「ねぇ。――死ぬの?」

 そいつが笑顔で俺の顔を覗き込む。
 あぁ、鬱陶しい――……。





  My suicide





「まただんまり?」

 余裕ぶったその声で楽しそうに言ってくるから、おもわずカッとなって口を開く。

「おまえには、解んないだろうさ」
「あぁ、解んないね。解ろうとも思わない」

 さっきまでの表情は消え、冷たい視線で俺を見下ろす。

「自分を殺してまで、誰かの幸せを祈る気持ちなんて」

 こうやって真っ赤な血を流して、だんだんと視界も狭くなってきて、闇が迫ってきて……。
 そんなこと、そいつにとっては、馬鹿らしいことなんだろう。
 でも――

「別に不幸じゃないから」
「は?」

 理解できないのだろう。とても不機嫌そうな表情で俺を見ている。

「こうして死ぬのだって、不幸なんかじゃない。これだけの気持ちを手にしたことは、幸せだったから」
「…………」

 薄く微笑って、今度こそ瞼を閉じる。
 とうとう何も見えなくなって、意識が途絶え、昏々と深いところへ――。



「また――ひとり」

 そいつは呟いた。

「おまえばっかり楽になったって、こっちはちっとも楽になんかなれないよ」

 どこか遠くを見つめ、涙を浮かべる。

「だって、まだここにこうして残っているのに。何度も何度も死んだって、まだ全て消えることなんてできない」

 涙は溢れて、足元へと零れる。

「また俺が生まれて、そして俺が残されて死んでいくだけだ」

「おまえは幸せかもしれないけれど、俺は幸せになれないよ」

「心が死んで楽になれるなら、どれだけ良かっただろう」

「死んだ方が、ずっと幸せだったよ」

 ――『俺』という心がまだ存在しているから。
 楽になんてなれない。全て消えるまで、楽になれない。
 一部が消えたところで、まだあるんだ、ここに。

「早く死にたいよ……」

 貴方を想う心をたくさんたくさん殺して、それでもまだ残っている。
 この気持ちを手にしたことは、幸せだったよ。
 けれど、その気持ちを殺し続けるのは、自分の死を繰り返すのは、つらい。

「俺は幸せでも、俺は幸せになんて――」

 涙に濡れた顔を両手で覆う。

 そしてまた、次の死が訪れる。




 俺とおまえと大○郎。
 ――じゃなくて、俺とおまえがごっちゃになって分かりにくいですが『俺』=『おまえ』(=『そいつ』)です。分かるのか、これ。
 まぁ、心の世界って感じです……。
 一応はっきりとした内容? ってほどでもないですが(内容がないy)そんな感じのはあります。が、とりあえず雰囲気感じ取ってもらえたらいいなぁと。
 ただ単にいつもの、たまに雰囲気駄文書きたくなる病。


――――2013/02/16 川柳えむ