グローリ・ワーカ 第17章:カタストロフィ
ぽきん。
いい音がした。
いい音がして、折れたのはキリオミの手首だった。90度直角に、ありえない方向に曲がっている。
「「「………………」」」
キリオミは自分の手首をじっと見つめた。そして、
「っっっぎゃああああああぁぁぁぁ~~~~~~~~!!!!」
ものすごい叫び声を上げ、ごろごろと転げ回る。
もうね、こいつら四天王ね、なにをコントやってるのかと。
「ななななななにするんスかぁぁぁぁっ!!??」
「いや、自分でやったんでしょ!?」
キリオミが拳をヤンに向かって突き出したところ、また勇者に与えられた加護が発動したのだった。
「こ、このォ――――! バカチンがっ! チート野郎どもがぁっ! いけないんスよ! 卑怯っス! おまえらなんか、大ッ嫌いっス~~~~~~~~!!!!」
子供のように泣き言を言うキリオミだった。
「お、俺、助かったのか……?」
額に脂汗をじっとり浮かべ、息も絶え絶えながら、ヤンが顔を上げて呟いた。
キリオミはそんなヤンをギンッ! と睨むと、
「いーや! 助かってないっスよ! これで!!」
キリオミはポケットをごそごそすると、そこからナックルを取り出した。見た目、普通のナックルのようだが――。
「これは、賢者の石――」
※ピンポンパンポーン♪
キリオミの説明は省略されました。
「――というわけっス! って、ひどいっス!!」
「ウォーター・ピアス……!」
説明が終わったばかりのキリオミに、ヤンは容赦なく魔法を噛ました。
水が刃のように形作られ、キリオミの背後から突き刺さる。
「ぐはぁっ!」
キリオミが血糊を吐いて倒れた。
――と思ったが、すぐ復活した。
「ふ、ふふふふふ……。ど、どーやらオイラを本気で怒らせたようっスね……」
((また言ってる……))
キリオミは膝をついてゆっくりと起き上がった。目が据わっている……。
「もう許さないっス。これでおまえも終わりっス!!」
そう声を上げると、ナックルを折れていない右手になんとかしてはめた。
「! ファイアー・アタック!」
ぞっとする殺気を感じたヤンが素早く魔法で津波のような炎を繰り出す。
「ガスト ソード!」
しかしそれも――まるで柔らかいものでも切るように――簡単に切り裂かれてしまった。
キリオミが静かに言った。
「おまえと戦うのはちょっと楽しかったっス。…………でも、永遠にさよならっス!!」
グシャッ……!!
キリオミの拳が、ヤンの胸の辺りを貫いた。たくさんの血が零れて、ヤンの体がゆっくりと崩れ落ちる。
……その様子を、アリスはまるでビデオのスローモーションでもかけたかのように見た――見てしまった……。
「いっ……いやああああああああああああああぁぁぁぁ――――――――――――っ!!!!」
アリスが絶叫する。
ちなみに、キリオミの折れていなかった右手も、またぷらんぷらんしてしまった。そりゃ拳で人の体を貫くなんて無茶したらそうもなる。
しかし、そんなことも気にせず、キリオミは平然と言い放った。
「そんなに心配することないっスよ。どーせ、あんたもすぐ後を追うことになるんスから」
「クラベット!」
ティルが叫ぶ。ニールは振り向き、岩の存在を確認すると悲鳴を上げた。
その次の瞬間、岩は見事に砕け散り、破片がばらばらと彼らの上に落ちてきた。破片が当たってダメージをいくらか食らったものの、岩がそのまま落ちてくるよりは全然問題がなかった。
「な……!?」
ニールは驚いて声が出ない。いったい、なにが起こったのか。
トンヌラが言った。
「勇者に与えられた神のご加護ってやつですか」
「「あ!」」
その言葉で2人は思い出した。魔王がしていた、勇者に与えられた微妙な加護の話を。
「……まぁ、そんなもの、もう関係ありませんけどね」
トンヌラはそう言い、ニールの傍へとやって来た。
ニールは慌ててティルを引き上げようとする。
しかし、それより前に、トンヌラがニールの耳元で囁いた。
「ニールくん。残念ですが、ここでお別れです」
ドスッ!
次の瞬間、トンヌラの持っていた剣がニールの背中を貫いた。
剣は背中から胸を通り地面へと突き刺さった。
「あ……、がっ……!」
口から血を吐きながら、ニールはトンヌラを見つめた。
トンヌラはにっこり笑うと、剣を引き抜いて、再びニールを背中から突き刺した。何度も何度も。
――やがて、ニールは動かなくなった。
彼の体から流れ出た血が、地面を伝って、避けた地面へと零れていった。ティルを掴んだままの腕を伝って、彼女の顔にも滴り落ちた。
ティルはもう上を向くことが出来ず、ただただ涙を流すことしかできなかった。
だんだんと体温を失っていく手は、いまだ、彼女の腕を力強く握ったままだった。
ぽきん。
いい音がした。
いい音がして、折れたのはキリオミの手首だった。90度直角に、ありえない方向に曲がっている。
「「「………………」」」
キリオミは自分の手首をじっと見つめた。そして、
「っっっぎゃああああああぁぁぁぁ~~~~~~~~!!!!」
ものすごい叫び声を上げ、ごろごろと転げ回る。
もうね、こいつら四天王ね、なにをコントやってるのかと。
「ななななななにするんスかぁぁぁぁっ!!??」
「いや、自分でやったんでしょ!?」
キリオミが拳をヤンに向かって突き出したところ、また勇者に与えられた加護が発動したのだった。
「こ、このォ――――! バカチンがっ! チート野郎どもがぁっ! いけないんスよ! 卑怯っス! おまえらなんか、大ッ嫌いっス~~~~~~~~!!!!」
子供のように泣き言を言うキリオミだった。
「お、俺、助かったのか……?」
額に脂汗をじっとり浮かべ、息も絶え絶えながら、ヤンが顔を上げて呟いた。
キリオミはそんなヤンをギンッ! と睨むと、
「いーや! 助かってないっスよ! これで!!」
キリオミはポケットをごそごそすると、そこからナックルを取り出した。見た目、普通のナックルのようだが――。
「これは、賢者の石――」
※ピンポンパンポーン♪
キリオミの説明は省略されました。
「――というわけっス! って、ひどいっス!!」
「ウォーター・ピアス……!」
説明が終わったばかりのキリオミに、ヤンは容赦なく魔法を噛ました。
水が刃のように形作られ、キリオミの背後から突き刺さる。
「ぐはぁっ!」
キリオミが血糊を吐いて倒れた。
――と思ったが、すぐ復活した。
「ふ、ふふふふふ……。ど、どーやらオイラを本気で怒らせたようっスね……」
((また言ってる……))
キリオミは膝をついてゆっくりと起き上がった。目が据わっている……。
「もう許さないっス。これでおまえも終わりっス!!」
そう声を上げると、ナックルを折れていない右手になんとかしてはめた。
「! ファイアー・アタック!」
ぞっとする殺気を感じたヤンが素早く魔法で津波のような炎を繰り出す。
「ガスト ソード!」
しかしそれも――まるで柔らかいものでも切るように――簡単に切り裂かれてしまった。
キリオミが静かに言った。
「おまえと戦うのはちょっと楽しかったっス。…………でも、永遠にさよならっス!!」
グシャッ……!!
キリオミの拳が、ヤンの胸の辺りを貫いた。たくさんの血が零れて、ヤンの体がゆっくりと崩れ落ちる。
……その様子を、アリスはまるでビデオのスローモーションでもかけたかのように見た――見てしまった……。
「いっ……いやああああああああああああああぁぁぁぁ――――――――――――っ!!!!」
アリスが絶叫する。
ちなみに、キリオミの折れていなかった右手も、またぷらんぷらんしてしまった。そりゃ拳で人の体を貫くなんて無茶したらそうもなる。
しかし、そんなことも気にせず、キリオミは平然と言い放った。
「そんなに心配することないっスよ。どーせ、あんたもすぐ後を追うことになるんスから」
「クラベット!」
ティルが叫ぶ。ニールは振り向き、岩の存在を確認すると悲鳴を上げた。
その次の瞬間、岩は見事に砕け散り、破片がばらばらと彼らの上に落ちてきた。破片が当たってダメージをいくらか食らったものの、岩がそのまま落ちてくるよりは全然問題がなかった。
「な……!?」
ニールは驚いて声が出ない。いったい、なにが起こったのか。
トンヌラが言った。
「勇者に与えられた神のご加護ってやつですか」
「「あ!」」
その言葉で2人は思い出した。魔王がしていた、勇者に与えられた微妙な加護の話を。
「……まぁ、そんなもの、もう関係ありませんけどね」
トンヌラはそう言い、ニールの傍へとやって来た。
ニールは慌ててティルを引き上げようとする。
しかし、それより前に、トンヌラがニールの耳元で囁いた。
「ニールくん。残念ですが、ここでお別れです」
ドスッ!
次の瞬間、トンヌラの持っていた剣がニールの背中を貫いた。
剣は背中から胸を通り地面へと突き刺さった。
「あ……、がっ……!」
口から血を吐きながら、ニールはトンヌラを見つめた。
トンヌラはにっこり笑うと、剣を引き抜いて、再びニールを背中から突き刺した。何度も何度も。
――やがて、ニールは動かなくなった。
彼の体から流れ出た血が、地面を伝って、避けた地面へと零れていった。ティルを掴んだままの腕を伝って、彼女の顔にも滴り落ちた。
ティルはもう上を向くことが出来ず、ただただ涙を流すことしかできなかった。
だんだんと体温を失っていく手は、いまだ、彼女の腕を力強く握ったままだった。