グローリ・ワーカ   第20章:最終決戦

「えぇっと、なんだっけ? あぁ、そうだそうだ! 別にヤンの魔法に期待してるわけじゃなくて」
「オイ」
 マニュアが話を戻す。ヤンのツッコミはスルーである。
 と、今度はストームが突然、なにかわかったのか、手を叩いて興奮気味に言った!
「そうか! 魔王は実はアンデッドで、ヒナってやつの回復魔法が効くんだな!?」
「全然ちゃうわぁっ!!」
 スパーン!!
 すかさずマニュアのツッコミ! さっきの仕返しもあるのか、とてもいい音がした。
「……今度はストームとホワイトの漫才か……」
「ツッコミご苦労様です〜」
 ニールやアルトにティル、なんとなく怖い気がするのはきっと気のせいだろう。今回ラブコメ的なノリが多い気がするのもきっと気のせいに違いない。
「と、とにかーく!」
 マニュアが手を叩きながらその場を制した。横ではストームが倒れていた。
「えーと、魔法は誰が使うのかっていうと……私たちだよ」
 マニュアは言った。その言葉に、みんな驚いた顔をした沈黙した。それを楽しそうに見回してから、彼女は言葉を続けた。
「だって見てご覧よ、この杖! ゴッド・ウィッシュ! これだけ立派な杖が出てきたんだ。きっと、グローリ・ワーカだけの魔法があるに違いない!」
 そう言って杖を振りかざす。
 月の光を浴びて、杖に付いている珠がキラキラと一層輝いた。
「……で、その魔法、どんなのかわかるんですか?」
 アルトが尋ねた。
「うっ……」
「魔法わかんなきゃ使いようなくないか?」
 ヤンもそれに乗る。
「ううっ……」
「というか、そもそも本当にそんな魔法存在するの?」
 アリスもツッコむ。
「うううっ……」
 マニュアは完全に押し黙ってしまった。
「えーと……マ、マー。そうそう、魔王城におっきい図書館あるんだよね、びっくりしちゃったー。きっとそこに行けばその魔法が載ってる本とかあるよぉ!」
 ティルが必死のフォローをする。
 マニュアは顔を上げて涙目でティルを見た。
「ティルちゃん……」
 感動のシーン! かもしれない。
「って、行かせるわけないだろう!」
「いや、だから、そもそもそんな魔法が存在するかもわかってないんだろうが」
 魔王と義父のツッコミ!!
 マニュアは精神に500のダメージを受けた!
「う、うわーん!」
「マー!」
 マニュアは子供のように泣き出してしまった!
「マニュア! 大丈夫。グローリ・ワーカなんだから、きっと勝てるよ。それに、そんなのなくたって、みんな強いよ」
 ――誰!?
 とその場にいた全員思ったけれど、そうだった、これは魔族の姿をしているピュウでした。すっかり忘れられていたピュウでした。というか、部屋の中にいたなんて誰も気付いていませんでした。
「ひ、ひどい! ていうか今回1ページ目にも出てるのに!」
 誰も気付いていませんでした。
「繰り返さないで!」
「ピ、ピュウ……。そうだよね、ありがとう(存在忘れてたけど)」
 マニュアが涙を拭いて笑った。
「ピュウ……! 優しいね(存在忘れてたけど)」
「私たちよりホワさんとの付き合い長いもんね。さすが、扱い方わかってるね(存在忘れてたけど)」
 ティルやアリスも感心したように言った。
「カッコ内ひどすぎるよ!!」
 ピュウがツッコむが、みんな目をそらしている。
「まぁそんなことより!」
 マニュアが仕切り直す。
「そんなこと……!?」
 ピュウが膝を落として落胆している。しかし、誰も気にしなかった。
「orz」
「こいつらを倒ーす!!」
 マニュアは持っていた杖を魔王の鼻先に突きつけて威勢よく言った。
「さっきも同じようなセリフを聞いたが……」
 魔王はその杖の先をギリッと掴み、微笑を浮かべながら言った。
「貴様らごときにこの私が倒せるかな?」
 魔王の力は強く、杖を持つ手を払い除けようとしてもできなかった。――まぁ、大人でしかも男VS子供でしかも女では、当然力で敵うわけもないだろうが。
「って、杖掴まれてるじゃねーか! どうすんだよ! また取られるぞ!」
 ツッコミに定評のあるヤン。
「おい! 引っ張れ!」
 ニールが慌ててマニュアと一緒に杖を引っ張る。
 そして――まるで某かぶを引き抜く絵本のように、みんなで杖を必死に引っ張り――。
「…………」
 パッ。
 魔王が手を離した!
 と、同時に、みんな勢いよく後ろに転んだのだった。
「ぎゃ!」
「うげっ!」
「きゃぁっ!!」
 ドッシーン!
「――……い、いったぁぁ〜〜〜〜〜〜いっ!!!!」
「おい! どけ! 踏むなっ! いてぇー!」
「うぅ……!」
「だ、大丈夫か?」
「ふぇっ!? 大丈夫です! あ、ありがとう……」
「ご、ごめん、大丈夫!?」
「あ? これくらい気にスンナ」
「もー! なに??」
「痛い痛い〜!」
「――こいつら、簡単に倒せるんじゃないか、これ……」
 義父が魔王に向かって呆れながらそう言うと、魔王は馬鹿にしたような笑みを浮かべながら顔を横に振り肩をすくめた。