グローリ・ワーカ   第18章:もう迷わない

 シリアが出て行った後のストームら一行。
「おお! 俺がやっぱりリーダーだな!」
 いや、ストームの名前を挙げたのはね、本来のリーダーがお亡くなりになってるからね。
「もう小細工はやめて、このまま戦いましょうか。そちらは全員は揃っていないようですが」
 トンヌラが言う。
「って、シリアちゃんはいいの?」
 アルトの問いに、トンヌラは少し考えてから答えた。
「シリア様にもお考えがある。――だいたい想像はつきますが、私には止める権利などありません。それに、たぶんそう簡単にはいかないでしょうし……」
「どういうこと?」
 トンヌラだけがわかっているようで、他の人たちはみんな、彼がなにを言わんとしているのかがわからなかった。
「とにかく、シリア様はシリア様のお考えで行動なさいますから、こちらはこちらでやりましょう」
 そう言い終わるや否や、トンヌラはとつぜん呪法を放ってきた!
 大きく地面が揺れる。
 みんなその場に立っていられなくなり、おもわず膝を突く。
「ロック ドロップ!」
 さらにそこへ新たに呪法を放つ。すると彼らの頭上に岩が現れた!
「やべっ! 危ねぇ、よけろ!」
 ニールが叫ぶ。
 慌てて、間一髪のところを避ける。
「それじゃお次っ! プレンティ ヘイル!」
 彼らを休ませるつもりなどなく、今度はミンミンが呪法を放つ!
 ストームたちに氷の塊が降り注ぐ!
「いででででっ!」
「おい、誰か反撃しろよ!」
「そーゆーおまえが反撃しろよ!」
 ヤンの文句にニールが返す。
 ヤンは魔法の詠唱を始めた。
 アルトやスリムも慌てて武器を構える。しかし――、
「させませんよ! パウダー シュート!」
 トリヤスが呪法で火を飛ばす!
「ひゃぁ!?」
「うわっ!」
 悲鳴を上げてよける。これでは攻撃ができない!
「こらーっ! こーゆーもんはターン制だろ!?」
 ストームがそれに文句を言う!
「どこのゲームの世界の話ですか!」
 トリヤスがツッコむ!
「ウォーター・ピアス!」
 と、隙が出来たそこへ、ヤンが攻撃を仕掛けた! 水が鋭い刃へと形を変えて襲い掛かる。
「うわわわわ! ひ、卑怯ですよ!」
「まったく攻撃に回らせてくれないおまえらが言うことじゃねーだろ!」
 トリヤスの言葉に、おもわずツッコまざるを得ないヤンだった。
「今のうちにおまえたちも攻撃しろ!」
 ヤンが仲間に声をかける。
 ぼーっとしていた仲間たちもハッとして戦闘態勢に入る。
「ストーム ブラスト!」
 そこへキリオミの攻撃!
「うわっ!」
 もろにくらってヤンが倒れる。
「サンド!」
「オイラを忘れないでほしいっス!」
「誰だっけおまえ!?」
 ストームがひどいことを言う。
「ひどいっス! キリオミっスよ!」
「あぁ! アルトを攫いやがったヤツじゃねーか!! 剣3本一気投げ!」
 ドスッ!
 キリオミの名を聞いて、あまりにも素早い行動のストームだった。
「…………。なっ、なにするっスかああぁぁ〜〜〜〜!」
 みごとにナイフが脳天へと突き刺さり、キリオミはぶち切れたのだった。
「まったくバカにして、もう許さないっス!」
「こっちだって許さねーっつーの!」
 2人の間に怒りの炎がメラメラと燃え盛るのが見える。
「あー、ストーム。俺も加勢するぞ」
 ヤンが言う。先ほどのバトルで負けたのが納得いかないようだ。
「って、2対1なんてずるいっス!」
「どうせさっきも2対1で戦ったんだからいいだろ」
「たしかに戦って買ったっスけど……! わかったっス。いいっスよ!」
 あっさり乗るキリオミだった。
「えーっと、じゃあ私は――誰を攻撃すればいいのかしら?」
 アリスがきょろきょろ辺りを見回す。
「じゃあ、アリちゃん! 私と一緒にミンミンさん狙いで!」
「あ、あたし!? わかったわ。さっきの決着をつけようじゃないの」
 こちらは、アルトとアリスでミンミンの相手をすることになったようだ。
「じゃあ、僕たちもさっきの再戦かな? いくよ、ヒナさん!」
「はーい、了解!」
 剣を構えるスリムに、敬礼のポーズをして笑顔で答えるヒナ。さっきから出番が少なかったけど、やっと出番だね!
「そこのナレーション! 余計なこと言わない!」
「おお、再戦ですか。でもそれじゃあ同じ結果になりますよ?」
 トリヤスが嫌な笑顔を浮かべる。
「…………オール・リフレクション!」
 その次の瞬間にはヒナがなにか魔法をかけ終えていた。
「はい?」
「これで、短い間だけど、全員魔法を跳ね返すよ。あ、呪法も跳ね返す、はず。これけっこう魔力使うんだよねー」
 ヒナの言葉に、仲間全員が歓声を上げる。
「おお、すげえ!」
「あいつら使ってくるのほとんど呪法だし、これでだいぶ楽になるんじゃないか!?」
「なっ……ひ、卑怯ですよ!」
「卑怯なわけないでしょーに!」
 トリヤスの文句にスリムが言い返す。
「さっきも使っておけばよかったぁ」
 ヒナがその場に座り込んで言う。
「まぁ過ぎたことはしょーがないさ! んじゃ攻撃してきますっ!」
 そうヒナに声をかけ、スリムはその場を飛び出した。
「そ、そんな! 他の3人はまだあれですけど、私はほとんど呪法専門なんですよー!」
 トリヤスが情けない声を上げる。
 しかし、スリムはそんなことお構いなしに剣を振り下ろした!
「ひいぃぃ〜〜!」
 ギリギリのところでよけ、逃げ回るトリヤス。スリムとの追いかけっこが始まった。
「んじゃあ……。俺はまたおまえだな。って、俺1人かよ!」
「一騎打ちですね。いいでしょう」
 ニールとトンヌラが睨み合う。
 ニールは腰を落として、トンヌラは剣をまっすぐに持ちそれからニールをまっすぐ見て、お互い構える。2人は戦闘態勢に入った。
「俺が勝ったらオレンジを返してもらうぞ」
「それは約束できませんね。しかしまぁ、約束はできませんが考えてはあげましょう。そもそも負けるつもりなどもうとうありませんが」
 なんか2人ともカッコイイ発言を……。
 ――こうして、再び戦いの火蓋は切って落とされた。正しくは切って落とされたじゃなくて、火蓋は切られただそうな。勉強になるね。
 なんてことを1人で言ったりしてみても、みんな真剣に戦っていて誰もツッコんでくれないのでした。悲しいね。
 そして、バトルに真剣になっていて、マニュアの存在を誰もが忘れていましたとさ。なんというひどい話。