グローリ・ワーカ 第13章:不安
重く鈍い、鉄格子の錠の閉まる音が地下に響き渡った。
「出してよーっ! 私を牢に入れていいと思ってるの!?」
「仕方ありません。魔王様のご命令ですから」
トンヌラは相変わらず柔らかな物腰でマニュアに告げた。
「くっ……!」
悔しそうな表情をして、牢を破壊する呪法を放とうと身構える。
「おっ……と。存じているとは思いますが、ミリア姫。ここの牢全てに呪法を跳ね返すための呪法がかけられています。壊そうなんて考えれば、大変なことになりますよ」
「あ! ひ、ひどい!」
トンヌラの言葉に、思わず声を上げるマニュア。
その様子に、トンヌラは口元だけで笑った。
「……では、ごきげんよう」
「出せ――――っっ!!!!」
しかし、マニュアの叫び声は地下に空しく響くだけだった。
その声に重なって、
「許さないんだから……」
という別の小さな声もあったことに、マニュアはまったく気付いていなかった。
「……いいの? どうしよう。マー……」
ティルが問いかけるように呟いた。
マニュアが牢に入れられたその頃、ティルたち7人(ピュウ含む)は追手の兵士たちをなんとか撒いて逃げ切っていた。
城から少し離れた小高い丘から、今までいた場所を見つめる。
「それより早く、1回元の世界に戻ろうぜ! 話はそれからだ!」
「で、でも……!」
ストームの言葉にアリスが反論する。
「せっかく、マニュちゃん……。霊界から連れ帰ってきたのに……」
アルトが悲しそうに呟いた。
「うん……」
ティルも力なく頷く。
ニールもヤンも、ただひたすら困った顔をしていた。
「いや、でも、あいつ、なんとかしそうな気もするけど」
ニールがその困ったままの表情で言う。
「なんとかって?」
その言葉にティルが尋ねると、
「それは……」
とだけ言って、黙ってしまった。
「私たちは戻れないよね」
アリスが城を見て言う。
「顔覚えられてるだろうからな」
ヤンが答えた。
「そうだよねぇ……。私たちが戻っても捕まっちゃうぅ~……」
「顔が分かってるから……」
そう呟くと同時に、ティルとアルトは顔を見合わせた。
はっ! として、ヤンはまだ魔族のままの格好をしていたピュウを見た。
「……え?」
「そ、そうじゃん!」
アリスが声を上げる。
「ピュウがいるじゃん!」
「ピュウってなんでも変身できるんだよね!?」
ティルが問い詰める。
ピュウは驚いた表情をして、
「え? ま、まぁ、一応、なんとか……」
「顔も変えられますか!?」
アルトも詰め寄る。
「う、うん? たぶん。いつもこの顔で、別のはやったことないけど……」
「城に戻れる!?」
……………………。
こうして――、
「じゃ、じゃあ、僕は城に戻るけど。みんなは先に人間界に戻ってるんだね?」
「うん。向こうで待ってる!」
ピュウが振り返って尋ねると、みんな晴れやかな顔をしてピュウに手を振った。
「そっか……。じゃあ、また後で」
そう言って城へ向かおうとするピュウの腕を、不安そうな表情をしたままのティルが掴んだ。
「ピュウ! あ、あの……」
なにか言おうとするティルの頭を、微笑んでぽんぽんと撫でる。
「大丈夫。ちゃんとマニュアを連れ戻してくるから……」
「……うん!」
ティルが笑う。
「ありがとう」
――こうして、ピュウとティルたちははぐれた。
ピュウの背中を見送った後、ティルとアルトは2人で人間界への扉を開いた。
重く鈍い、鉄格子の錠の閉まる音が地下に響き渡った。
「出してよーっ! 私を牢に入れていいと思ってるの!?」
「仕方ありません。魔王様のご命令ですから」
トンヌラは相変わらず柔らかな物腰でマニュアに告げた。
「くっ……!」
悔しそうな表情をして、牢を破壊する呪法を放とうと身構える。
「おっ……と。存じているとは思いますが、ミリア姫。ここの牢全てに呪法を跳ね返すための呪法がかけられています。壊そうなんて考えれば、大変なことになりますよ」
「あ! ひ、ひどい!」
トンヌラの言葉に、思わず声を上げるマニュア。
その様子に、トンヌラは口元だけで笑った。
「……では、ごきげんよう」
「出せ――――っっ!!!!」
しかし、マニュアの叫び声は地下に空しく響くだけだった。
その声に重なって、
「許さないんだから……」
という別の小さな声もあったことに、マニュアはまったく気付いていなかった。
「……いいの? どうしよう。マー……」
ティルが問いかけるように呟いた。
マニュアが牢に入れられたその頃、ティルたち7人(ピュウ含む)は追手の兵士たちをなんとか撒いて逃げ切っていた。
城から少し離れた小高い丘から、今までいた場所を見つめる。
「それより早く、1回元の世界に戻ろうぜ! 話はそれからだ!」
「で、でも……!」
ストームの言葉にアリスが反論する。
「せっかく、マニュちゃん……。霊界から連れ帰ってきたのに……」
アルトが悲しそうに呟いた。
「うん……」
ティルも力なく頷く。
ニールもヤンも、ただひたすら困った顔をしていた。
「いや、でも、あいつ、なんとかしそうな気もするけど」
ニールがその困ったままの表情で言う。
「なんとかって?」
その言葉にティルが尋ねると、
「それは……」
とだけ言って、黙ってしまった。
「私たちは戻れないよね」
アリスが城を見て言う。
「顔覚えられてるだろうからな」
ヤンが答えた。
「そうだよねぇ……。私たちが戻っても捕まっちゃうぅ~……」
「顔が分かってるから……」
そう呟くと同時に、ティルとアルトは顔を見合わせた。
はっ! として、ヤンはまだ魔族のままの格好をしていたピュウを見た。
「……え?」
「そ、そうじゃん!」
アリスが声を上げる。
「ピュウがいるじゃん!」
「ピュウってなんでも変身できるんだよね!?」
ティルが問い詰める。
ピュウは驚いた表情をして、
「え? ま、まぁ、一応、なんとか……」
「顔も変えられますか!?」
アルトも詰め寄る。
「う、うん? たぶん。いつもこの顔で、別のはやったことないけど……」
「城に戻れる!?」
……………………。
こうして――、
「じゃ、じゃあ、僕は城に戻るけど。みんなは先に人間界に戻ってるんだね?」
「うん。向こうで待ってる!」
ピュウが振り返って尋ねると、みんな晴れやかな顔をしてピュウに手を振った。
「そっか……。じゃあ、また後で」
そう言って城へ向かおうとするピュウの腕を、不安そうな表情をしたままのティルが掴んだ。
「ピュウ! あ、あの……」
なにか言おうとするティルの頭を、微笑んでぽんぽんと撫でる。
「大丈夫。ちゃんとマニュアを連れ戻してくるから……」
「……うん!」
ティルが笑う。
「ありがとう」
――こうして、ピュウとティルたちははぐれた。
ピュウの背中を見送った後、ティルとアルトは2人で人間界への扉を開いた。