グローリ・ワーカ 第14章:ある占い師との約束
シドゥスの町立図書館はなかなかの広さだった。3階まであり本の種類も豊富だ。また、勉強部屋や視聴覚室まである。
「あぅー。やっぱ静かだねー」
「マー、静かなのは嫌い?」
マリアが訊くと、マニュアは大げさに首を振って、
「いあいあ、そんなことはないよ。本は好きだし、静かなのもそれなりに慣れてるし」
マニュアは幼いころに住んでいた魔王城を思い出した。広い図書室があり、マニュアはそこで呪法の本を片っ端から読みこなしていた。
(まぁ呪法の基礎や成り立ちを覚えるのも、呪法自体を覚えるのも楽しかったしなぁ。それに、どうしても覚えたい呪法もあったし……)
「そうなの? あ、マー。これこれ」
マリアが本棚から1冊の本を取り出すと、マニュアに差し出した。表紙には『空水晶を知る本』と書かれている。
「これは――」
表紙をめくって目を走らせた。
そこには、先ほどマリアが言っていたことや、どうして空水晶ができるのかなども書かれていた。そして――、
「『空水晶の言い伝え』?」
タイトルにそう書かれたページには、こんな文章が載っていた。
空水晶の集まりし時
東では風が吼え 西では水が唸り
南では火が走り 北では地が裂ける
月は輝き照らし 水晶は叫び一つとなる
光は誕生を祝福する
「……はい?」
なんだかよくわからず、マニュアは間抜けな声を出した。
「まぁいいや」
あまり気にせずページをめくっていく。
そして、また別のページで目が留まる。
「ん? 『空水晶の変形』……?? 『グローリ・ワーカには杖、ゴッド・ウィッシュ』……!? なにこれ――――!?」
「ちょ……、マー!」
おもわず大声を上げたマニュアの腕をマリアが引っ張った。
「……あ」
我に返り辺りを見回すと、図書館に来ていた人たちがみんなこちらを白い目で見ていた。
図書館では静かにしましょう。
「はっ……!! す、すいませんっ!」
恥ずかしくなり、こそっと本棚の裏へ逃げ込んだ。
そして、再び本を開いてじっくりと読み直す。
(『空水晶の変形』――……。『4つ集まった水晶は勇者の下で1つの物へと形を成す。グローリ・ワーカには杖、ゴッド・ウィッシュ』……。なんだこれ、なんだこれ。知らないぞ、そこまで知らない。空水晶の存在は知っていた。地水晶がこの星を表すことも、月水晶が月の魔力を持っていることも。けれど、4つ集まったらそんなことが起きるなんて聞いてないぞ、マジかよ)
本から顔を上げて、こちらをじぃっと見ていたマリアの顔を見た。マリアはにこりと笑う。
(『ゴッド・ウィッシュ』……。これが、さっきマリアちゃんが言っていた奇跡か……。空水晶からできる杖――魔王に対抗できるほどの魔力を秘めているかもしれないな)
マニュアはぱたんと本を閉じると、
「――って、マリアちゃん、この本を見せるために連れてきてくれたの?」
マリアに聞いた。彼女は笑顔のまま、
「さっき話している時、一瞬、水晶に瞬その本が映ったんだ。きっと、なにかの役に立つと思って」
(うわ、すげぇ……)
もうマニュアは言葉が出なかった。
これだけすごい力を持つ彼女に分からないことなんてあるのだろうかとさえも思った。
そして、マニュアはしばらく考え込んだ後、神妙な面持ちをしてマリアに言った。
「……マリアちゃん。1つだけ訊きたいことがあるの――」
シドゥスの町立図書館はなかなかの広さだった。3階まであり本の種類も豊富だ。また、勉強部屋や視聴覚室まである。
「あぅー。やっぱ静かだねー」
「マー、静かなのは嫌い?」
マリアが訊くと、マニュアは大げさに首を振って、
「いあいあ、そんなことはないよ。本は好きだし、静かなのもそれなりに慣れてるし」
マニュアは幼いころに住んでいた魔王城を思い出した。広い図書室があり、マニュアはそこで呪法の本を片っ端から読みこなしていた。
(まぁ呪法の基礎や成り立ちを覚えるのも、呪法自体を覚えるのも楽しかったしなぁ。それに、どうしても覚えたい呪法もあったし……)
「そうなの? あ、マー。これこれ」
マリアが本棚から1冊の本を取り出すと、マニュアに差し出した。表紙には『空水晶を知る本』と書かれている。
「これは――」
表紙をめくって目を走らせた。
そこには、先ほどマリアが言っていたことや、どうして空水晶ができるのかなども書かれていた。そして――、
「『空水晶の言い伝え』?」
タイトルにそう書かれたページには、こんな文章が載っていた。
空水晶の集まりし時
東では風が吼え 西では水が唸り
南では火が走り 北では地が裂ける
月は輝き照らし 水晶は叫び一つとなる
光は誕生を祝福する
「……はい?」
なんだかよくわからず、マニュアは間抜けな声を出した。
「まぁいいや」
あまり気にせずページをめくっていく。
そして、また別のページで目が留まる。
「ん? 『空水晶の変形』……?? 『グローリ・ワーカには杖、ゴッド・ウィッシュ』……!? なにこれ――――!?」
「ちょ……、マー!」
おもわず大声を上げたマニュアの腕をマリアが引っ張った。
「……あ」
我に返り辺りを見回すと、図書館に来ていた人たちがみんなこちらを白い目で見ていた。
図書館では静かにしましょう。
「はっ……!! す、すいませんっ!」
恥ずかしくなり、こそっと本棚の裏へ逃げ込んだ。
そして、再び本を開いてじっくりと読み直す。
(『空水晶の変形』――……。『4つ集まった水晶は勇者の下で1つの物へと形を成す。グローリ・ワーカには杖、ゴッド・ウィッシュ』……。なんだこれ、なんだこれ。知らないぞ、そこまで知らない。空水晶の存在は知っていた。地水晶がこの星を表すことも、月水晶が月の魔力を持っていることも。けれど、4つ集まったらそんなことが起きるなんて聞いてないぞ、マジかよ)
本から顔を上げて、こちらをじぃっと見ていたマリアの顔を見た。マリアはにこりと笑う。
(『ゴッド・ウィッシュ』……。これが、さっきマリアちゃんが言っていた奇跡か……。空水晶からできる杖――魔王に対抗できるほどの魔力を秘めているかもしれないな)
マニュアはぱたんと本を閉じると、
「――って、マリアちゃん、この本を見せるために連れてきてくれたの?」
マリアに聞いた。彼女は笑顔のまま、
「さっき話している時、一瞬、水晶に瞬その本が映ったんだ。きっと、なにかの役に立つと思って」
(うわ、すげぇ……)
もうマニュアは言葉が出なかった。
これだけすごい力を持つ彼女に分からないことなんてあるのだろうかとさえも思った。
そして、マニュアはしばらく考え込んだ後、神妙な面持ちをしてマリアに言った。
「……マリアちゃん。1つだけ訊きたいことがあるの――」