僕の生存日記   第10話:彼のロボットがこんなにメチャクチャなわけがない

『川野辺 葉乃』は『千羽 緋路』の家でゲームをやってたら、なぜかロボットのいざこざに巻き込まれたよ。
『神成 躍人』、『黒井 姫』、『今池 輝也』の出番はないよ。
 これ、なんの小説だっけ?

「なんだ、今の轟音!? 葉乃、大丈夫か――!?」
 異様な音を聴きつけ、千羽が部屋に飛び込んできた。
「あ、せ、千羽……」
 開けた部屋の中では、2体のロボットがミサイルやらロケットパンチを発射している光景が繰り広げられているわけで。

「な、な、な、なにやってんだ――――――――――――――――!!!!!!!!????????」

 今度は千羽の絶叫が響き渡った。


「はぁ? この家のロボットの頂点の座を奪おうとJr.が1stを攻撃したぁ? 葉乃も巻き込んでか?」
 僕と1stの説明に、目を丸くする千羽。
 Jr.は部屋の隅でふてくされている――かどうかは表情からは分からないが、なにも言ってこない。
「そうかそうか。それが本当なら――こいつぁぶっ壊した方がいいなぁ……」
 目がヤバイ。
 部屋がめちゃくちゃのぐちゃぐちゃになっていることよりも、どうやら僕が巻き込まれたことに腹を立てているようで。千羽は本気でJr.を壊そうとしていた。
「え。で、でも、それはさすがに――ちょっと、待……」
『待ッテクダサイ!』
 僕の声を掻き消すように、1stが大きな声を張り上げた。
『タシカニ、Jr.ハ、自分ノ野望ノタメニ葉乃サマヲ巻キ込ンデ、メチャクチャナコトヲシマシタ……。シカシ、ソレハ、マダJr.ガ生マレタバカリデ、世ノ中ノコトヲナニモ知ラナイカラダト思ウノデス。ダカラ、私ガチャント面倒ヲ見マスカラ、ドウカ、壊スコトダケハヤメテクダサイ』
 このロボット、さっきから異常にかっこいいんだが。1stは男前だ。
「1st……。本当に、こいつの面倒が見れるのか? またなにかあったら、その時は――」
『大丈夫デス。モウソンナコトハ、サセマセン』
 千羽に向かって力強く答える1st。
 ロボットだから表情から感情を窺うことはできないが、きっと、人間だったら、澄んだ目で千羽を見ているんだろう。
「――よし、わかった。それじゃあ、1st、Jr.のことは頼んだぞ。いろいろ教えてやってくれよ」
 1stの勢いに負け、千羽は観念したようにそう言って笑った。
『――ハイ!』
 1stは部屋の隅から動こうとしないJr.の方へと駆け寄った。
『大丈夫デス。貴方ハ私ヨリ最新型ノロボット。イツカハ私ヨリモモット上ノ方ニイルノデショウ。デスガ、今ハマダ、私モ負ケテハイマセン。貴方ハ知ラナイコトが多過ギル。デスカラ、コレカラ一緒ニ、イロイロト覚エテイキマショウ。ネ?』
『…………ナンダヨ。オマエダッテ、私ナンテイナイ方が……。邪魔ダロ……。オマエノ場所ヲ狙ッテルノニ……』
 Jr.がぽつりぽつりと落とすようにそう言った。
『ソンナコトアリマセン。私ハ、仲間ガデキテ、嬉シインデスカラ』
 そうか。今まで千羽のロボットは1体しかいなかった(過去におもちゃみたいなロボットをいくつか作ったこともあったが、こんなふうに自分の意思で動くロボットは初めてだった)。
 きっと、1stは寂しかったんだろう。ようやく同じ立場のロボットができて、まるで弟ができた気分なのかもしれない。
『……本当ニ?』
 さっきまでそっぽを向いていたJr.の目が、再び1stの姿を捉えた。
『エェ。本当デスヨ』
 そう言って微笑んだ(気がする)1st。


『オ、オ兄チャン……!』


 ――ん?

 突然謎の『お兄ちゃん』呼びを始めるJr.。
 なんとなく、なんとなーくだけど、また嫌な予感がするんだけど。気のせいだと思いたい。