グローリ・ワーカ   第15章:再び魔王城へ

 マニュアが突然言った言葉――『1人で魔王を倒しに行く』……。
「な、なんで……?」
 突然の思いも寄らぬ言葉に、当然驚いた表情をしてティルが訊いた。
 マニュアは俯いたが、やがて口を開くと素直に答えた。
「――明後日、地守月という現象が起こって、魔王の力が強くなってしまう……。いや、魔王だけの力ではないんだけど……、でも、もしかしたら勝てないかもしれないし……」
 その答えを聞き、ティルは首を横に振った。
「違う! 違うよ!! 私が訊きたいのはそういうことじゃない! なんで!? なんでマーが『1人で』行くの!?」
 ティルは、自分の声がだんだんと大きくなっていくことに気付いた。それは、マニュアの勝手な決断に対する怒りがこめられているからだ。
「……ごめん……。ごめん、ごめん……。でも、みんなも無事じゃ済まないかもしれない。やっぱりみんなを巻き込めないよ……!」
 辛そうに下を向く。
「死ぬかもしれない戦いに……」
 ぎゅっと握った手が震えていた。
 みんな沈黙した。ふざけて言っているのではないとわかっていた。
 しばらくして、ティルがそれに答えた。
「……巻き込めないって、なに……?」
「え?」
「巻き込めないって!? なに!? もうじゅうぶん巻き込んでるじゃないの!! 乗りかかった船だもの! 今さら引き返すことなんてできないよ! できるわけないでしょ?」
「でも……じゃあ……」
 マニュアがゆっくり顔を上げると、ティルはにっこりと笑った。
「私たちもついてくよ!」
「決まってるよ!」
「っつーか、今さら過ぎるだろ」
 ティルの言葉に、みんなも賛同して頷く。
 マニュアは驚いてみんなの顔を見回した。
 ティルが言った。
「私たちは勇者なんでしょ? グローリ・ワーカでしょ! そして、何よりも仲間じゃない」
「……でも、迷惑かかるかもしれないし……」
 未だ弱気のマニュア。ティルの反応は?
「だからなーに、今さら、そんなこと! マーがみんなに迷惑をかけるのはいつものことじゃない!!」
 グサグサッ!
 マニュアのハートにティルの言葉の刃が容赦なく突き刺さった! でも否定できない!
「ひ、ひどい……。ティルちゃぁ〜ん。きつーいツッコミを……」
 みんなが笑う。
「とにかく! 一緒に行くから!」
 ティルが手を差し伸べる。
 みんなの笑顔を見て、マニュアはその手をゆっくりと握り返した。
「…………うん!」
 思わず弱気になってしまっていたマニュアだったが、本当はやはり1人は心細かったのだ。だから、みんなの返答が嬉しかった。――私には仲間がいる。それはどれだけ心強いことか。
「――よしっ! そーとなれば、装備を整えるために買い物へ行かなくてわっ!」
「好きだね……買い物」
「いやいや、ティルちゃん。これからまた魔王城に乗り込みに行かなくちゃいけないんだよ? 最終決戦に向けて準備しないとさ!」
「そうだねぇ。私も矢を補充しないと」
 アルトが頷いた。
「それじゃー買い物へレッツゴー!!」
「その前に月水晶返せよ」