グローリ・ワーカ   第9章:彼女の思惑

「――で、どこ行くんだ?」
 ストームがマニュアに尋ねる。
 マニュアは辺りをきょろきょろしながら、
「たぁしか……こっちにサンドん家が……」
 と、適当な方向を指差した。
 先ほど、明日また合流しようということでヤンと別れた。
 しかし、町を出て行くことになってしまった今、一行はヤンと合流しようと家を探していた。
 別れたときにみんなで家の近くまで行ったのだが、まだはっきりと町の地理を理解していなかったのだ。
 アリスがマニュアの指差す方向を見て、首を傾げた。
「え〜? こっちじゃなかったっけ!?」
 そう言って、マニュアとは正反対の方向を指差す。
「え……? そうだっけ?」
「いや、こっちだ」
 ストームがまた違う方向を指差した。
「「え、どーして!?」」
 アリスとマニュアが同時に声を上げた。
 ストームは自信満々に答えた。
「俺様の勘だ。勘がそう言っている」
 ドカ、バキ、グショッ!!
「こっちじゃないの〜?」
「いーえ、こっちです!」
 何事もなかったかのように、またマニュアとアリスの言い争いが始まった。
「私は寝込んでたし……」
「俺もいなかったからな〜」
 ヤンと別れたのは先ほどアイテムを買いに行った後、そのとき、ティルは部屋で休んでいて、ニールはその見張りとして待機していたので場所を知らない。
「姉さん……。こっちじゃなかったっけ? アリスさんの言っている方」
 シリアがアリスに同意した。
「さっすが、シリアちゃん! そーだよね!?」
 アリスがシリアの手を取って喜ぶ。
「え――――――……?」
 不満そうなマニュア。
「それに、姉さん」
 真顔のシリア。
「ん?」
「アリスさんがヤンさんのこと1番覚えてるに決まってるじゃないですか」
「「「どーゆー意味!?」」」
 吃驚した声を上げるマニュア、アリス、そしてストーム……。
 シリアはいろいろと鋭い子であった。
「ど――ゆ――意味ぃぃぃぃー!?」