グローリ・ワーカ   第9章:彼女の思惑

 さて、フロントについたマニュアたち。
 女将から言われた言葉に、驚きの表情を浮かべていた。
「え……?」
「なっ、なに、それ……っ!?」
「おい〜っ! 冗談はよせよ!」
「冗談ではありません。申し訳ありませんが、町の話し合いで決まったことなのです」
 宿の女将は深々と頭を下げてそう告げた。
「私たちに、この宿から出てけって……?」
 アリスが女将に言われた言葉を繰り返す。
「いえ、この宿からだけではありません。……この町からです」
 女将はきっぱりと言った。
 ――町から出て行け。
 それが、この町の人たちみんなの意見だと言う。
「な……なんでだ!?」
 驚いてニールが尋ねると、女将は答えた。
「あなた方、魔物と話していましたよね? ――だからです」
「「「「「な〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?」」」」」
 たしかに、魔物がぶら下げた石と会話をしたり、魔族ではあるが、現れた四天王とも会話をしていた。
 しかし――、
「俺らは魔物も退治して、火も消して……この町を救ったんだゾ!! 普通は勇者くらい言われても――!」
「ストーム!」
 血の気の多いストーム。食ってかかろうとしたのを、ティルが止めた。
「でも……やっぱり、それは事実なんじゃ……」
「でもな、オレンジ!」
「ストーム! ティルちゃんの言うとおりだよ!」
 マニュアも言う。
 ストームはマニュアを見て、
「どうした!? おまえまで止めるなんて、熱でもあるかっ!?」
「ちょっ! どーゆー意味だよ!?」
「普通なら1番に抗議しそうなのに……」
 アリスまでもそんなことを言う。
「どっかに頭でもぶつけたんじゃねーのか!?」
 ニールも頷いていた。
「……ムカムカッ!!」
 キレそうになるのを必死で堪える。
「そんなことより、どーすんのー?」
「うーん……仕方ないってことよね……」
 町で決まったこと、それならどうしようもない。不満はあるものの、出て行くしかなかった。
「ちぇっ!」
 相変わらず納得がいかない様子のストームに、マニュアは言った。
「まぁ……それだけ早くアルトちゃんを助けに行けるってことだよ?」
 その言葉に、ストームは表情を変え、
「そーだな……。さっさと出てくか」
 部屋へと戻り、町を後にする支度を始めた。
「あぁ、でも――どーせなら寝ていきたかったなー! 眠い――!!」
 マニュアの叫び声が、まだまだ夜に入ったばかりの町に響き渡った。