グローリ・ワーカ   第8章:攫われた仲間

 それは、アルトが目を覚ましてから少し前に遡る――。

 イグニスの町に魔物によって放たれた火を消して、気を失っているティルを宿へと運び込んだ。
「さて、問題です」
「はい?」
 突然マニュアが読者に向けて問題を出し始めた。
「読者に向けて!?」
「ティルをここまで運んできたのは誰でしょう!? 3、2、1、Q!?」
 アリスが代わりに答えを言う。
「答えは、ニー……!」
「バカッ! おまえら! いちいち言うなって……!」
 ハイハイ。ラブコメはいいから。
「ラブコメじゃねーっつの!」
「まったく。危ないとこだったよ、本当に!」
「あ? ラブコメがか?」
 マニュアの言葉にストームがボケる。
「違う! ティルちゃんが眠らされた話! この深い睡眠は眠り薬を飲まされたものだよ!」
 眠り薬とは、名前のとおり、人を眠らせる薬である。
 眠らせるアイテムは2つあり、1つはこの眠り薬、もう1つは眠り粉と呼ばれるものだ。眠り粉の方は効果も薄くすぐに目覚めてしまうが、眠り薬は強力な反面、死に至ることもある恐ろしい薬である。
「眠り薬を使うなんてな……。なぜ眠り粉にしなかったのか……」
 ヤンも深刻そうな顔をして呟いた。アリスも青い顔をして、
「死ぬところなんでしょ! このままだと……!」
「うん。このままじゃ下手すれば死んでしまう。永遠に眠ることに!」
「ティルさん……早く助けないと!」
 シリアも青い顔で言う。
「さっさと目覚め薬飲ませろよ!」
 ストームが言う。
 目覚め薬もその名のとおり、目を覚まさせる薬である。
「そーだぞ! 早く飲ませろ!」
 ニールも声を上げた。
「うん。そうだね、飲ませないと――って」
「ん?」
 マニュアが飲ませようと薬を持って、立ち止まった。
 アリスが不思議そうに見る。
「どうしたの? ホワさん」
「いやさ、アリちゃん――」
 みんなの顔を見回して、言う。
「――どうやって薬飲ませる?」
「「「「「…………」」」」」
 みんな、顔を見合わせて沈黙。
「や、やっぱ――口移し――なの?」
 アリスがぼそりと言った。
 更に沈黙が続く。
「え、えっと……。ここは、やっぱりニールさんではないんですか?」
 沈黙を破ったのは何も知らないシリア。
「なんでだよっ!!」
 ツッコむニール。
 シリアは不思議そうな顔で、
「え? だって、ティルさんをここまで救ったのはニールさんだし、2人は付き合ってるんじゃないんですか?」
「「ぶっ!」」
 驚きのあまり、ニールは吹き出した。ついでにマニュアも吹き出した。
「誰が付き合ってるか――――――――!」
「え? 違うんですか!?」
 ニールの否定する言葉に、心底驚いた表情のシリア。
「えーとさ……ストーム。女好きだし、やれば? そしたらたぶん、ティルちゃんも喜びそうだしなー……」
 マニュアが言う。ストームは慌てる。
「は!? 俺!?」
「え、いーじゃん」
「「なんでだ――っ!!」」
 意外としようとしないストームと一緒に、ニールもなぜかツッコんでいた。
「誰でもいいけど、急がなきゃヤバイんじゃないのか?」
 ヤンの言葉に、マニュアは、
「じゃあヤンがやればいい!」
「なんで!?」
 ヤンよりも先になぜかアリスが言う。
「アリス!?」
「え? あれ……?」
 ストームに名前を呼ばれてはっとした表情。
「い、いや、誰でもいいんじゃない? そんな場合じゃないし」
 アリスは慌てて言い直した。
 まったく面白い展開である。
「「「「「面白くなーい!!!!」」」」」