エンタメクラブ   Act.2:部員を探せ!

「とりあえず、これで4人揃ったね。よし、あと1人ぃ!! ねぇ誰か心当たりないの?」
 着ぐるみ理事長が訊いてくる。
「……心当たりねぇ……」
 う〜ん。考えてはみるのだけれど、ダメだ。思い浮かばな――
「あ」
「え?」
 ――1人、思いついてしまった。
 それは、この間、高校ではなんの部活にも入部する気はないと言っていた人物……。
「あ、イヤ、でも……。部活に入る気はないって言ってたしな〜……」
 腕組みをして考え込む。
 ――まぁ、考えたところでしょうがないんだけどサ。やっぱり、こういうことは本人に訊いてみないと……。
「誰か、いたの?」
 着ぐるみ理事長が期待の眼差しを向けてくる。
「……イ、イヤ、まぁ……。あぁ、でも部活に入る気はないって言ってたから……!」
 しかし、最後のフォローはすでに遅かった。
 もう着ぐるみ理事長は入部させる気満々で――
「よーし! んじゃ、その子のところにレッツゴー!」
「人の都合も聞いてくださいよぉー!」
 ――ま、こんなこと言ってもムダだっていうのはよくわかっているけどね……。

「部活の勧誘……ですかぁ!?」
 思い立ったが吉日。着ぐるみ理事長の行動は早い。
 さっそく、私が思い付いた人物――千種 茜の家へと押しかけた。
「な、なんで私なんかに入部を勧めるのですか……?」
 茜さんが明らかに戸惑いながら問いかけてくる。
 ――さて、その戸惑いは部活の勧誘に対するものなのか、それとも、着ぐるみ理事長のこの格好に対するものなのか。はたまた、この人が理事長!? ってコトに対してなのか……。それとも、全部なのか?
 ともかく。そんな茜さんに、
「だって、君はまだなんの部活にも入ってないんだよね? いきなりそんな入部してくれと言われても驚くのはムリないと思うけど……こっちとしても困るんだよね。人数いないと部として成り立たないからさぁ。ヒマなら入部して欲しいのよ、人数合わせのために!」
 着ぐるみ理事長はあくまでも率直に、真実を告げた。なんとも彼女は素直である……。
「し、しかし……ですね!」
 困り果てた様子の茜さん……。
 ――入部しないと答えたとしても、それは仕方ないよね。もともと部活に入る気なんてないんだから。
 しかし、着ぐるみ理事長は諦めないだろう。
 森は後ろで興味なさそうに見ているし、ここは私がどうにかしてあげるしかない。もちろん、茜さんの味方としてである。
「いいよー、茜さん。断ってくれてもさ」
「よくないよ! これじゃあ部活が成立しないでしょ!」
 私の言葉に反論してくるのは、とうぜん着ぐるみ理事長。
「でもさー、ムリヤリ入部させるわけにもいかないじゃないですか。ホラ、茜さんだって困ってるでしょ」
「入部してくれないと、私が困るの!」
「でも本人の意思をムシして話を進めるのはどうかと思うけど?」
「そんなことしてないでしょ! しっかりとこーして本人の承諾を得に来てるんだから」
 ――でもこれは……どー見ても脅しにしか見えない……。ま、いつものことながら。着ぐるみ理事長は自分第一に考えているからね……。
「……思いやりを持てと言いたいのですか」
 私の心を読み取ってか、着ぐるみ理事長がそう呟いた。
「そうですね」
 私はきっぱりと言ってやった。
 着ぐるみ理事長は頭を抱え込んで、
「わ、わかったよぅ。無理強いはしないって。……よければ入部していただけませんか? 頼むから」
 ――微妙に強制的なところがあるような気もしますが、まあいいでしょう。
 さて、茜さんの返答は――?
「……ご、ごめんなさい。もう少し考えさせてください……」
 ……だった。
「ぅえええ――――――――!? なんだと――――――!?」着ぐるみ理事長がメチャクチャ不満そうな声を上げた。「ってめ――――、人が下手に出てればいい気になりやが……っ!」
「だあああああぁぁぁ! ホラ、帰りましょ、着ぐるみ理事長!」
 私は慌てて、暴言を吐こうとした着ぐるみ理事長の口を塞いで、その場を後にした。
 ――やっぱりなにがなんでも入部させる気だったんだな、着ぐるみ理事長……。