グローリ・ワーカ   第17章:カタストロフィ

 荒い息遣いが聞こえる。もうどれだけの間戦っているのだろうか。
「ハァ、ハァハァ……」
 汗だくになったマニュアがその場に倒れ込んだ。
「……もう終わりなの?」
 そう問いかけるシリアの額には1適の汗も浮かんでおらず、涼しい顔をしていた。
「ぐぅ……っ! 剣の得意なシリアになんか勝てるわけなんだろぉ――――っっ!!!!」
 マニュアがまるでガキのように駄々をこねる。
「……今、ガキのところだけ力いっぱい打たなかったかい……?」
 キノセイダヨ(棒読み)。
「くぅ……! シリア!!」
 マニュアにとつぜん名前を呼ばれ、一瞬びくっと体を震わせるシリア。しかし、次の瞬間には涼しい顔で、
「なに? 一緒に人間界を滅ぼす気になった?」
 そんなシリアに、マニュアは叫ぶ。
「シリア! ……お母さんのこと、忘れたの!?」
「…………っ!!」
 シリアの体が再びびくっと震えた。マニュアは続ける。
「お母さんが言ってたじゃない! 人間界を――」
 そう言いかけたときだった。
「シリア様。任務が完了致しました」
 広間へ四天王――トンヌラ、ミンミン、トリヤス、キリオミの4人が入ってきてシリアにそう伝えた。
 シリアは4人のほうを向くと、口元を上げて瞼を閉じる。
「そう……。それじゃあ、後はお姉ちゃんだけね」
 そう言って、マニュアを睨みつけた。
 マニュアには任務がなんのことだかわからない。ただ、厭な予感だけがしていた。
「お姉ちゃん」
 そんな様子のマニュアに、シリアが冷たくそれを教えた。
「みんな――死んだわ」
「え…………」
 一瞬、時が止まったかとマニュアは思った。脳の動きが恐ろしく鈍くなって、まるですべてのものが凍りついたように見えた。その部屋に響くなんの音も耳に届かない。ただ、自分自身の鼓動だけがいやに大きく響いてくるのだ。
「後はお姉ちゃん、あなただけよ!」
 その静寂を破るかのように、シリアがそう声を上げた。
 それでもマニュアがその言葉を頭で理解するまでに、少しの時間を要した。そして今度は急に、心臓がぎゅっと掴まれたように感じた。鼓動がさらに速くなる。
「みんなが――死んだ…………?」