人ごみの中、私の冷えた手と貴方の温かい手を繋ぐ。
 今はまだはぐれないように。





  All lost





 私は知っていた。
 貴方も、私が知っていたことを知っているのかもしれない。

 ――本当の気持ちは気付いている。そこまで馬鹿じゃないから。
 そう、このままではいけないことも。
 せめて、せめて、あと少しだけ――。と、そう願って目を伏せる。
 冷えた手を繋ぐ今――この瞬間だけでも、私のものでありますように。
 いつか、離さなければならない時が必ず来る。でも、その前に、私から手離すから。
 人ごみの中に紛れて、誰にも気付かれないように。
 温かかった貴方の手を離す。
 貴方すらそれに気付かず、私は独りそこに取り残されるから。
 振り返らずに、進んでくれたら。貴方の背中を見送って、そのまま消えるから。
 この世界から、消えるから。

 私の顔を覗き込んだ貴方の顔を見て、今は微笑って全てを飲み込んだ。

 誰にも言えない気持ちをいつか。
 その手を離す時に。




 短ぇー!
 こんな状況説明のない主人公の気持ちだけの落書きなんて小説とは言えない。どちらかと言うと詩……? いや、それよりもただの文字の羅列。
 もちろん、自分の中で主人公はどんな状況で……というのは、毎回決まっているのですけどね。
 状況なんて書かずに主人公のどこか狂ってる部分だけ書くのが、チラシの裏の束クオリティ。


――――2012/01/29 川柳えむ