僕の生存日記   第5話:雨にも負けず電波には負ける

 僕は『川野辺 葉乃』。
 『神成 躍人』先輩ことヤクザや、『千羽 緋路』って幼馴染、クラスメートの『黒井 姫』さんに、転校生の『今池 輝也』君。
 実は結構変わってる人達に囲まれて妙な毎日を送っていました。

 前回、このメンバーで新しい部活……その名も『日替わり部』なんてのが出来そうだったんだけど、それが却下されてしまい……
 はてさて。一体どうなることやら。

 またヤクザが「どうするかー」ってうるさいんだろうと思っていたけれど、意外と何もなく、平和に日々は過ぎ去っていた。
 ――そう。それは、ただ、中間テストなんてもんが始まる時期にかかっちゃったからだと思うけど。
 ぐったりしつつも、その山場を何とか乗り越え……丁度その頃から、今度は梅雨が始まった。
 気が重くなるような雨が続くせいか、テストが終わってからも特に集まりはなく、また入学当初のようなつまらない毎日が戻っていた。
 ……いや、平和ってのはいいことだと思うけどね。
 ただ――何となく寂しかった。

 梅雨が始まって少し経ったある日の朝。
 僕は、下駄箱で黒井さんと会った。
「川野辺くん、おはようです〜」
「あ、黒井さん。おはよう」
 声をかけられ、そちらを振り返り挨拶を返す――そして、次の瞬間、目を疑った。
「って……カッパ!!??」
「ふぇ?」
 いや、別におかしいことはないんだ。クラスメートが傘を差さず『カッパ』を着てきたなんてこと。
 ただ、珍しいなって思って、ちょっとびっくりしてしまい声を上げた。
「ほぇー……あれ?カッパ、変わってますか〜?」
 黒井さんが少し不安そうな顔をする。
 僕は慌てて、
「あ、いやいやいやいや!えっと、珍しいなって思っただけ!おかしくはないよ!」
「はぅー……」
 思わず正直に答えた僕に、まだ不満なのか微妙な声を上げる黒井さん。
 だがしかし、それもかわいいと思ってしまったのは内緒だ。

「傘は〜だめなんですー……」
 教室に向かいながら、何だか久しぶりに黒井さんと話をする。
 こんな風に普通に喋れること。それを少し嬉しく思った。
「って、傘はだめ……って?」
 ふと疑問に思って口にした。
 で、それから思い出した。
 そりゃだめだ。
「何だかー……周りに止められるんです」
 うん。そりゃ止められる。
 僕は黒井さんの友達――早瀬さんの言葉を思い出していた。『細長い棒状の物を持つと何故か豹変して暴れたりするんだよね〜』……(第2話参照)
 そう考えると、彼女も結構大変なんだな……そういえば、小さい頃はお箸も持てなかったって言ってたもんなぁ。
 で、雨の日は常にカッパか……
 これ、相当日常生活に支障が出るよなぁ。大変なんだな……

 僕はさほど身長の変わらない彼女の頭をぽんぽんと撫でた。
「ふぇ?」
 突然で驚いた表情の彼女は、相変わらずかわいかった。