グローリ・ワーカ   第2章:災難

 ティルの予感は当たってしまった。
『本日定休日
 お泊りの方は隣町までどうぞ』
 ででん。
「なっ、なに、コレェ――――ッ!!『定休日』って、どーいうことよ!?」
「と、『隣町』って……」
 この町の周辺は先ほども言ったように、森に囲まれている。つまり、森の中、孤立したような町である。
 隣町など、どれほど遠いことなのか……。
「あのな――――!!!!」
 宿屋の前で喚く3人。
 ――そのとき。
「あ、あの、冒険者の方ですか?」
 ふいに、後ろから声をかけられた。
「ヘイ。そうd……いやいや、違います違います。冒険者なんかじゃありません」
「そうです」と言いかけて、慌てて言い直した。
 もしかしたら、冒険者でなければ泊めてもらえるんじゃないかと思った。
 3人が後ろを振り返ると、そこには1人の少女が立っていた。
 少女は少し寂しそうに笑って言った。
「隠さなくてもいいんですよ。私は味方です」
 その言葉に、マニュアはすぐさま素直になって、
「はい。冒険者ですが。いったいどういうことですか、なんなんですか、ここは!!」
 強気に出たのだった。
 少女はそれに目を伏せて答えた。
「ちょっと、冒険者を嫌ってて……」
「だからって、ここまでやるぅ!?」
 マニュアはかすかに――いや、だいぶ怒っているようだ。
 そして、少し考えてから、はっとした。
 マニュア、ちょっとは悪いことを言ったのに気付いたか。
「――自己紹介してない!!」
 オイ! 相手の事情も考えず文句を言ったことに関して、なにも感じないのだろうか!?
「……ん? なにが??」
 ……もーいーです。
 頭の上に「?」を浮かべていたマニュアだったが、気を取り直すと元気よく言った。
「とにかく。私は『マニュア・ホワイト』!」
「私は『ティル・オレンジ』」
「俺は『ストーム・カーキー』だ!」
「私は『リナ・フレッシュ』です。えっ……と……」
 少女は言った。
 リナの様子や事情などは気にせず、マニュアは即座に訊いた。
「あのさー……どうすればいいと思う? どうやったら宿に泊まれる?」
 リナは、マニュアの傍若無人な態度も気にせず答えてくれた。
「冒険者がいなくなったと思わせれば……。そして、鎧――ではないね。とりあえず、今の服は脱いで、髪型も変えれば……」
「あ――――っ! そっか! そうしよー!!」
 とたんに笑顔になるマニュア。
 あまり大声で言っていると、ほかの町の人達に勘付かれるぞ?
「でも、どこで着替えるの?」
 ティルが訊く。
 今度は、とたんにマニュアの笑顔が凍りついた。
「あ……う――……どこで……?」
「あ……! 私の家で着替えてもいいよ!」
 ありがたいことに、リナがそう言ってくれた。
「お、サンキュ!! 服は――そうだ。作者、頼むよ!!」
 マニュアが言う。
 ――って、そーゆーのをこっちに頼むなっつーに……。
「あ、でも、直接家に来るとバレるかもしれないから、森の中で落ち合うことにしよう。そうしたら、家の裏口から入れてあげる。1度森に戻ったほうが、みんなもう冒険者は帰ったと思って安心すると思うから」
 リナの案に頷く一同。
「わかった。それじゃ、またすぐ後で!」