僕の生存日記 第6話:事件は遊園地で起きてんだ(前編)
僕、『川野辺 葉乃』と『黒井 姫』は、これから――デ、デート……ですっ!
もう本当に死んでもいい。あぁ、チケットをくれた『千羽 緋路』、ありがとう……!
へ?『神成 躍人』と『今池 輝也』? 誰それ?
電車に揺られ数十分。僕らは遊園地へとやって来た。
まだ開園して30分も経っておらず、人はそれほど多くはなかったがそれでもそれなりに賑わっていた。天気も良いし、きっとこれからさらに人が増えるのだろう。
僕らはチケット売り場で無料チケットとフリーパスを交換すると、さっそく入場ゲートをくぐった。
目の前に広がる世界。
遊園地なんて今までに何度か来たことがあるはずなのに、それはとても輝いて見えた。
黒井さんのほうを振り返ると、彼女は嬉しそうに、少し先ではしゃいでいる子供たちを見つめながら言った。
「私、実は、あまりこういうとこ来たことないんですよ」
「え?」
おもいがけない言葉に、僕は驚いて彼女を見つめた。
「小さい頃はよく来ていたんですけど……いつからですかね、来なくなってしまって。私、友達も少ないので、一緒に遊んでくれたのは唯くらいで……」
あぁ、そうか。
彼女は細長いものを持つと、通称『黒姫』さんに豹変してしまう二重人格――傘だってまともに持つことができないくらいなんだ。それはいったいどれだけ大変なことで、今までにどれだけ苦労をしてきたことだろう。
そりゃあ、僕だって友達少ないし、遊園地もあまり来たこともない。ただ、きっとそれは僕とは事情が違う。
僕はなんだか苦しくなって、どうしたら黒井さんを助けてあげられるのかなんて考えてみた。
でも、そんなの考えたところで、僕が大それたことをできるわけがない……。誰か他人を助けてあげようだなんて、おこがましい話だ。
だけど。それでも、僕ができる精一杯で、彼女を笑わせたいって思ったんだ。だから――、
「今日はめいっぱい楽しもう!」
僕は黒井さんに向かってそう言った。
僕にできることなんてほんの小さなことくらい。でも、その小さなことで少しでも彼女が笑えるのなら、それは、僕にとってもすごくうれしいことだと思う。
黒井さんがこちらを振り向いた。一瞬、驚いたような表情をしていたが、すぐにとびきりの笑顔に変わった。
「……はい!」
「じゃあまずどこから回ろうか?」
園内のパンフレットを見ながら僕が尋ねる。
黒井さんも一緒に覗き込んで、そして――、
バッ!
「!?」
次の瞬間にはパンフレットは黒井さんの手の中にあった。
「え。えっと……?」
「川野辺くん……!」
なんか、小刻みに震えてる――?
え? なに……? なんか怒ってるの? それとも、なにか悲しいことでも――、
「ここっ!!!!」
ドド――ン!
黒井さんは、パンフレットを僕に見せるようにしてから、園内のある場所を指差した。
そこは――、
「あ。お、お化け屋敷……?」
「はいっ!!!!」
なんか普段からは想像できないくらい力強く答える黒井さん。
「ここのお化け屋敷、実はちょっと有名でですね、すごく長いしすごく怖いそうなんですよ! TVでも結構話題にされたりしてて。あと、たまに本物も紛れるなんて噂もあったりするんですよ! それと、ここのお化け屋敷の隣で売ってるグッズコーナーには、このお化け屋敷のマスコットキャラとか売ってたりするんですけど、結構作りが良くて! 他にも色々売られているんですけど、どれもすごくよくできてるそうなんです! あと、お化け屋敷の中にあるもので――」
………………うわぁ。
なに、こんな饒舌な黒井さん見たことない☆
そうでした。黒井さんはホラー大好きなんでした……。
「え、えーと、じゃあ、行こうか……」
「はいっ♪」
あぁ、こんなにいい笑顔を見れて、僕は幸せですよ(涙)
僕、『川野辺 葉乃』と『黒井 姫』は、これから――デ、デート……ですっ!
もう本当に死んでもいい。あぁ、チケットをくれた『千羽 緋路』、ありがとう……!
へ?『神成 躍人』と『今池 輝也』? 誰それ?
電車に揺られ数十分。僕らは遊園地へとやって来た。
まだ開園して30分も経っておらず、人はそれほど多くはなかったがそれでもそれなりに賑わっていた。天気も良いし、きっとこれからさらに人が増えるのだろう。
僕らはチケット売り場で無料チケットとフリーパスを交換すると、さっそく入場ゲートをくぐった。
目の前に広がる世界。
遊園地なんて今までに何度か来たことがあるはずなのに、それはとても輝いて見えた。
黒井さんのほうを振り返ると、彼女は嬉しそうに、少し先ではしゃいでいる子供たちを見つめながら言った。
「私、実は、あまりこういうとこ来たことないんですよ」
「え?」
おもいがけない言葉に、僕は驚いて彼女を見つめた。
「小さい頃はよく来ていたんですけど……いつからですかね、来なくなってしまって。私、友達も少ないので、一緒に遊んでくれたのは唯くらいで……」
あぁ、そうか。
彼女は細長いものを持つと、通称『黒姫』さんに豹変してしまう二重人格――傘だってまともに持つことができないくらいなんだ。それはいったいどれだけ大変なことで、今までにどれだけ苦労をしてきたことだろう。
そりゃあ、僕だって友達少ないし、遊園地もあまり来たこともない。ただ、きっとそれは僕とは事情が違う。
僕はなんだか苦しくなって、どうしたら黒井さんを助けてあげられるのかなんて考えてみた。
でも、そんなの考えたところで、僕が大それたことをできるわけがない……。誰か他人を助けてあげようだなんて、おこがましい話だ。
だけど。それでも、僕ができる精一杯で、彼女を笑わせたいって思ったんだ。だから――、
「今日はめいっぱい楽しもう!」
僕は黒井さんに向かってそう言った。
僕にできることなんてほんの小さなことくらい。でも、その小さなことで少しでも彼女が笑えるのなら、それは、僕にとってもすごくうれしいことだと思う。
黒井さんがこちらを振り向いた。一瞬、驚いたような表情をしていたが、すぐにとびきりの笑顔に変わった。
「……はい!」
「じゃあまずどこから回ろうか?」
園内のパンフレットを見ながら僕が尋ねる。
黒井さんも一緒に覗き込んで、そして――、
バッ!
「!?」
次の瞬間にはパンフレットは黒井さんの手の中にあった。
「え。えっと……?」
「川野辺くん……!」
なんか、小刻みに震えてる――?
え? なに……? なんか怒ってるの? それとも、なにか悲しいことでも――、
「ここっ!!!!」
ドド――ン!
黒井さんは、パンフレットを僕に見せるようにしてから、園内のある場所を指差した。
そこは――、
「あ。お、お化け屋敷……?」
「はいっ!!!!」
なんか普段からは想像できないくらい力強く答える黒井さん。
「ここのお化け屋敷、実はちょっと有名でですね、すごく長いしすごく怖いそうなんですよ! TVでも結構話題にされたりしてて。あと、たまに本物も紛れるなんて噂もあったりするんですよ! それと、ここのお化け屋敷の隣で売ってるグッズコーナーには、このお化け屋敷のマスコットキャラとか売ってたりするんですけど、結構作りが良くて! 他にも色々売られているんですけど、どれもすごくよくできてるそうなんです! あと、お化け屋敷の中にあるもので――」
………………うわぁ。
なに、こんな饒舌な黒井さん見たことない☆
そうでした。黒井さんはホラー大好きなんでした……。
「え、えーと、じゃあ、行こうか……」
「はいっ♪」
あぁ、こんなにいい笑顔を見れて、僕は幸せですよ(涙)