グローリ・ワーカ   第18章:もう迷わない

「あ、シリア〜」
 戻ってきたシリアを、ティルが大量の本を抱えて出迎えた。
「…………なに、それ……」
 その様子を汗だくで見つめるシリア。
 ティルは苦笑いを浮かべ、
「だってぇ、よくわかんなくて〜。この中にあるかもしれないかなぁって」
「……もう、見つかったからいいわ……」
「えぇー!」
 見つかってめでたいはずなのに、おもわず不満の声を上げてしまうティルだった。
「せっかくいろいろそれっぽいの集めたのにぃ……」
「あーごめんね。でも、これで無事に……」
 ぱらりと本をめくる。
 それを眺めて、シリアは少しの間固まっていた。
「……どうしたのぉ?」
 異変に気付いて、ティルが問いかける。
 その声にはっとして我に返るシリア。彼女は慌てた顔で言った。
「これ……なにかおかしいわ。この呪法、こんな発音じゃなかったと思うけど……」
「えぇ〜?」
 ティルは抱えていた本を近くにあった机の上に置くと、シリアの持っている本を覗き込んだ。――さっぱりわからない……。
「んー……? 禁忌とされている……?」
「古い文字で書かれてるから、私の勘違いかもしれないけど……。でも、たしかここの発音は――」
 ぶつぶつと呟きながら、ふと視線を本から外した。すると、ティルが机の上に置いた本が目に飛び込んできた。
「――…………!」
 何冊も重なっていた本を崩す。
 その中から1冊だけを抜き取った。
「ちょ……シリアちゃぁん!?」
 驚いたティルが声を上げる。
「……これだわ」
 その本を手にしてシリアが呟いた。
「え? やっぱり私が見つけた中にあったのぉー?」
 嬉しそうにティルが言う。が、
「違うわ」
 ばっさり否定する。
 ティルがこけた。
「え。じゃあなんなのー?」
「これ」
 シリアが手に取った本の表紙をティルに見せるよう突き出した。
「『アナグラム』――?」
「そうよ」
「なにそれぇ?」
 ティルがさっぱりわからないといったふうに訊く。
「文字を並び替えて別の言葉を作ることよ。こっちの本に載っている呪法は、どうやらアナグラムで書かれているみたいなの」
「えっと……。つまり、正しくない言葉ってこと?」
 なんとか理解して、ティルが尋ねる。
 シリアは頷いた。
「そう言うと語弊があるかもしれないけど――まぁ呪法としては正しくないってこと。このまま唱えても呪法は発動しない。アナグラムを使って正しい文言を隠すことで、安易に呪法を使えないようにしてあるのね」
 そう言ってため息をつくと椅子へ腰をかけ、アナグラムの本を開いた。その横に古の呪法の本も重ねて置く。
 そうして真剣な顔をすると、
「急いで解くわ! ティルも手伝って! ――まずはこの文字自体を正しく読まないと。この古代文字が載ってる本を探して持ってきて!」
「ええぇぇぇぇ――――!?」
 シリアのさらなる指示に、ティルは図書館全体に響くような情けない声を上げるのだった。
(絶対解いてみせるから――待っててね、お姉ちゃん)
 シリアはみごと呪法を解読することができるのか。
 マニュアは果たしてどうなってしまうのか、このまま目覚めることはないのか?
 そして、勇者一行VS四天王のバトルの行方は――!?(こう書くとカッコイイな。などと思ったりして)
 すべてはシリアにかかっている……!?
 というわけで、次回までにシリアが解読しておくそうです。つづくぅ!
「後半になって大半がシリアスになってるのに、なんで微妙なギャグっぽいのが入るのぉ? っていうか、たぶん余計なナレーション挟まなければシリアスだと思うけどー……」
 だって、ギャグファンタジーって銘打ってるのに……。
「もう遅いよぉ」
 ソウデスネ……。
 さて、気を取り直して。次回へと続く!