グローリ・ワーカ   第7章:呪法

「まさか……シリアが来てるなんて……」
 宿に戻り、1つのさほど広くもない部屋に、計8人(+1匹)は詰め込まれた。
 そういえば、+1匹と書いたところで、やっとピュウの存在を思い出した。
「ピ、ピュウ……」
 訳:ひ、酷い……
「それはさておき」
 マニュアが話を変える。ピュウは心に100のダメージを負った!
「それよりも……嘘だッ!!信じられんっ!ホワイトにこんなかわいい妹がいたなんて……」
 ストームが失礼なことを言う。
 そう。マニュア……いや、ミリアと、先ほど出会った少女、シリアは姉妹だと言うのだが、顔が似てるかと言われるとそうでもなかった。
「うん。全っ然似てないね」
 ティルまで言う。
「余計なお世話じゃ!!どーせ私がかわいくないとでも言いたいんだろー!」
 マニュア、そのとーり。
「ひでぇよ!!……いやいや、それより」
 軽く咳払いをすると、シリアの方へ向き直る。
「ところで、シリア……どうしてここに……?」
 シリアの笑顔が少しだけ歪んだ気がした。いや、それはただの気のせいかもしれない。
 シリアは言った。
「久しぶりの再会なのに、酷いです。姉さんに会いに来たんですよ」
 そして、驚く言葉を続ける。
「私もパーティに加えてほしいんです!」
「ええ――――――っ!?」
「俺、OK」
 ストームはあっさり了承した。
「私も」
「私もー!」
 アリスやアルトも意外とすんなり了承する。
 結局、全員OKを出したのだった。マニュア以外……
「えぇ……?シリア、本気……?私が何の為に旅をしてるか知ってるの?」
 マニュアがシリアに尋ねる。
「……ダメですか〜?姉さ〜ん……!」
「うっ……!」
 シリア、目に涙を浮かべてキラキラ光線を出した。
「お姉さん!」
 キラキラキラ。
「うぅー……!」
 そして……マニュアは負けた。
「ありがとう!姉さん!ラララ〜」
 シリアは喜びの余り、歌って踊りだした。乗りやすいタイプである。
「……ホワイトとちょっと似てるな……」
 ストームは、横目でそれを見て言った。
「でもさ」
 アリスが言う。
「姉妹ってことは、この子も魔族なの?」
「はいです。ほら、耳伸びてるでしょ。牙もあります」
 シリアはそう言って、耳や牙を見せた。
「あ、本当だ」
「ホワちゃんはさっき言ったとおり、ないんだよね」
「意志が強いからだって自慢してたもんね」
「って、ティルちゃん、おい!」
 結構毒舌なティルだった。
「悪かったなー!自慢しちゃ悪いのかー!」
 変な開き直り方である。ていうか、自慢なのかヨ。
「悪ーい!」
「悪いって言うなー!」
「『悪い』じゃなくて『悪ーい』って言ったんだよー!」
「同じだー!」
「違うよー!」
 ギャーギャー!
 マニュアとティルのコントみたいなやり取りだった。
「ふふっ」
 シリアが2人を見て笑った。
「とっても仲がよろしいんですね」
 マニュアとティルが顔を見合わせる。
「いつもあんなに大人しかった姉さんが、こんなに変な性格になってるなんて……」
「ほっとけ!!」
 思わずツッコむマニュア。
「……そーいえば。何年ぶりだろうね、シリアに会うの。今13歳だから……確か、7年ぶりかな……」
「ホワちゃん、7年も会ってなかったの?」
 アルトが驚いて言う。
「うん……。シリア、よく私だって分かったね?」
「だって、全然顔変わってないもん」
「そうか!?」
 ニキビができたとか、そこら辺、変わってるんじゃない?
「作者!ほっといてくれー!」
「性格は変わったね……」
 楽しそうな表情のシリア。
 ――などと和んでいたその時。
「キャ――――――!!!!」
 外から叫び声が聞こえた。
「何っ!?」
「……また、魔物!?」
「ヤローども!さっさと行くぞ!」
「「「「「「ストーム!誰が『ヤローども』だ!」」」」」」
 今日は立て続けに事件が起こる日だなぁ。と考えながら、外に飛び出る。
 外は――既に大惨事であった。