グローリ・ワーカ   第16章:Live or Die

「――にしてもよ〜」
 ニールがなにか言いたげだ。
「ん?」
「――……ブッ。アッハッハッハ……!!」
 なにかと思えば、トンヌラを見てとつぜん笑い出したではないか。
「な、なぜ、いきなり笑うんだ!! 失礼なやつだ!」
 トンヌラは顔を真っ赤にして怒っている。
 いったい……?
「だってよー。なんでこいつらってみんな変な名前なんだ?」
「そーいえば……。プッ! アハハハハハッ……!!」
 ニールの意見に、ティルまで笑い始めたのだから堪らない。
「レ、レディーにまで笑われるとは……!! きっっ……きっさっまっらあぁ〜〜〜〜っ!!」
 トンヌラがとうとう切れた……。
「あ、ヤベッ」
「この名前はなあぁ! 魔界じゃ有名な古の気高き王子の名前なんだぞーっ!! ミンミンだって高等魔女の名から! トリヤス、キリオミだって立派な戦士の名前からとって付けられたものなんだぞぉぉっ!!」
 トンヌラはぶち切れて力説している。
「えぇっ!? そーなのおっ!?」
 ティルは驚いている。ニールは正直どーでもいいと思っていた。
「なのに、なのにぃ!! 貴様らは……!! この高貴な名前を侮辱しおってぇぇ!! その行為、発言、万死に値するっ!!」
「こ、高貴な名前……っ!?」
 トンヌラは腰に下げていた剣をさっと抜くと叫んだ。
「貴様らなど、死ぬがいい!! ぐわああぁぁっ!!!!」
「キャ――ッ!!?? ち、ちょっとぉっ!!」
「マジかよ!」
 ニール&ティルVSトンヌラ。これまた一方的に始めっ!

「今、だれかの断末魔の悲鳴が聞こえなかったか? クラベットとオレンジっぽかったが」
「えぇぇっ!?」
 今度は逆に、ヤンがそんなことを言っていた。
 ヤンとアリスも死んだかもしれないとか思われていたが、意外と無事だった。ただし、体に無数の傷はできていたが――。
「俺らだってそんな簡単にはやられないって!」
「チッ。さすがしぶといっスねぇ。でも、断末魔の悲鳴が聞こえたようですが、誰かがおまえたちの仲間を殺ったんっスかねぇ? まぁおまえたちもここで死ぬ運命っスが、ね」
「そ、そんなぁ……」
 キリオミの言葉に泣きそうな表情のアリス。
 ヤンはさらりと言った。
「いや……さっきのはやっぱりリーダーかもな」
「ホワさん……!?」
「だって、あいつ、無事に会おうとかなんとか、死亡フラグ立ててやがったし」
 それは、第15章の7ページ(分かれる前のホールで)のことだ。
 ――無事にまた後で会おう――そのマニュアの言葉に対し、特に返事はなかったのだが――聞こえてたんかい!?
「聞こえてたけどな。誰があんなあからさまな死亡フラグに返事するんだよ!」
 言われてみればたしかに死亡フラグと言われるセリフだった(例「俺、この戦争が終わったら結婚するんだ……」「俺を置いて先に逃げろ! なぁに、すぐ追いつくさ」「待っててくれ。俺は必ず帰るさ」等)
「だから、返事してもしなくても、おまえたちもここで死ぬっスよ! ゲイル ブロウ!」
「なんの! 水を司るウンディーネよ。水の存在を此処に認め、力を我が前に示せ! ウォーター・ピアス!」
 キリオミの呪法とヤンの魔法とがぶつかり合い、激しい轟音を立てる。
「ふふん。なかなかやるっスね」
「おまえもな……!」
 攻撃が相殺されたのを見て、2人がお互いの顔を見てにやりと笑った。
 もしかしたら、友情でも生まれるんじゃなかろうか。やるじゃねぇか。おまえもな! みたいな。
「え、えー……?」
 アリスは手が出せそうになくて困っていた。
 そんなこんなで、なかなかいい戦いは続いていった。