グローリ・ワーカ   第16章:Live or Die

「ん?」
「どぉしたの?」
 立ち止まったニール&ティルペア。
 ニールがぼそりと言う。
「いや、な〜んか、今、サンドとヘイズルの断末魔の悲鳴らしきものが聞こえたよーな気が」
「ち、ちょっとぉ!?」
 不吉な言葉に焦るティル。
 と、そこへ。
「自分の身を案じたほうがいいですよ」
 そう投げかける声が響いた。
 そこは他のみんなと同じく1つの部屋で、その奥から姿を現したのは――、
「魔王城へようこそ。前にも会ったとは思いますが――私はトンヌラ。四天王の1人で、土の使い手です」
「わ、私はティル」
「俺はニールだ」
 トンヌラに自己紹介され、思わず返してしまう2人。
「で、土の使い手って? なに〜?」
「さぁ? 土の――呪法だっけ? 使うんじゃね?」
「えぇ。それだけではありませんよ」
 トンヌラは爽やかな笑顔を浮かべた。
「え?」

「あ、あなたたち四天王に、その四大元素を扱える幻獣の血が流れてる……!?」
「そのとおりですよ。先ほどお見せしたとおり、私は火が使えます。その火の幻獣の血が流れているのです」
 そう答えたのはトリヤス。
 ここへやって来ているのはスリム&ヒナペアだった。
 2人はこの部屋へ入った瞬間に、ストーム&アルト同様、とつぜん火の呪法を食らわせられたのだが、ヒナという僧侶がいたおかげで無事にかわすことができた。
「いきなり四天王だし、ちょっとびっくりなんだけど」
「そうだよー! 聞いてないんですけどー!」
 そういえばこの2人は、トリヤスたち四天王のことも、呪法のことすら詳しく知らない。
「そーいえば……このお2方は初めて見ますね……。一応、自己紹介しておきましょうか。私はトリヤス」
「僕はスリム!」
「ヒナですっ!」
 簡単に名乗ると、トリヤスは再び語りだした。
「まぁそんなわけで、私たちのご先祖に幻獣がおりまして、その血を受け継いでいる私たちはつまり純粋な魔族ではありません。しかし、だからこそこの四天王の座を与えられたのです」
「「へー……」」
 スリムとヒナは興味がなかった!
「くぅ……っ! 失礼な態度を……! わかりました! もうさっさと始めましょうかね! ごく普通のお嬢さん方を相手にするのもなかなか気が引けますが……仕方ありません。これも運命です」
 トリヤスが身構える。スリムとヒナも戦闘態勢に入りつつ言葉を返す。
「だーれがおまえみたいなやつに負けるか!!」
「そーだよっ! ――って言っても、私、攻撃はなにもできないけど……」
 ヒナが元気なく言う。しかし、スリムは笑って答えた。
「大丈夫。僕が攻撃するから! ヒナさんは回復と補助をお願い!」
「うん!」
 さらに、
「ちょっと今、作戦タイムね!」
「うぅむ……。いいでしょう……」
 スリムの提案をあっさり呑んじゃうトリヤスもどーかと思うんだ。
「まず――ヒナさんが戦闘に入る前に、えぇと、相手は呪法が使えるみたいだから、僕に防御の魔法をかけて。もちろん、念のために自分にもね」
「うん。わかった」
「で、その後、僕が――」
 5分ほどして、やっと作戦タイムが終わった。
 そして、とうとうスリム&ヒナVSトリヤス戦も始まった……。