グローリ・ワーカ   第10章:罠と罪と罰

 さて、ティルはどうしたのかというと――。

「はっ!!!!」
「どうしたの? マニュアちゃん」
 とつぜん背後にベタフラを出したマニュアに、アルトは問う。
 マニュアはシリアス顔で、
「第六感! 危険を感じる……。隠れ身の術! とうっ!」
 そう叫ぶと、姿を消してしまった。
「え? え!? おぉーい! マニュアちゃぁーん?」
 そのとき。
「オラ! そこに入ってろ!」
 隣の牢屋から声が聴こえた。
「ちょっと! 出してー!」
「この声は……!」
 この声は、紛れもない、ティルの声だった。
「ティルちゃん!」
「アルトちゃん!!」
 鉄格子越しに声を掛ける。
「いやぁ、奇遇ですなぁ」
 マニュアが後ろの壁から壁紙を剥がして出てきた。
「あんたはどっから出てくるのよ!! あんたは忍者かぁーっ!?」
「えっへん!」
 無駄に威張るマニュアであった。
「まーまー。気にしないで」
「……。ところで、ティーちゃんはなんでここに来たの?」
 アルトがティルに訊く。
「なんか……、ん……。魔王が『牢に入れとけ』って……。アルトちゃんは?」
「さぁ……。ティーちゃんと同じかも。……私たちに魔族の血が流れてるからかな……」
「どうするつもりなんだろー……」
 2人で考え込む。
「……私、少し寂しい……」
 1人疎外されているマニュアであった。
「あー! もー! とにかく、ここを出よー!」
「あ、うん!」
「出るー!」
 マニュアの言葉に、2人は頷いた!
「って、あんまり大きな声出しちゃダメだー! ティルちゃんを牢に入れに来たヤツが見張り起こしちゃったよ!」
 マニュアが廊下を覗き込んで言った。
「えぇ!?」
 アルトも顔を出す。
 見張りはまだ眠そうな顔をしながらも、そこにふらふらと立っていた。
「んでも、ここに鍵があるってことに気付いてないのかな……。さて、どーする?」
 3人は必死に方法を考える。
 早くしないと、仲間たちが危ない!
「え。やっぱり危ないの!?」
 うん。
 焦って考え込む3人。
 そして、マニュアが覚悟を決めたように言う。
「……よし……。ここはティルちゃんに一肌脱いで貰おう!」
「……え!?」