僕の生存日記 第6話:事件は遊園地で起きてんだ(前編)
『川野辺 葉乃』は『黒井 姫』さんとデ、デートの真っ最中!
彼女は結構大変な生活を送ってて、友達もあまりいないし、こういったところにもあまり来ることがなかったみたい……。だから、僕はせめて彼女を笑わせたいと決意したんだけど、なんだかさっそく心が折れそうです。
あぁ、そういえばもう『神成 躍人』も『千羽 緋路』も『今池 輝也』も出てこなそうだ。やった!
そんなこんなでお化け屋敷へ向かう途中。
「川野辺くん、あれ見てください~!」
黒井さんが指差す先、そこではきぐるみを着た人が風船を配っていた。
「あぁ、もらってくる?」
そう訊くと、黒井さんは目を輝かせてうなずいた。なにこの娘かわいすぎだろ。
急いで駆けていく黒井さんの後ろ姿を見送る。
はぁ……。これが夢にまで見たデートか……! 幸せだなぁ……。本当に、まるで、かっ、彼氏と彼女みたいじゃんっ!
なんて浮かれていたところへ、ふとよぎったこと。
――あれ? 黒井さんに風船持たせて大丈夫なのかな?
さっきも言ったとおり、彼女は細長いものを持つと豹変してしまう二重人格だ。
細長い――風船の紐の部分って持って大丈夫!?
たしか、黒井さんの親友の早瀬さんは「細長い棒状のものを持つとなぜか豹変する」って言ってたよね。じゃあ棒じゃないならセーフ?
実は遊園地に向かう電車でも、手すりを持とうとした彼女を慌てて止めたんだよね。とりあえずなにもなくてよかったけど……今度も止めておくべきかな? せっかくここまで上手くいっているのに、トラブルは起こしたくないもんね!
僕は急いで黒井さんの元へ向かった。
ちょうど風船を受け取ろうとしている!
「あ、ちょ、ちょっと待って!」
「はい?」
黒井さんが振り向く。
今、まさに受け取ろうとしていたところを、横から奪い取る僕。うぅ、なんかひどい人みたい。
「か、川野辺くん?」
黒井さんが驚いた表情で僕を見る。
僕は慌てて、
「いや、あの、えっと……」
えぇっと、なんて言えばいいんだ? 話聞いてる限り、黒姫さんのこと知らないみたいだし……。
「川野辺くん――えっと、その風船……?」
「――え?」
その風船は、マンガのふきだしの形をしていて、大きくこう書かれていた。
『私、実は彼氏がいるの。ごめんね』
――…………。
「なんっっっっじゃあこりゃああああああああぁぁぁぁ!!!!!!!!」
おもわずそう叫んだ。
これはあれだ。マンガで見たら僕がそう言ってるみたいだ。
って、小説でわかるか――――っ!!!!
そして彼氏がいてたまるか――――っ!!!!
「え? 川野辺くん……え??」
「いないからね!?」
なんか誤解してそうな黒井さんに力強く言う。
「は、はい……」
「ていうか、なんてもん渡して――」
怒ってきぐるみの方を振り返る。
「――って、いねぇ!!」
さっきまで風船を配っていたはずのきぐるみの姿は影も形もなくなっていた。
え、逃げた!? なんて嫌がらせなんだ!? ていうか、いったいなんなんだ!?
「あーもぉっ!」
僕は風船を空へと放した。
「わぁ……。なんだか鳥みたい」
黒井さんが風船を見上げながら言う。
「そうだね」
なんて僕もうなずいてみる。――だが、その正体はふきだし型の風船だ。
でもまぁ、黒井さんが楽しいならそれでいいかな、と思って。
その白い風船は自由な青空へと舞って、そのまま小さくなり、消えていった。
『川野辺 葉乃』は『黒井 姫』さんとデ、デートの真っ最中!
彼女は結構大変な生活を送ってて、友達もあまりいないし、こういったところにもあまり来ることがなかったみたい……。だから、僕はせめて彼女を笑わせたいと決意したんだけど、なんだかさっそく心が折れそうです。
あぁ、そういえばもう『神成 躍人』も『千羽 緋路』も『今池 輝也』も出てこなそうだ。やった!
そんなこんなでお化け屋敷へ向かう途中。
「川野辺くん、あれ見てください~!」
黒井さんが指差す先、そこではきぐるみを着た人が風船を配っていた。
「あぁ、もらってくる?」
そう訊くと、黒井さんは目を輝かせてうなずいた。なにこの娘かわいすぎだろ。
急いで駆けていく黒井さんの後ろ姿を見送る。
はぁ……。これが夢にまで見たデートか……! 幸せだなぁ……。本当に、まるで、かっ、彼氏と彼女みたいじゃんっ!
なんて浮かれていたところへ、ふとよぎったこと。
――あれ? 黒井さんに風船持たせて大丈夫なのかな?
さっきも言ったとおり、彼女は細長いものを持つと豹変してしまう二重人格だ。
細長い――風船の紐の部分って持って大丈夫!?
たしか、黒井さんの親友の早瀬さんは「細長い棒状のものを持つとなぜか豹変する」って言ってたよね。じゃあ棒じゃないならセーフ?
実は遊園地に向かう電車でも、手すりを持とうとした彼女を慌てて止めたんだよね。とりあえずなにもなくてよかったけど……今度も止めておくべきかな? せっかくここまで上手くいっているのに、トラブルは起こしたくないもんね!
僕は急いで黒井さんの元へ向かった。
ちょうど風船を受け取ろうとしている!
「あ、ちょ、ちょっと待って!」
「はい?」
黒井さんが振り向く。
今、まさに受け取ろうとしていたところを、横から奪い取る僕。うぅ、なんかひどい人みたい。
「か、川野辺くん?」
黒井さんが驚いた表情で僕を見る。
僕は慌てて、
「いや、あの、えっと……」
えぇっと、なんて言えばいいんだ? 話聞いてる限り、黒姫さんのこと知らないみたいだし……。
「川野辺くん――えっと、その風船……?」
「――え?」
その風船は、マンガのふきだしの形をしていて、大きくこう書かれていた。
『私、実は彼氏がいるの。ごめんね』
――…………。
「なんっっっっじゃあこりゃああああああああぁぁぁぁ!!!!!!!!」
おもわずそう叫んだ。
これはあれだ。マンガで見たら僕がそう言ってるみたいだ。
って、小説でわかるか――――っ!!!!
そして彼氏がいてたまるか――――っ!!!!
「え? 川野辺くん……え??」
「いないからね!?」
なんか誤解してそうな黒井さんに力強く言う。
「は、はい……」
「ていうか、なんてもん渡して――」
怒ってきぐるみの方を振り返る。
「――って、いねぇ!!」
さっきまで風船を配っていたはずのきぐるみの姿は影も形もなくなっていた。
え、逃げた!? なんて嫌がらせなんだ!? ていうか、いったいなんなんだ!?
「あーもぉっ!」
僕は風船を空へと放した。
「わぁ……。なんだか鳥みたい」
黒井さんが風船を見上げながら言う。
「そうだね」
なんて僕もうなずいてみる。――だが、その正体はふきだし型の風船だ。
でもまぁ、黒井さんが楽しいならそれでいいかな、と思って。
その白い風船は自由な青空へと舞って、そのまま小さくなり、消えていった。