★ Christmas Tales 2016 ★




〜 人魚姫 〜

 むかしむかしあるところに人魚の姉妹がいました。
 人魚の姉妹は、海底の奥深く、人魚のお城に住んでいました。
 人魚は大人になると海上に出て人間の世界を見ていいことになっていました。
 末っ子の人魚姫は姉達から人間の話を聞いては、いつも胸をときめかせていました。
人魚姫(アリス)「海底の人魚のお城って言っているのに、あるところって文章から始める理由は」
 人魚姫のツッコミは無視するとして。そんな末っ子の人魚姫もとうとう人間の世界を見られる日がやってきました。
人魚姫(アリス)「よーし! それじゃあ、海上に行ってみよーっと!」
 海上に上がると、そこには大きな船がありました。
 その大きな船の上に、やけにキラキラした男の人がいるのが見えました。
王子(輝也)「この青い海、青い空、心地よい風。まるですべてが俺の存在を祝福しているかのようだ」
人魚姫(アリス)「なんかめっちゃキラキラしてるー! 王子様?」
 人魚姫はそのキラキラが気になり、ずっと王子の様子を眺めていました。
 そして夜になり――嵐がやって来ました。
 船は強風によって薙ぎ倒され、高波によって海の中へと飲み込まれてしまいました。
人魚姫(アリス)「王子様!」
 人魚姫は王子を助けると、浜辺まで連れて行きました。
 気を失っている王子を朝まで看病していると、そこへ1人の娘が近付いてくるのが見えました。
人魚姫(アリス)「見つかったらあかん」
 人魚姫は海の中へと身を隠しました。
娘(飛鳥)「大変! 人が倒れてる! だ、大丈夫ですか?」
 娘が王子に声をかけると、王子は目を覚ましました。
王子(輝也)「…………ん? ここは……俺は……?」
娘(飛鳥)「えっと……あなたはここの浜辺に倒れていたんです」
王子(輝也)「あ〜……少しずつ思い出してきた……。たしか、乗ってた船が嵐に遭ったんだ……。もしかして、君が助けてくれたのかい? ありがとう。なんて素敵な娘さんだ。そうだ、とりあえず、俺のお城まで一緒に。陛下に報告をして、その後お礼も兼ねて一緒にご馳走でも食べようじゃないか。それから――」
娘(飛鳥)「え、えぇと……」
 2人はお城へのほうと向かっていきました。

 人魚姫も若干しょんぼりしつつ、自分のお城へと帰っていきました。
人魚姫(アリス)「あ〜……王子様。あのキラキラが忘れられない。そうだ! 魔女に私も人間になれないか相談してみましょ!」
 人魚姫はサンタ魔女のところへとやって来ました。
人魚姫(アリス)「どの辺にサンタ要素あるのかさっぱりわからないけど、人間にして!」
サンタ魔女(季)「え、あ、あの……とつぜん来るなり、なにを……」
人魚姫(アリス)「あ。魔女ってばメガネしてる。メガネするとおとなしいから話にならないでしょ。外しなよ」
 人魚姫はサンタ魔女のメガネを外しました。すると、サンタ魔女はキャラクターが変わったかのように話し出しました。
サンタ魔女(季)「え。なに〜? 人間になりたいのぉ? どうしてまたぁ。人間なんて不便じゃない。海の中に長時間いることもできないんだから〜」
人魚姫(アリス)「いや、なんかキラキラした王子様を見つけてね」
サンタ魔女(季)「え!? 王子様に一目惚れしたの〜! それじゃあ、面白そうだから、人間にしてあげてもいいよぉ〜!」
人魚姫(アリス)「一目惚れ……? うーん、まぁいいけど。人間にして!」
サンタ魔女(季)「ハイ! 取り出したるは、小人6に以前作ってもらった人間になれる薬!」
人魚姫(アリス)「え? 小人6?」
サンタ魔女(季)「これを飲めば人間になれるよぉ。クリスマスプレゼントだからタダであげる〜」
人魚姫(アリス)「申し訳程度のクリスマス要素! ありがとー! じゃあ、さっそく!」
サンタ魔女(季)「あ、でも、王子様と結婚するっていう人魚姫の願いが叶わなければ海の泡になって死んじゃうから気を付けてね〜。あと、人間になったら声出なくなるからー」
人魚姫(アリス)(飲んでから言うな――――――――!!!!!!!!)

 人間になった人魚姫は、浜辺に倒れていました。
人魚姫(アリス)(あの後、慌てて海上に上がって、とりあえず泳いで浜辺まで来たのはいいけど、これからどうしよう……)
 そこへ、偶然にもあの王子が通りかかりました。あいかわらずキラキラしています。
王子(輝也)「あれ? こんなところでどうしたんだい、綺麗なお嬢さん?」
人魚姫(アリス)(王子様! って、声出ないんだったー! もう!)
王子(輝也)「ん? 喋れないのかい? もしかして、なにか困ってる? とりあえず、うちに来るかい?」
 王子の言葉に、人魚姫は頷きました。
 ※良い子は怪しい人についてっちゃいけません。

 というわけで、人魚姫は王子のお城へとやって来ました。
王子(輝也)「君はもしかして行くところがないのかい? それならうちで雇ってあげよう。安心して。俺はかわいい子の味方だからさ。あ、この部屋を貸してあげるよ。好きに使うといい」
 あっさり王子の傍にいられることになった人魚姫でした。
 人魚姫は与えられた部屋でゴロゴロし始めました。
人魚姫(アリス)(これでいいのかしら……。あっさり過ぎる。ていうか、王子様をオトさなきゃいけないんだっけ。うーん、どうしよう〜)
 どうする?
 [> 城内を探索する。
   部屋で待機する。
   王子を探す。
どうする?
人魚姫(アリス)(とりあえず、考えててもしょうがない! 城内を探索するわ!)
 廊下へと出てみました。
 廊下ではメイドが歩いています。
 どうする?
 [> メイドに話しかける。
   隣の部屋に入る。
   廊下の奥まで歩いていく。
人魚姫(アリス)(あの〜……)
 人魚姫はメイドに話しかけようとしましたが、声が出ないため、気付いてもらうことはできませんでした。
人魚姫(アリス)(あ〜! そうだった! もう不便ね! どうしよう。じゃあ、隣の部屋へ突撃してみようかな)
 人魚姫は隣の部屋をノックしてみました。
 中から「はい」と言う声がし、少しすると扉が開かれました。
娘(飛鳥)「あら? どちら様?」
 人魚姫は身振り手振りで意思疎通を試みました。
娘(飛鳥)「もしかして喋れないのかしら?」
 人魚姫は力いっぱい頷きます。
娘(飛鳥)「そうなの。……えっと、部屋に入る?」
 こうして、人魚姫は娘の部屋に入ることに成功しました。
娘(飛鳥)「あなたは前からこのお城にいたの? それとも、いきなりここに連れてこられたのかしら? 実は、私も最近ここに来たばかりなの。王子様を助けたって勘違いされちゃって。まぁたしかに助けたのかもしれないけど……倒れてるの見つけただけなのにね」
人魚姫(アリス)(助けたのは私だわ〜!)
娘(飛鳥)「部屋を与えてもらったのはありがたいけど……とつぜん結婚とか言われて……」
人魚姫(アリス)(けけけけけけけけ結婚んん〜〜〜〜〜〜〜〜っ!? 王子様早過ぎでしょ!)
娘(飛鳥)「それでね……」
 そのとき、部屋の扉がノックされました。
娘(飛鳥)「あ、はい」
 飛鳥が再び扉を開けます。
 すると、王子が入ってきました。
王子(輝也)「こんにちは。僕の天使。今夜の結婚式の件で話に来たんだけど……」
人魚姫(アリス)(こ、今夜ああぁ!!!!???? 王子様早過ぎでしょ!!)
娘(飛鳥)「えぇと……」
王子(輝也)「あ、さっきのお嬢さん。ごめん。俺、今から大事な話があるから、ちょっと部屋に戻ってて貰ってもいいかな? お話し中、本当ごめんね」
 人魚姫は部屋から追い出されてしまいました。
人魚姫(アリス)(ていうか、もう結婚式とか早くない!? 結婚できないと死ぬって言われてるのに……もうバッドエンドしか見えない!)
 人魚姫は絶望に打ちひしがれました。

 そして、夜になりました。
 王子と娘の結婚式ということで、人魚姫も綺麗な恰好をしています。
 しかし、結婚式など尻目に、人魚姫はぼんやりと海を眺めていました。
???「末の人魚姫!」
 海から人魚姫を呼ぶ声がします。
 声のほうに視線をやると、そこには自分の姉達がいました。
人魚姫(アリス)(お姉様!)
姉1(美晴)「末の人魚姫。その様子だと、ダメだったみたいだねぇ。あはは」
人魚姫(アリス)(笑いごとじゃあないけどね……)
姉2(來人)「これを受け取れ!」
人魚姫(アリス)(え、なに?)
 姉2から投げられたものを受け取ってみると、それはナイフでした。
人魚姫(アリス)(ナイフ!? まさか泡になって消えるくらいならこれで自害しなさいと……)
姉2(來人)「それで王子を殺すんだ」
人魚姫(アリス)(殺人教唆!?)
姉2(來人)「魔女から人魚に戻る方法を聞いたんだがな。それが、愛する王子の心臓から流れた血を浴びるってことだったんだ。だからさっさと殺してさっさと戻れ」
人魚姫(アリス)(怖いし、そんなあっさりと! でも、このまま泡になって死ぬよりマシかしら。あぁ、どうしたら……)
姉1(美晴)「もう殺すしか道はないよねー」
姉2(來人)「いいからさっさと殺ってこい! それっきゃねーだろ!」
人魚姫(アリス)(うぅぅ……)
 人魚姫はナイフを手に、王子に近付きます。
 そのときでした。
娘(飛鳥)「ごめんなさい!」
人魚姫(アリス)(え?)
王子(輝也)「急にどうしたんだい?」
娘(飛鳥)「わ、私、王子様とは結婚できません……! だって、私、恋人がいるから……」
人魚姫(アリス)(え゛?)
娘(飛鳥)「ほ、本当は、何度も断ろうとしてたんですけど、その……」
王子(輝也)「え……。そ、そうだったのか……。……なんだかごめんね。俺ばっかり盛り上がってたみたいだ……」
人魚姫(アリス)(な、なにこの展開……。とりあえず、猶予はできたってことなのかしら……?)
 こうして、王子の結婚式はなかったことになりました。

 それからしばらくして――
人魚姫(アリス)「どういうことなの!」
 久々にサンタ魔女に出会った人魚姫は怒鳴りました。
サンタ魔女(季)「あれ? 人間になったのに、どうやってここへ?」
人魚姫(アリス)「年末だしちょっと亀に乗って実家に帰ってきたわけだけど」
サンタ魔女(季)「そうなのぉ〜。でも、無事に声も出るようになったみたいで、よかったねぇ」
人魚姫(アリス)「ていうか、あの後! べつの人っていうかなんやかんやあってメイドと王子様が結婚しても泡になって消えなかったし、私がべつの人を好きになって、たまたまその人がケガしてその血に触れたら声が出るようになったんだけど! どういうこと!? まったくわけがわからない!!!!」
サンタ魔女(季)「え〜……? え、もしかして、人魚姫ってば、その王子様のこと、そんなに好きでもなかった!?」
人魚姫(アリス)「たしかにキラキラが気になるって言ったけど、好きだなんて言ってない!」
サンタ魔女(季)「えーとね。この薬は、人間になれる代わりに声を失う。さらに、好きな人と結ばれないと泡になって消えるっていうことだったんだけど……王子様が好きじゃないなら、そりゃぁ王子様がべつの人と結婚しても消えないよー。で、人魚に戻る方法が、好きな人の心臓から流れた血を浴びる。なんだけど……まぁ、心臓から流れた血じゃなくてちょっとした傷から出た血だったから、完全に人魚には戻らず声だけ戻ったんじゃないかなぁと」
人魚姫(アリス)「なんか……なんか、もおぉ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
サンタ魔女(季)「あはは。でも、ま、結果オーライ! ってことで〜。きっと、その幸運は神様からのクリスマスプレゼントだよ」
人魚姫(アリス)「……も〜〜〜〜!」
 ――こうして、人魚姫は人間の世界で幸せに暮らしたのでした。
 めでたしめでたし。

人魚姫
キャスト
人魚姫 アリス・ヘイズル (グローリ・ワーカ)
王子 今池 輝也 (僕の生存日記)
楊井 飛鳥 (エンタメクラブ)
サンタ魔女 華藤 季 (エンタメクラブ)
姉1 美晴 (ひので町コント)
姉2 黄金井 來人 (ミス研日誌)