グローリ・ワーカ   第22章:偶然じゃなくて必然

 必ず魔王を倒す――!
 そう決意して、魔王と対峙する。
 …………。
「……おい。いつまでこうやってんだ……?」
 まっすぐ魔王を睨みつけたまま、ヤンがツッコんだ。
「え? いや、なんか、目を逸らしたら負けみたいな感覚になって……」
 マニュアも魔王から目を逸らさず、そう答えた。
「……猫か何かかっ!」
 相変わらずツッコんでくるが、自分も目を逸らさないままのヤン。
「しかし、これ、話進まないですよ」
 そこへ、アルトも参戦してくる。やはり、目を逸らさないまま。
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
 なんとも言えない空気が漂う。
 なぜか、目を逸らしたら負け。むしろ、動いたら負けのような、まるでだるまさんが転んだ状態で固まっているみんな。
「…………アホかああああああ――――――ッ!!!!」
 とうとう我慢できなくなったマニュアが、みんなの方を振り返りながらものすごい形相で怒鳴った。
「なんだこれ! ずっとこのままでいる気か! 地守月が終わる前に倒したいって言ったでしょーが!! さっさと戦う!!」
「マ、マー。表情がとんでもないことになってるよ……」
 まるで般若のような顔のマニュア。放送コードに引っかかりそうなレベルでとんでもないことになっている。
 これではまずいので、顔にモザイクをかけることにする。
 ――しかし、小説では意味がなかった!
「ていうか、目を逸らしたら負けとか言ったの、おまえじゃね?」
「……。とにかく! 倒すよ!!」
「モザイクがシャベッタアアアア!!」
「ストーム! そんなボケはいらぬ!」
「マー。顔戻さないとモザイク取れないよ」
 というか、まだまだ若い女の子がモザイクかかるレベルの顔をしてしまっていいのか。
「はっ! ……。さぁ! 皆さん、魔王をお倒しあそばせるわよ!」
「なんだそれ」
 とりあえず、ツッコまれつつも、なんとか顔が戻った(?)マニュア。
 ――と、そんなバカなやり取りをしていると。
「――……」
 背後から、なにか呟いているのが聞こえてきた。
「えっ!?」
 慌てて振り返る。
 魔王と義父が2人で、なにか呪法を唱えているようだった。
「こ、この呪法は……!!」
「え? なに?」
 驚愕の表情を浮かべるマニュアに、アリスが訊く。
「……合体の……呪法!?」
 マニュアは青ざめている。
「合体の呪法ってなんだ?」
 ニールが当然の問いを投げかける。
 その問いに、マニュアは青い顔のまま答えた。
「その名の如く……唱えた2人が合体する呪法だよ」
「つまり、フュー☆○ョンってことか?」
 ストームが某マンガの某合体技のポーズを取りつつ言う。
「ま、まぁそんな感じだけど……。――あ゛――――――――ッ!! その前に倒したかったのにぃ!! 前は最終的にこれで倒されたんだよな……」
 マニュアはその場に崩れ落ちた。
 と、思わず口走ってしまった言葉に、ティルが食いついた。
「え? 最終的にこれで倒されたって……どーゆー意味?」
「あ……」
 顔を上げ、ティルの方を向く。
 ティルも、なんともいえない表情でマニュアを見ていた。
「……もう、別に隠す必要もないかな……」
 そして、とうとう語り出した。
 自分は1度前の世でこの先を経験して、負けて、そして再び人生をやり直したこと。その全てを――。