編3:事件は遊園地裏で起こしてた(第7話裏)

『千羽 緋路』です。今、『神成 躍人』と共に、『川野辺 葉乃』と『黒井 姫』の仲をぶち壊そうとしてるんですけどね……。そして、『今池 輝也』は無関係です。

 リア充爆発しろ――ってか、黒井姫だけ爆発しろ。
 はぁ……。本当に、溜息が止まらない……。
 だが、意気消沈している場合ではない。めげずに次の作戦だ!

 2人がお土産コーナーにいることを確認すると、俺は荷物からピアノ線を取り出した。
 なぁに、別にこれで、どこかのミステリー小説みたいに首を切断とかするわけじゃない。ただ、これを黒井姫の足元にピンと張って、ちょっと転ばせようとしているだけだ。
 多分、葉乃は、さっきの俺お手製のドクロをプレゼントできなかったことを気にしているだろう。そして、ここでそれの代わりになる何かをプレゼントすると思う。しかし、葉乃にはかわいそうだが、葉乃がプレゼントしたグッズを黒井姫に転ばせて壊させる。
 プレゼントを壊されて愛想を尽かす葉乃! これだ!

 でもやっぱり、葉乃が黒井姫にプレゼントを渡すのを黙って見守るのは正直辛い。血の涙が出るほどに。くっそ……!
 葉乃がプレゼントを渡し、黒井姫がそれを受け取って、確認して――……。
 今だ! 俺はピアノ線を引いた。
 覚悟、黒井姫!!!! じゃなくて、転べ!
「キャッ……!?」
 黒井姫が短く叫ぶ声が聞こえた。そして、その直後、派手に転んだ音。
 ふふふ……。葉乃だって、さすがにプレゼントしたものをこんなに早く壊されるのは嫌だろう……。さぁ、嫌われろ……!
「だっ、大丈夫!?」
 葉乃の慌てる声。
「大丈夫!? 怪我とかしてない!?」
「大丈夫――大丈夫ですけど……大丈夫じゃないんですぅ〜……。グラスが…………」
「え? あー……」
「ごっ、ごめんなさい……!」
 よし! ちゃんと葉乃がプレゼントしたグラスが割れたようだな! 今度こそ作戦成こ――、
「い、いや、まぁしょうがないよ!」
 ――え?
「せっかく川野辺くんに買ってもらったのに……ごめんなさい……」
「怪我がなくてよかったよ。そんな高いものでもないし、もう1個買うよ」
「でも……せっかく貰った物を、私のせいで割れちゃったのに、また買ってもらうなんて――……」
「気にしないで! 僕がそうしたいだけなんだから!」
「ごめんなさい。本当にありがとう……!」
 そんなやり取りをした後、2人がお土産コーナーに戻っていくのが見えた。
 ……え、えぇ……ええ――――――――????
 なんだよ……なんなんだよ、これ……っ!!
 むしろ、なんでいい雰囲気になってるんだよ? 葉乃、お人好しすぎだろ……? いや、確かに、葉乃は元々お人好しだ。そんな葉乃だから、俺は好きになったんだ。それは、それはわかっているけど……!
 すごく、ショックだった。
 愛想尽きるでもなく「気にしないで」と笑ってる葉乃に。更にもう1つ買ってあげるという葉乃に。
 どれだけ、あの女にそれをプレゼントしたいんだ。――いや、どれだけ、あの女を喜ばせたいんだ。
 俺は、小さい頃からずっと、葉乃の隣にいたんだぞ――? その場所を――、
「……行ってしまったな。……えぇっと、千羽クン。大丈夫か?」
「――先輩、次行きますよ! 次!!」
「お、おぅ!」
 神成躍人に声をかけられ、俺は空元気でも腕を振り上げた。