グローリ・ワーカ 第24章:そしてこれから
「ひゃっほぅ! 人間界に到着~! ここはどこかしら~?」
7人が出た場所は、少し小高い丘の上だった。
見下ろしてみるとと、少し行った先には町があるようだ。それにしても、そこがなにやら明るい。
「今、何時なんだろ?」
「わかんないですけど……。とっくに深夜は回ってるか、むしろ明け方近いかと」
「でも、町の辺りが異常に明るいよー?」
「地守月で空も明るいから、みんな起きてるとかか?」
「それにしても、明る過ぎだろう。なにかやってんじゃないのか?」
「よし、行ってみよーゼ!!」
みんな一斉に町に向かって駆け出した。
町へ着くと――
「こ、この騒ぎは一体……?」
町は文字通り、お祭り騒ぎだった。みんなが通りに出て歓声を上げている。
ところどころにテーブルが置かれ、その周りでは大勢の人々がご馳走を食べたり、酒を飲んだりしている。
広場には簡易なステージが作られ、ステージの上で歌ったり踊ったりしている人もいた。
「あの……なにがあったんですか?」
アリスが近くにいた町の人に声をかけてみると――
「あんたら見てなかったのかい? 今し方、空に神様が現れてなー……!」
その人の話によると、突然、地守月で明るかった空が更に輝き出したかと思えば、その後しばらくして、月をバッグに神様が現れたという。そして、魔王が倒されたことを世界中の人々に伝えたらしい。
それに喜んだ人々は、自然と祭りを始めていた――と。
「あんたらも魔王を倒す旅をしていた冒険者かい? 残念だったなぁ。魔王は倒されちまったってよ!」
町人は大声で笑いながら、広場の方へと行ってしまった。
「『残念だったなぁ』……だってよ」
「オイ、このヤロ――!! 魔王を倒したのはこの俺――……ムグッ!?」
「ちょっと、ストーム! やめろってー!」
マニュアはストームの口を押さえていた。
「ムッ……!! んな、放せって! なんで止めんだよ!?」
「だ、だって、そんなこと教えたら、私たち、普通に過ごせなくなるかもしれないんだよ!?」
マニュアが言う。
ティルも神妙な顔で頷いて、
「うーん……それもそーだねぇ」
と同意した。
「でも、きっといろいろと優遇されるぞ! 俺だって有名になれるしよー!」
ストームが抗議するが、
「いいんだよ、言わなくて。せっかくのブレーコーなのに。みんなに気を遣わせたら悪いでしょー?」
「それに、正体不明のヒーローの方がカッコイイんですよ?」
アルトがそう言うと、
「…………それもそーだな。まぁ、いっか」
と納得するのだった。
「でも、やっぱりちょっとだけ納得いかねーけどな」
「それよりも、私たちも食べ物分けてもらいましょーよ!」
アリスの言葉に、他の人も頷いた。
「そうだな。腹減ったぞ、オイ」
「言わないにしても、これが俺らの祝賀パーティーだなっ!」
「よーし! 私たちも混ざって、祭りを楽しもう!!」
「「「「「「オー!!!!」」」」」」
楽しいお祭りは、その後5日も続いたそうな。
戻って、魔界――。
1人の使用人らしき男が、誰か青年に報告をしていた。
「宰相様と……魔王様が、倒されました」
青年はその言葉を聞いても、表情一つ変えずに答えた。
「構わん。奴らに少しの間、平和をくれてやれ」
「しかし……!」
驚いて抗議しようとする使用人に、青年は薄く笑った。
「シリア――義妹に伝えておけ。一時の幸せを今のうちに噛み締めておけ。おまえたちは逃げられない。僕は父ほど甘くないぞ、と」
顔は笑っているが、瞳の奥は冷徹に光っている。
使用人は頭を下げると、そそくさと部屋を出て行った。
「グローリ・ワーカよ。せいぜい今のうちに楽しんでおくことだ」
ゆっくりと窓の外を覗き、まるで血のように真っ赤に染まった明け方の空を見上げながら、青年は呟いた。
「ひゃっほぅ! 人間界に到着~! ここはどこかしら~?」
7人が出た場所は、少し小高い丘の上だった。
見下ろしてみるとと、少し行った先には町があるようだ。それにしても、そこがなにやら明るい。
「今、何時なんだろ?」
「わかんないですけど……。とっくに深夜は回ってるか、むしろ明け方近いかと」
「でも、町の辺りが異常に明るいよー?」
「地守月で空も明るいから、みんな起きてるとかか?」
「それにしても、明る過ぎだろう。なにかやってんじゃないのか?」
「よし、行ってみよーゼ!!」
みんな一斉に町に向かって駆け出した。
町へ着くと――
「こ、この騒ぎは一体……?」
町は文字通り、お祭り騒ぎだった。みんなが通りに出て歓声を上げている。
ところどころにテーブルが置かれ、その周りでは大勢の人々がご馳走を食べたり、酒を飲んだりしている。
広場には簡易なステージが作られ、ステージの上で歌ったり踊ったりしている人もいた。
「あの……なにがあったんですか?」
アリスが近くにいた町の人に声をかけてみると――
「あんたら見てなかったのかい? 今し方、空に神様が現れてなー……!」
その人の話によると、突然、地守月で明るかった空が更に輝き出したかと思えば、その後しばらくして、月をバッグに神様が現れたという。そして、魔王が倒されたことを世界中の人々に伝えたらしい。
それに喜んだ人々は、自然と祭りを始めていた――と。
「あんたらも魔王を倒す旅をしていた冒険者かい? 残念だったなぁ。魔王は倒されちまったってよ!」
町人は大声で笑いながら、広場の方へと行ってしまった。
「『残念だったなぁ』……だってよ」
「オイ、このヤロ――!! 魔王を倒したのはこの俺――……ムグッ!?」
「ちょっと、ストーム! やめろってー!」
マニュアはストームの口を押さえていた。
「ムッ……!! んな、放せって! なんで止めんだよ!?」
「だ、だって、そんなこと教えたら、私たち、普通に過ごせなくなるかもしれないんだよ!?」
マニュアが言う。
ティルも神妙な顔で頷いて、
「うーん……それもそーだねぇ」
と同意した。
「でも、きっといろいろと優遇されるぞ! 俺だって有名になれるしよー!」
ストームが抗議するが、
「いいんだよ、言わなくて。せっかくのブレーコーなのに。みんなに気を遣わせたら悪いでしょー?」
「それに、正体不明のヒーローの方がカッコイイんですよ?」
アルトがそう言うと、
「…………それもそーだな。まぁ、いっか」
と納得するのだった。
「でも、やっぱりちょっとだけ納得いかねーけどな」
「それよりも、私たちも食べ物分けてもらいましょーよ!」
アリスの言葉に、他の人も頷いた。
「そうだな。腹減ったぞ、オイ」
「言わないにしても、これが俺らの祝賀パーティーだなっ!」
「よーし! 私たちも混ざって、祭りを楽しもう!!」
「「「「「「オー!!!!」」」」」」
楽しいお祭りは、その後5日も続いたそうな。
戻って、魔界――。
1人の使用人らしき男が、誰か青年に報告をしていた。
「宰相様と……魔王様が、倒されました」
青年はその言葉を聞いても、表情一つ変えずに答えた。
「構わん。奴らに少しの間、平和をくれてやれ」
「しかし……!」
驚いて抗議しようとする使用人に、青年は薄く笑った。
「シリア――義妹に伝えておけ。一時の幸せを今のうちに噛み締めておけ。おまえたちは逃げられない。僕は父ほど甘くないぞ、と」
顔は笑っているが、瞳の奥は冷徹に光っている。
使用人は頭を下げると、そそくさと部屋を出て行った。
「グローリ・ワーカよ。せいぜい今のうちに楽しんでおくことだ」
ゆっくりと窓の外を覗き、まるで血のように真っ赤に染まった明け方の空を見上げながら、青年は呟いた。