グローリ・ワーカ   第22章:偶然じゃなくて必然

『ブロウ ダメージ』
 魔父が弱い呪法を放ってきた。
 それは、マニュアに当たって小さく弾けた。当たった場所が赤くなっている。
「ちょっ! なにこの弱い呪法! 別にかすり傷だし!」
 マニュアが笑って言う。
 が、魔父もにやりと笑った。
『跳ね返す魔法は解けたようだな』
「……あ」
 反射的に「ヤバイ!」と思ったみんな。慌てて攻撃を再開する。
 ――しかし。
『ふんっ!』
「ふぁっ!?」
「きゃぁっ!」
「うわっ!!」
 魔父が呪力を噴出させる。その勢いに、みんなはまた吹き飛ばされてしまった。
「なんですか、これ……!? さらに強力になってる……!?」
 アルトが驚愕して言葉を漏らす。
『くくくっ……! おまえたちの魔力を、攻撃を受けた時に少しばかり戴いたのさ』
「は!?」
「なんだよ、それ! そんなこともできんのかよ!」
「く、くそぉ……! だから、つまりは……!?」
「どーゆーことなんだ?」
 いまいち理解できていない様子のストームとニール。
「あー! なんでおまえらはいちいち説明しないと理解できないんだ!? だから、俺たちの攻撃が少し吸収されてるってことだ!!」
 ヤンがちょっとばかしキレ気味で説明した。
「なんですとぉ!?」
「なんだよ、それ! どーすんだ!?」
「え。どうしましょ!?」
 ここで、やっと本当に驚くみんな。……って、みんな理解できてなかったんかい。
『くくっ……。まぁ、おまえたちの攻撃なんて、そんなたいしたものではなかったがな』
「あんなにおもいっきり斬られといて!?」
『…………。次は私のターンということで。今までのお礼をさせてもらおうかな? ヴァイオレンス パワー ストレングス ストローク アサルト ビート』
 アリスのツッコミは無視して。
 魔父は恐ろしい笑顔を浮かべ、手に大きな闇のボールを作り出した。
『なーに。なんてことはない。ただの打撃を食らわせる呪法さ』
 そう言うと、そのボールをみんなに向けて力いっぱい投げ付けた。
 慌ててマニュアとヤンが呪法(魔法)で防御壁を作る。しかし、
「防ぎ切れんっ!」
「力が、強すぎる……!」
 全力を出しても、とても抑え切れない。先ほどまでこちらが圧していたなんて信じられないほど、その威力は凄まじかった。
 やがて、2人の作った防御壁は破壊され、魔父の放った呪法をまともにくらってしまったのだった。
「…………っ!!」
「ぐあっ!」
「うわぁぁ――っ!!」
「きゃぁぁぁぁ――――っ!!」
 激しく吹き飛ばされる。
 態勢を整えることもままならないまま、立て続けに魔父が呪法を放ってくる。
『アゴニー エイク アブソリュート ペイン アクチュアリティ!』
「あぁっ!!」
「う、あ……っ!」
「がっ……!」
 苦痛だけを与える呪法で、身動きを取れなくする。呻き悶えるみんな。
 魔父はそれを満足そうに見て言った。
『おまえたちはこんなものじゃ死なないのだろう? じゃあ、死ぬまで攻撃させてもらおうか』
 いったいどこから取り出したのか、剣を構える魔父。
「くっ……! ストップ ディサピアランス…………!」
『ナーヴ スマッシュ キリング マッドネス ペイン トーメント』
 苦しみながらもマニュアが呪法を唱えようとする。
 が、それよりも先に、もっと強力な苦痛を与える呪法で、マニュアの身動きを取れなくしてしまった。
『これだけの呪法をくらって、よく呪法を組み立てようとすることができるな。さすが、と言ったところか』
 魔父がマニュアの顔を覗き込んで言った。
『しかし、本当は正気を保っているのもやっとの痛みだろう? 今すぐに楽にしてやろう』
 そう笑って剣を振り上げた。