グローリ・ワーカ   第16章:Live or Die

(どうすればいいのか!! 私は生きなきゃいけない……。魔王を倒し、人間界を救うまでは! ……でも、シリアを――自分の妹を殺すことなんてできない! どうすれば……)
「なにか迷ってるの? それは、私を殺す方法?」
 シリアが真剣に口にした。もちろん、マニュアは否定しようと、
「違……っ!!」
「嘘よっ!! いつもあんたは逃げてばっかり! 本当は私なんかどうでもいいくせに!!」
 マニュアの言葉を遮って、シリアは叫びながら剣を振りかざした!
「マニュア!!」
 2人の間に割って入ることなどできない、ピュウの叫び声が響き渡った。
 シリアがその剣をマニュアに向かって振り下ろす!
「ディストラクション アタック!!」
 マニュアがとうとう呪法を放った。
 ――しかし、それはシリアに向けてではなかった。シリアの剣に向けて破壊の最小呪法を放っただけで、シリアに傷を付けることなく剣を破壊したのだ。ただ、その砕けた剣のかけらがばらばらと落ちてきて、目の前にあったマニュアの顔に少しの傷を付けた。
「くそ……っ! やるんじゃないかとは思ったけど……!」
 シリアは小さく悪口を吐くと、奥へと続く道へ消えてしまった。
「――ふぅ……。とりあえず、助かったみたい……」
 マニュアはそう大きく息を吐いてその場にへたり込んだ。
 ピュウが苦笑しながら言う。
「僕、出番なかったね」
「アハハ。まぁよかったじゃん。これでシリアも諦めてくれれば――」
「諦めるわけなんてないでしょう」
 ほっとしたのもつかの間だった。
 シリアはすぐに戻ってきてマニュアの言葉を否定した。手にはなにか大きな箱を抱えていた。
 ドサッ!
 音を立てて置かれたその箱を覗いてみると、そこには多くの剣が入っていた。
「そうね……。私はこれ、お姉ちゃんにはこれね」
 シリアはその中から2本の剣を選び出し、1本をマニュアに向けて投げ渡した。
「え……? ま、待って! この剣は……!?」
 マニュアが慌てて尋ねると、シリアは冷静に答えた。
「その剣で私と戦ってもらうわ。ちなみに、この2本とも何よりも硬くて魔法も呪法も効かない物質で作ってあるわ」
「え? そ、それってもしかして……オリハルコン……!?」
 驚いた様子でマニュアが尋ねる。
 オリハルコン――それはめったに採取されることのない鉱物で、先ほどシリアが言ったように、何よりも硬く、そして魔法や呪法すらも効かずに跳ね返してしまう代物だった。
 シリアは言った。
「そうね。オリハルコンも素晴らしいけど、これはそうじゃないわ。ここで研究された結果作られた物質。それは、オリハルコンよりもさらに硬く、魔法も呪法も効かない。そして――勇者に対する加護すらも効かずに、あなたたちを簡単に殺すことも可能なものなの。さらに研究次第ではもっとすごいものに変わっていくでしょうね。研究室ではこれを『賢者の石』と名付けたわ」
「――――……ッ!?」
 驚くべき話を聞き、マニュアは言葉が出なかった。
(――そんな……!? 1度人間界に戻ったことで、そんな強力なものを与える隙を作ってしまった……!? いやまぁ、実際、勇者に付加されてるっつーあの加護だって正直微妙なところで、実際、根気よくダメージを与えていれば死んでしまうこともあるんだけど……。…………)
 さらに、勇者についていろいろ考え始めてしまった。
(そういえば――私が勇者の血を引いていることはわかっているんだけど、どうにも腑に落ちないことがある。私にその血が流れているのならば、シリアは――? シリアにも加護があるの? それとも、勇者の血が流れているとしても、勇者ってわけではないの? そもそも勇者ってどう決められてんだ? 血を引いていれば誰でもなれるのか? そこんとこがイマイチわかんねぇ〜……。でも、もし血が流れているものすべて勇者になる権利があるんだとすれば、シリアに加護が付いている可能性もある。ということは、シリアも簡単に死ぬことはないわけで――それは安心だけど、だからこそこの剣を使って戦うように言われたのか?)
 しかし、考えたところで答えは出ない。戦ってみないとわからないのかもしれない。
「これで、破壊の呪法も効かないし、勇者の加護も効かない。じゃあ、今度こそ始めましょう!」
 シリアが剣を構えて言った。
「そ、そんな……」
 しかし、考えている暇はなかった。シリアは今にも斬りかかってろうとしているし、ここから進むためには戦うしかないのだ。
「……シリア……!」
 こうして、マニュアVSシリア戦は再び幕を開けた!
「あの、僕……は……?」
 …………あ。
 忘れられているピュウもいたが、端っこのほうで見ているしかなかった!
「orz」