グローリ・ワーカ   第5章:ペンダント

「で?アルト、今までどうしてたの?」
 宿に戻ってきた5人。更に、アルトも加え、アリスは話を始めた…というか、アルトに問い質した。
「それは……」

 以下、アルトの話。
 ルクスの町で冒険者が放った水の魔法。そして起こってしまった洪水――(第2章、第3章参照)
 アルトは水に流され、そのまま気を失ってしまった。
 暫くして気付けば見慣れない景色……見知らぬ家のベッドの上。
「おや、お目覚めかい?」
 その横には知らないおばさんが座っていた。
「ここは…ここはどこっ!?私はだーれっ!!??」
「き、記憶喪失かい!?」
「いや、名前覚えてるよ。確かお母さんがアルトって言ってた」
 アルトはあっさりと答えた。
「なんだい…びっくりさせるんじゃないよ」
「へへ…すいませーん!…で、ここは?」
「ここはペリクルムの町。私は『フェル・クリーム』だ。ところで…どうして、あんなところで倒れていたんだい?」
 どうやら、アルトは町の外れで倒れているところをフェルに発見されたらしい。
 フェルの言葉に、アルトは急に泣き出してしまった。
「ぼ、冒険者っていうのが…来て……ヒック、水が…出て……ヒック…それに、流され…ちゃっ…て……」
 フェルは慌てて、
「わ、分かったよ。そうかい、そりゃかわいそうに……」
「お家…分かん…ない……」
 泣きながら訴えるアルト。
 フェルは困ったようにアルトを見て、ぽんぽんと頭を撫でると、
「そうか……。そりゃそうだろうね…。それなら、おばさんのところで一緒に暮らせばいい!いつか家が分かる時までね」
「いい……の……?」
 真ん丸の目でフェルを見つめるアルト。
「あぁ、もちろんいいさ。こんなかわいい子!おばさんも丁度子供が欲しかったしね!」
 フェルは問題ナシとばかりに笑う。
 アルトは尋ねる。
「なら…お母さんって、呼んでもいい?」
「あぁ、いいとも!」
「うん!!お母さん!」

 ――というわけで、彼女は目覚めたこの町で暮らしていたのだ。
 そんなアルトを見て、マニュアは言った。
「…ていうか、私はアルトちゃんの神経の太さにびっくりですよ……」
「ど、どういう意味ですか!?」
「いや、まんまですよ……見知らぬ町で目覚めてもボケれる余裕がすげぇ…」
「そっか…今は『アルト・クリーム』って言うんだ」
 アリスが少しだけ寂しそうに微笑んで言う。
「あ、うん。そうなんだ。前は『アルト・シトラス』だったかなぁ……?」
「ていうか自己紹介してないじゃん!私は『マニュア・ホワイト』」
 慌てて名乗る。それに続いて、
「私は『ティル・オレンジ』……」
「俺は『ストーム・カーキー』!!」
 ストームを見ながらマニュアは思った。
(ストーム…また内心喜んでいそうだな……)
「俺は『ニール・クラベット』!」
「私は…分かってるよね?」
 アリスの言葉にアルトは頷いて、
「うん!『アリス・ヘイズル』でしょ!」
「よしっ!!」
「ピュ〜〜……」
 そこへ、ひょっこりと黒い毛玉みたいなものが現れた。…そう、ピュウである。
 訳:僕のこと忘れないで……
「あ……」
「『ピュウ』ピュウ!」
「その生き物は一体……」
(反応がアリスちゃんに似てるな…)
 不思議そうに見つめるアルトに、マニュアはピュウを手の平に乗せると説明した。
「ピュウだよん!毛玉族っていう種族なの!」
 そうして、自己紹介が終わった次の瞬間。
 アリスから重大な報告が始まった。
「では、私達、ルクスの町に帰ります」
「え…えぇぇ――――――っっ!!??」