グローリ・ワーカ   第6章:未来の記憶

 日が昇り、新しい朝が訪れた。
 朝食を取ってから、マニュアとティル、そしてピュウの2人と1匹は町へと繰り出してみた。ついでに買出しも兼ねている。
 イグニスの町を歩きながら、マニュアは言った。
「なぁんか…新しい仲間に出会いそうだなぁ」
「え?何で?」
 ティルの問いに、マニュアは自身あり気に答えた。
「だーって、今まで、外に行った時に仲間になったのっていっぱいいるじゃん」
「あ、そっか」
 ギクゥッ!!
 そんな安直なことでいいのか、マニュアよ!お母さんは悲しいよ!!
「誰がお母さんか!!」
 と、その時。
「ファイアー!」
 ボウッ!
 広場で魔法を使う少年が1人。
 それを囲むようにして大勢の少年達が口々に言った。
「すごいっ!さすがヤンさん!」
「魔法ではヤンさんが1番だ」
「まだ他に使えるんですかっ!?」
「あぁ。四大元素の基本の魔法は使えるな。あと……」
 『ヤン』と呼ばれた少年……背がとても高くすらりとしているが、歳はマニュア達と同じくらいだろうか?……少年は、得意気にそう答えていた。
(こいつ…!魔法使いか…)
 マニュアは使えるとでも思ったのか、突然ヤンの前に飛び出すと、
「魔法なら、私だって…!ファイアー!!!!」
 と、格好だけつけてみた。
 ……しかし、何も起こらなかった。
 広場にいた少年達は、呆気に取られた様子でマニュアを見ていた。
 ヤンだけがマニュアに向かって、
「何だ?オメー」
 マニュアはすかさず答えた。
「ふっ。よくぞ聞いてくれました!私は『マニュア・ホワイト』!!」
「……。俺は『ヤン・サンド』」
 ヤンも名乗る。
 それに、ティルやピュウも横から割って入った。
「私も聞いて!私は『ティル・オレンジ』だよー!」
「『ピュウ』ピュウ!」
 見たこともないピュウの姿に驚き、ヤンは訊く。
「な…何だ?こいつ…」
「『ピュウ』だよー!毛玉族なんだ!」
「何だそりゃ?」
 マニュアの返答にもよく分からないといった様子のヤン。
 そんなヤンを無視して、マニュアは自分の要求を言い放った。
「とにかく聞いて!あんた、力になるかも!?」
「は?」
「さ、ついて来い〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
「おい――――――――――――――――っ!?」
 ヤンの都合などお構いなしに、マニュアはその腕を掴むと、宿まで引っ張っていってしまった。
 その後ろで、ティル、他、少年達は…ただ呆然とその光景を見ていた。一瞬の出来事に、瞳には驚きの色を浮かべて…