グローリ・ワーカ   第8章:攫われた仲間

 ピチャ……!
「冷たっ! はっ……ここはどこ……!?」
 天井からわずかに漏れている水が鼻先にかかり、アルトはおかげで目を覚ますことができた。
 辺りをきょろきょろと見回す。
 石で敷き詰められた薄暗い部屋。目の前には鉄格子。その向こうには廊下があるらしいが、誰かいる気配もない。
 見覚えのない風景に、アルトは考え出した。
(えーっと……。たしか――誰かに後ろから頭を殴られて、で、何かを飲まされて――)
 自分は誘拐されたのだ。とやっと気付く。
「あぁっ! 私ってば、悲劇のヒロイン!」
 ツッコんでくれる人などいるはずもないのに、1人変なことを言ってみる。
 すると、驚くことに、背後から聞き慣れた声がした。
「だぁーれが『悲劇のヒロイン!』だよっ!!」
 はっと後ろを振り返ると、やはりそこには見慣れた人物が――
「マニュアちゃんっ!!」
 そう。そこにはマニュアの姿があった。
「まぁーったく! 人が心配して来てみれば!」
「あ、あはは……。って、どうやってここに……」
「ツッコミ不可――!」
「えぇー!?」
「なーんてね。全部順序立てて話すから」
「う、うん……」
 マニュアがどうやってこんな牢の中に入ってきたのかも謎だが、それよりも、いつも一緒にいるはずのアリスやティル、その他大勢ストームたちはいったいどうしたのかが気になっていた。そして、気を失ってからどれだけの時が経っているのかも。
 マニュアは話し始めた。アルトが攫われてからのことを――。