グローリ・ワーカ   第16章:Live or Die

 5組に別れたパーティーは、お互いの無事を祈りつつ道を進むのだった――。

「――でさぁ、そのときニールが『マグロはない』とか言ったんだよ! ウケねぇ?」
「へぇー……」
(この人には緊張っていう言葉はないのだろうか……)
 緊張感がないのは、ストーム&アルトペア。まずはこの2人から中継です!
「え、なに? テレビ番組!?」
 いやいや、おまえらの世界にテレビなんてあるのかー!? ていうか、それよりもマグロってなんだよ!
「つーかおめーも緊張感ねーだろ!」
 ほっとけ!
 えーっと……コホン。さて、2人がしばらく歩いていくと、一般的な広さがある部屋に出た。
 ストームが奥を指差して、
「まだ道があるゼ」
 そこにはまだ深そうな道の入り口が2人を待ち構えていた。
「よしっ、行こー!」
 さらに奥へと進んでいこうと部屋へ踏み出したそのとき、
「ヴァイオレンス シャワー!」
 ザアアアアァァッ!!
 とつじょ激しいにわか雨が2人を襲った。
「ひゃああぁぁぁぁっ!? 室内で雨ぇーっ!?」
「だぁ〜〜っ!! な、なんだぁっ!? 水ぅっ!?」
 すぐさまそれも治まったが……。
「な、何ぃ……? 今の……」
 アルトがびしょ濡れになった髪を掻き分けながら前を向くと、その視線の先にあった道から1つの影が現れた。
「ひさしぶりねぇ。ハーフに、ちょっと変わった男の子!」
 そう言いながらこちらへ向かってきたのはミンミンだった。
「あ、あなたは、四天王の1人の……!!」
「そう。よく覚えてたわね。あたしはミンミン」
 ミンミンが名乗る。
「ちょっっと待てっ!! おまえの名前はどーでもいいっ!!『ちょっと変わった男の子』って俺のことかぁっ!?」
 ストームは文句を言うが、ミンミンはさらりと、
「そーよっ。本当のことなんだからしょーがないじゃない」
 そう返した。
「おい! ちょっと待てぇぃっ! どこが変わってんだよっ!! それに、俺にはストームって名前がちゃぁぁんと……!!」
 ストームは不服そうに続けるが、ミンミンはそれをまたもさらりと流すように答える。
「うるさいやつねぇ。わかったわよ、名前で呼べばいーんでしょ。で、そっちのハーフの名前は?」
「え? えぇと……私は、その、アルト……」
 とつぜん話題を振られたアルトはしどろもどろに答えた。
「ふぅ〜ん。アルトねぇ……」
 ミンミンはまるでアルトを品定めするかのように、頭のてっぺんからつま先までよく見た。
「あ、あの、ミンミンさん……?」
 アルトが不思議そうに、少し戸惑いながら声をかけると――、
「まぁなかなかの顔ね。あたしには負けるけど」
「「はぁ?」」
 なんとも間抜けな声を上げるアルトとストーム。
 ――まぁ、たしかに。ミンミンの顔は結構美人である。体形もそれなりで、出るところは出てるし引っ込むところは引っ込んでいる。しかし、アルトも負けてはいないだろう。アルトは美人――とはちょっと違うのかもしれないが、目がくりくりしていて、かなりかわいい。そしてすらっと細い――。
「ささささ作者ぁ……!」
「えー。でも、俺、どっちかっていうと、ミンミンってやつの顔は好みのタイプじゃねーなぁ……」
「「なぁっ!?」」
 ストームがいきなりなにか語りだした。
「俺はアルトみたいな顔の方が好きだなぁ」
「ス、スッ、ストームくんっっ!!??」
 アルト、混乱中。
 でも、わかる。ストームは美人よりもかわいいほうがいいんだねっ!! わかるよっ!
「おぅっ」
「あーもうぅっ!! かわいくなくて悪かったわねーっっ!! ていうか、なにをラブラブしてんのよっ!」
 いいじゃん。ラブラブ。
「らっ、ラブラ……! そ、そんなんじゃないですよっ!!」
 それに、ミンミンだってモテるでしょ?
「ま、まぁね」
「だぁ、どーしよーどーしよー。だからどーしていっつもこーなのぉ? マーさんがくじなんかするからぁ……」
 ぶつぶつぶつぶつと……。あ、あの、アルトさん。怖いよ?
「ぁぁっ! もぉ〜。だからイヤなのよー、しくしくしく……。……って、え? あ、呼んだ……?」
 うん、まぁ……。
「あ……アハハハハー……」
 笑ってごまかすなよ。そしてその笑顔もなんか怖いっすよ。
「……っす、ね……。あーもう。そんな言葉遣いするからキリオミ思い出しちゃったじゃない。あいつ、弱いけど大丈夫かしらぁ?」
「え? なんだ? おまえはキリオミってやつが好きなのか? あれ、たしかアルトを攫いやがったやつだよな!」
 ストームが予想外なことを言い出す。
「なっ……! だぁっ、誰が、あんなやつぅッ!!!!」
「違うのかよ! 俺はあいつ許さねーぞ!」
「ち、違うわよっ! 違うに決まってるじゃないのっ!」
 必死で否定するミンミン。
 あぁ、でもビックリしたわ。だよね。ミンミンがまさか、ねぇ……。でも逆にその必死さが怪しいという感じもするが。
「んもぉっ。違うわよぉ! あったりまえでしょぉ。それよりも……ハッ! 忘れるところだったわ!!」
 ずいぶんと話が逸れていたが――。
 ミンミンはさっと身を翻すと戦闘の構えを取った。
「え? えぇっ!?」
 アルトは臨機応変に対応することができなかった!
「とにかく、あなたたちを倒させてもらうわよっ! あたしたちの魔界の未来のためにね!!」
 ストーム&アルトVSミンミン、始め!!