僕の生存日記   第5話:雨にも負けず電波には負ける

 『川野辺 葉乃』。人生の大舞台に今、立っています。
 『黒井 姫』さんと一緒に帰ってます。あ、相合傘ですよ!
 今回はこのまま『神成 躍人』とか、特に『千羽 緋路』とか!あと『今池 輝也』とか出ないことを祈るよ!!

 1本の広げた傘の下――……ぎこちなく、静かに寄り添って歩く2人……
 ――女の子とこんな風に並んで帰ったのなんて……幼稚園以来かもしれない。
 幼稚園児って無邪気だよね。本当にすごいと思うよ。
 だって、僕、今、すげぇ萌え死にそう。っていうか興奮して死にそう。僕、やばい人?
 そりゃここ何年も女の子と縁はなかったし、そもそも友達自体少なかったのに、こうやって女の子と……しかも気になってる子と帰れるとか!これ、夢じゃないの?
 そう考えると、あの時、黒井さんを部活に誘おうと声をかけてくれた、ヤクザこと神成先輩には感謝しないといけないのかもしれない。だって、確実に話す機会とか増えたんだから。
 あぁ。何か、本当に大丈夫かな?何かやらかさないかー……というか、こんな展開にしておいて、僕、この後いきなり事故で死んだりしないか?大丈夫か??
 うわー。ドキドキ。色んな意味でドキドキ。
「川野辺くん、どうしたんですか〜?」
 1人黙って考えた僕に、黒井さんが不思議そうに声をかけてきた。
「あ、な、何でもない!!」
 緊張してるなんて言えるもんか。

「傘、持ちますか〜?」
 いきなり、黒井さんがそう言ってくれた。
 思わず笑顔になって、
「ありがと〜……って、だめだめ!!これは僕が持つから!」
 一瞬許しそうになって焦った。持たせたらだめだってば、僕!!
「そうですかー……?」
 少し不安そうな顔。
 僕は慌てて、
「大丈夫だよ!こーゆーのは男が持つものだから!」
「……そうですか〜」
 黒井さんもにっこり笑ってくれた。
 朝も言ったとおり身長差はさほどない(ていうか、本当に同じくらい)し、情けないとこも多いけど、これでも僕は男なんだ!
 黒井さんを守れるくらいではありたいな、と思う。

 って、そんなことを考えていた次の瞬間。
「ふゃぁ!!!!」
 黒井さんが妙な声を上げ、僕の傘にしがみついてきた――……
 どうやら、道路を走っていた車から跳ねた泥水がかかってしまったようだ。
 !!!!僕、だめじゃん!だめだめじゃん!!
 男として、車道側を歩いてやらなきゃだめじゃん!
 守りたいとか言って、しょっぱなからこんなんじゃん!!!!
 だめすぎる――――!!orz
「黒井さん!大丈夫!!??」
 慌てて黒井さんに声をかける――



 ――大丈夫じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!
 だめだめじゃああぁぁ――――――――ん!!



 そこには……


「あーッはっはっはっはっはっはっ!!!!」


 僕から奪い取った傘を振り回し、高笑いを浮かべる黒姫さんの姿がありました……