グローリ・ワーカ   第6章:未来の記憶

「ふんふふ〜ん♪」
 マニュアは、ジャイ○ンよろしく毒になる音波を町中に放っていた。
 鼻歌だけだというのに…マニュア、恐ろしい子…………!!
「ひでぇ!」
 と、その時。
「ニャーン」
 ……ティルの言ったことは当たったかもしれない。
「ニャァ〜ン!!」
 思わずでれっとしてしまうマニュアを見て危機を感じたのか…猫が急に走り出した。
 マニュアも当然物凄いスピードでそれを追いかける。
「…やった!つ〜かまえたっ!」
 猫を捕まえて抱え上げる。すると、途端に猫が暴れ出した。
「…っと、どうしたの急に?え?」
 少しマニュアよりも大きな影が出来る。
 ぐっと上を向いたマニュアの目に飛び込んできたものは……!
「グァ――――!」
「……ゑ?」
 ……そう。魔物だったのだ。
「グァ――――――――ッ!!」
「ひぇっ!あっ、あの、わ…わ、私っ!あ・な・た・の・と・も・だ・ち!」
 マニュアの手からするりと抜け出した猫を追おうともせず、マニュアはジェスチャーで何とか魔物に敵意がないことを伝えようとしてみた。
 …勿論、そんな言葉、意思が通じるはずもなく……
「ギャ――――――――――――ッ!!!!」
「すっ、すいませ〜んっ!!だ、誰かっ!」
 その時。
(誰も助けれはくれないさ)
 マニュアの中で、もう1つの声が聞こえてきた。先日アリスを襲った、あの、もう1人のマニュアであろう。
(人間なんて、皆同じ。自分のことしか考えていない。人が困っててもみ〜んな無視)
「そんなこと、ないっっ!!!!」
 自分の中から聞こえる声に反論するマニュア。
 構わずに声は続ける。
(そうかな?人間なんて、自分以外なら誰が困ってても気にはしないさ)
「そんなことな〜〜〜〜いっ!」
 マニュアは叫ぶ。
「みんなーっ!魔物が出た――――っ!!」
 マニュアがいた場所は建物の影になっていて、回りには人っ子1人いなかった。
 でも、その声は表の通りにまで聞こえたようで。すぐに人が駆けつけてくれ――なかった。
「なぁにぃっ!?まっ、魔物っ!?」
「どっ、どこだぁっ!?」
「逃げろ――――っ!」
「キャ――――ッ!!」
 叫び声が聞こえ、どうやら皆逃げてしまったようだ。
 そこを、あのもう1人のマニュアの声が付け込む。
(ほらね。人間なんて皆そんなもんよ)
「……そんなこと……」
 マニュアは、だんだんと反論できなくなってきていた。