ゆーしゃ物語

 勇者は魔王を倒し、その役目を終えると、次また必要な時が来るまで、神様によって赤子のように永い永い眠りに就かされました。
 それはもう、立派な夕張メロンの中に……。

 昔々あるところに、お爺さんとお婆さんが住んでおりました。
 ある日のこと。
 お爺さんは山へ芝刈りに。お婆さんは川へ洗濯に行きました。
 お婆さんが川で命の選択(違)をしていると、川上からどんぶらこっこと夕張メロンが流れてきたそうな……。
「まあまあ大きな夕張メロンだこと。これを売れば、きっと大金持ちだわ」
 嗚呼!! この中に入っていると予想される勇者の運命やいかに!?

 夕張メロンが邪悪な(?)お婆さんの手によって人の手に売り渡されそうになったとき、お爺さんが登場しました。
「婆さんや。その大きな夕張メロンは一体どーしたんだね?」
 お婆さんは笑顔で言いました。
「そこの川で拾ったんどす。売り飛ばそうかと思って」
「ばくゎあ――――!!!!」
 バッチ――――ん!!
 お婆さんは、お爺さんに約5000mくらい吹っ飛ばされました。
 お爺さんは力説しました。
「そんな川で拾ったような汚い夕張メロンが高値で売れるもんか! 売るときは、もっと高級そうに見せるためにいろいろと装飾するんだ! そのほうが高額で売れるはずじゃ!!」
「お……お爺さん!! 私が間違ってました――――!!」
「わかってくれたか、婆さん!!」
「ハイ!!」
 こうして、夕張メロンにはいろいろな装飾が施されました。
 しかし、それは、明らかに人の手によるものだとわかるうえに、逆に怪しさをかもし出していたため、売れることはありませんでした……。
「おーの――!」
(つ……次こそ生まれてやる……)
 夕張メロンの中で、勇者は思いました。

「役立たずな、夕張メロンめぇ〜〜!! このわしの手で葬ってくれるわ〜!!」
 バッシャ――――ん!!
 怒ったお爺さんの手によって、夕張メロンは哀れにも川の藻屑となってしまいましたとさ。
「お、お爺さん! 何もそこまでしなくても……売れなかったら、私たちが食べればよかったんじゃないですか!」
 お婆さんの言葉に、はっとするお爺さん。
「のぉ〜〜〜〜!!!!」
 慌てて2人は流れ行く夕張メロンを追いかけました。
 山を越え、谷を越え――
 そして、3日後……。
「とうとう捕まえたぞ、こいつぅ〜★」
 海にまで流れ出た夕張メロンは漁師の手によって確保されました。
 そして、無事、2人の下へと帰ってきたのでした。
「さ〜て、食うか」
 お爺さんの手に刃物が光ります。
 お婆さんはそれを慌てて止めました。
「お、お爺さん! 待って下さい! こんな3日も経って、腐ってるかも知れない夕張りメロンを食べるんですか!?」
「むむ……」
 お爺さんは悩んでいます。
 もう我慢のできなくなった勇者(in 夕張メロン)。
(いい加減――)
「切れ――――――っっ!!」
「うわああああ!?」
 なんと! 夕張メロンがひとりでに割れ、中からブチキレた赤ん坊が現れました。
 お爺さんとお婆さんは驚きのあまり腰を抜かしてしまいましたとさ。
『ゆうばりメロン の なか から ゆーしゃ が あらわれた!
 おじいさん と おばあさん は こし を ぬかしてしまった!』

「はぁ……全然切ってくれないから、思わず自分から出てきちゃったぜ……」
 そんなことを1人つぶやく勇者。
「き……切れだと……?」
 気が付いたお爺さんがそう言いました。
「そうだよ。また魔王がこの世界に現れたっていうのに、早く切ろうとしないし……」
「それじゃあ、よいしょ……」
 そんな勇者の言葉に、お爺さんが持ち出したものとは……!
「な、何をするんだ?」
『ゆーしゃ(勇者 or 夕者) は うろたえている!』
「切ってほしいんだろ?」
「イヤ、そーじゃなくて! オ、オレは夕張メロンを切って外に出してもらいたかったワケで……!! や、やめ……う、うわあああああ!!」

 めでたくないめでたくない。




 10年以上前に書いた、これはひどいとしか言えない物語を、加筆修正して(ほぼしてない)アップ。
 さっきの話と180度方向違う。
 あと、これ、2012年のハロウィンで公開したゲームの本棚に途中まであったりしますが(複数の話を1つの話にまとめて1つのタイトルにしていたので、大きなタイトルは違いますが)、その当時はアップする気などさらさらなかったのに、なんでアップしようと思ったんだろう、自分。


――――2015/03/21 川柳えむ