僕の生存日記 第9話:偽装ラバーズ
『川野辺 葉乃』と『千羽 緋路』は『今池 輝也』を尾行していたところ、とんでもない現場を目撃してしまった。
彼の身の危険を感じた僕らは急いでその場から離れ、今度は『神成 躍人』も連れて現場に戻ったが――
どうやら、既に片はついていたようだ。
とにかく。『黒井 姫』はもう帰宅しただろうし、彼女が変なことに巻き込まれなくて本当に良かった。それに、みんながなんとか無事だったことにも、ほっと胸を撫で下ろしたのだった。
ていうか、ちょっと待って。
「あの、今池君……『今池先輩』って――あの、もしかして……今池君、僕より、年上…………?」
倒れた音無さんを軽々とお姫様抱っこして、その場から離れようとした今池君に、僕は尋ねた。
「ん? あぁ、俺、2年生だけど?」
――んな――――――――――――っっっっ!!!!????
なんの気なしに、今池君はさらりと答えた。
僕はといえば、ぶっちゃけ、同い年だと思ってたから――これが、今日1番の衝撃的な出来事だった……。
「え、えっと、じゃあ、あの、なんか、すごく今更で申し訳ないんですが、今池先輩って呼びマス……。というか、今までタメ口ですいませんでした……」
目を逸らしながら僕は言った。
あぁ、なんというか、恥ずかしい&すごく申し訳ないっ!
しかし、今池君は全然気にした様子なく、
「えぇ? 別にいいよ。今まで通りで。むしろ、葉乃ちゃんなら名前で呼んでくれても全然構わないしね」
そんなことを言うのだった。
「いや! さすがに! それはしないけども!」
「まぁとにかく。今まで通りで構わないから。いきなり変えられても違和感感じちゃうからさ。じゃあ、そういうことで。また休み明けだね」
うぅ……。まぁでも、やっぱり今更か……。今まで通りでいいって言ってくれたし、お言葉に甘えよう。
「うん。じゃあ、今まで通りで……。今池君、また休み明けにね」
「――って、休み明けではないぞー!!!!」
突然大声を出す神成先輩。
僕も千羽も、行こうとしていた今池君も、みんな目を丸くして神成先輩を見た。
「今日俺がおまえ達を探していたのは他でもない! 夏休みの部活動&合宿のことについてだ!」
「「「ハァ!?」」」
みんなが声を揃えた。
夏休みも部活するつもりだったの!? 正式な部活でもないのに! そもそも、一体なにをやるっていうのか!?
「夏休みも部活する必要あるんですか? 大体正式に部活動の許可を得てないですよね? そもそもなにかやることなんてあります?」
あぁっ! 僕が思ったことをまんま千羽が尋ねた! 相手が千羽だと心が読まれているようでなんか怖い。
――と、思いながら千羽を見ていると、
「そりゃ、葉乃のことならなんでも分かるさ」
こっちを向いて恐ろしいこと言い出した!! 聞かなかったことにする!
「と、とにかく! その通りですよ! 勝手に部活やっていいんですか!? 特に目的もなく!」
『勝手に部活やって』――というのは、正直今更な気もするけど。
「問題ない!!!!!!!!」
なぜか強気でそう答えるヤクザでした。
「って、問題ありまくりでしょーに!」
「いや、問題ないぞ。一応、顧問が就いたしな。部活も認められた」
――…………え?
「今、重大なことさらりと言いませんでしたかッ!?」
「この部活に顧問が就くとかありえることなんですか、それ」
「さすがに俺も驚いたんだが」
僕も千羽も今池君も、口々に言った。
「みんな、落ち着け。これは事実だ。顧問はなんだかひどく怯えた顔をして――」
「あ、あまり行けないし、えっと、問題起こさなければ構わないけど、な、仲良くやってくれよ……?」
「――と言っていたぞ」
――それって、ただ、ヤクザが怖かっただけでは……? 許可取れたのも、ただの脅しに近い気がする……。
しかしまぁ、認められたなら、別に部活やってもいいのか……。なにをやるつもりか知らないけど。
「というわけで! 早速週明けから部活動開始だ! 部室はとりあえず1年1組の教室を借りることになった」
「僕の教室!?」
「月曜9時に部室集合だ! それでは、また来週!」
神成先輩は元気よくそう言った。
しかし、今、この場に部員が1人足りていないことに気付いてほしい。
「あの。黒井さん、もう帰っちゃっいましたけど……」
「あぁ、問題ない。黒井嬢には後でメールを入れておく」
こともなげにそう答えられた。
僕は、さっきの今池君が2年生だったという事実よりも、もっともっと衝撃を受けた。
だって――
「――黒井さんの……メアドを知っている…………!?」
「? あぁ、もちろん知っているが?」
な、なんだって――――――!!??
ぼ、僕、彼女とはクラスメートだし、一応デートもしたし、ちょっとは周りより仲良くなれたかな? なんて思ってたんだ……だけど、だけど……。
「まだ僕メアド訊けてないのにぃ――――――――――――!!!!orz」
膝をがっくりつき、頭を垂れて叫んだ。
「なにィ!?」
神成先輩が驚いている。もう僕もメアド知っていると思われてたんだ……。
「メアド訊けてなくてスイマセン……。上手く話しかけられないチキンでスイマセン……」
凹みながら呟く。
そうだ。神成先輩がメアドを訊けているというのなら――
「もしかして……今池君も、黒井さんのメアド、知ってる……?」
「え? そりゃぁ、かわいい女の子のメアドだし」
当たり前といえば当たり前だった――――――!!!! うわぁーん!!
そして、はっと気付く。
「ハッ……。も、もしかして、千羽も黒井さんのメアド、知ってる……!?」
「いや、知るわけないだろ」
千羽はあっさりとそう答えた。
さすがに知らなかったか。安心した――
「葉乃以外興味ないから知るわけないだろ」
その回答は求めてない――――――!!!!
「女子のメアドなんて必要ない! 葉乃のだけで十分だ!」
「あ、ちゃんと普通の男友達のは入ってるんだ。安心した。って、僕、女の子扱い!?」
千羽の発言に、ついツッコんでしまうのだった。
というか、今池君にもだけど、女の子扱いやめてほしい……。
「と、とにかく。来週から、またよろしく頼むぞ」
「は、はい……」
神成先輩は頷く僕の頭に手を置きぽんぽんと撫でると、力強く笑ってみせた。
それにしても。ショックなことが多かった1学期最終日……。
でもまぁ、みんなにまたすぐ会えるってことが分かって、ちょっと嬉しかったりする。最初はあんなに嫌がっていた部活だというのに、なんだか不思議な気分だ。
特に、黒井さんとは、気まずいまま2学期まで会えないんじゃないかと思っていただけに――ありがたいことだった。
小さく微笑んでから、僕は顔を上げて、じりじりと照り付ける太陽を睨んだ。
青い空、白い雲。夏はまだ、始まったばかりだと――
※ヤバイ男はヤクザ(神成先輩)が注意しておいてくれました。多分、もうしないでしょう。
そして、今池君はこの日1日、ちゃんと音無さんを恋人としてデートしたそうです。もうくっついちゃえばいいのにと思う。
『川野辺 葉乃』と『千羽 緋路』は『今池 輝也』を尾行していたところ、とんでもない現場を目撃してしまった。
彼の身の危険を感じた僕らは急いでその場から離れ、今度は『神成 躍人』も連れて現場に戻ったが――
どうやら、既に片はついていたようだ。
とにかく。『黒井 姫』はもう帰宅しただろうし、彼女が変なことに巻き込まれなくて本当に良かった。それに、みんながなんとか無事だったことにも、ほっと胸を撫で下ろしたのだった。
ていうか、ちょっと待って。
「あの、今池君……『今池先輩』って――あの、もしかして……今池君、僕より、年上…………?」
倒れた音無さんを軽々とお姫様抱っこして、その場から離れようとした今池君に、僕は尋ねた。
「ん? あぁ、俺、2年生だけど?」
――んな――――――――――――っっっっ!!!!????
なんの気なしに、今池君はさらりと答えた。
僕はといえば、ぶっちゃけ、同い年だと思ってたから――これが、今日1番の衝撃的な出来事だった……。
「え、えっと、じゃあ、あの、なんか、すごく今更で申し訳ないんですが、今池先輩って呼びマス……。というか、今までタメ口ですいませんでした……」
目を逸らしながら僕は言った。
あぁ、なんというか、恥ずかしい&すごく申し訳ないっ!
しかし、今池君は全然気にした様子なく、
「えぇ? 別にいいよ。今まで通りで。むしろ、葉乃ちゃんなら名前で呼んでくれても全然構わないしね」
そんなことを言うのだった。
「いや! さすがに! それはしないけども!」
「まぁとにかく。今まで通りで構わないから。いきなり変えられても違和感感じちゃうからさ。じゃあ、そういうことで。また休み明けだね」
うぅ……。まぁでも、やっぱり今更か……。今まで通りでいいって言ってくれたし、お言葉に甘えよう。
「うん。じゃあ、今まで通りで……。今池君、また休み明けにね」
「――って、休み明けではないぞー!!!!」
突然大声を出す神成先輩。
僕も千羽も、行こうとしていた今池君も、みんな目を丸くして神成先輩を見た。
「今日俺がおまえ達を探していたのは他でもない! 夏休みの部活動&合宿のことについてだ!」
「「「ハァ!?」」」
みんなが声を揃えた。
夏休みも部活するつもりだったの!? 正式な部活でもないのに! そもそも、一体なにをやるっていうのか!?
「夏休みも部活する必要あるんですか? 大体正式に部活動の許可を得てないですよね? そもそもなにかやることなんてあります?」
あぁっ! 僕が思ったことをまんま千羽が尋ねた! 相手が千羽だと心が読まれているようでなんか怖い。
――と、思いながら千羽を見ていると、
「そりゃ、葉乃のことならなんでも分かるさ」
こっちを向いて恐ろしいこと言い出した!! 聞かなかったことにする!
「と、とにかく! その通りですよ! 勝手に部活やっていいんですか!? 特に目的もなく!」
『勝手に部活やって』――というのは、正直今更な気もするけど。
「問題ない!!!!!!!!」
なぜか強気でそう答えるヤクザでした。
「って、問題ありまくりでしょーに!」
「いや、問題ないぞ。一応、顧問が就いたしな。部活も認められた」
――…………え?
「今、重大なことさらりと言いませんでしたかッ!?」
「この部活に顧問が就くとかありえることなんですか、それ」
「さすがに俺も驚いたんだが」
僕も千羽も今池君も、口々に言った。
「みんな、落ち着け。これは事実だ。顧問はなんだかひどく怯えた顔をして――」
「あ、あまり行けないし、えっと、問題起こさなければ構わないけど、な、仲良くやってくれよ……?」
「――と言っていたぞ」
――それって、ただ、ヤクザが怖かっただけでは……? 許可取れたのも、ただの脅しに近い気がする……。
しかしまぁ、認められたなら、別に部活やってもいいのか……。なにをやるつもりか知らないけど。
「というわけで! 早速週明けから部活動開始だ! 部室はとりあえず1年1組の教室を借りることになった」
「僕の教室!?」
「月曜9時に部室集合だ! それでは、また来週!」
神成先輩は元気よくそう言った。
しかし、今、この場に部員が1人足りていないことに気付いてほしい。
「あの。黒井さん、もう帰っちゃっいましたけど……」
「あぁ、問題ない。黒井嬢には後でメールを入れておく」
こともなげにそう答えられた。
僕は、さっきの今池君が2年生だったという事実よりも、もっともっと衝撃を受けた。
だって――
「――黒井さんの……メアドを知っている…………!?」
「? あぁ、もちろん知っているが?」
な、なんだって――――――!!??
ぼ、僕、彼女とはクラスメートだし、一応デートもしたし、ちょっとは周りより仲良くなれたかな? なんて思ってたんだ……だけど、だけど……。
「まだ僕メアド訊けてないのにぃ――――――――――――!!!!orz」
膝をがっくりつき、頭を垂れて叫んだ。
「なにィ!?」
神成先輩が驚いている。もう僕もメアド知っていると思われてたんだ……。
「メアド訊けてなくてスイマセン……。上手く話しかけられないチキンでスイマセン……」
凹みながら呟く。
そうだ。神成先輩がメアドを訊けているというのなら――
「もしかして……今池君も、黒井さんのメアド、知ってる……?」
「え? そりゃぁ、かわいい女の子のメアドだし」
当たり前といえば当たり前だった――――――!!!! うわぁーん!!
そして、はっと気付く。
「ハッ……。も、もしかして、千羽も黒井さんのメアド、知ってる……!?」
「いや、知るわけないだろ」
千羽はあっさりとそう答えた。
さすがに知らなかったか。安心した――
「葉乃以外興味ないから知るわけないだろ」
その回答は求めてない――――――!!!!
「女子のメアドなんて必要ない! 葉乃のだけで十分だ!」
「あ、ちゃんと普通の男友達のは入ってるんだ。安心した。って、僕、女の子扱い!?」
千羽の発言に、ついツッコんでしまうのだった。
というか、今池君にもだけど、女の子扱いやめてほしい……。
「と、とにかく。来週から、またよろしく頼むぞ」
「は、はい……」
神成先輩は頷く僕の頭に手を置きぽんぽんと撫でると、力強く笑ってみせた。
それにしても。ショックなことが多かった1学期最終日……。
でもまぁ、みんなにまたすぐ会えるってことが分かって、ちょっと嬉しかったりする。最初はあんなに嫌がっていた部活だというのに、なんだか不思議な気分だ。
特に、黒井さんとは、気まずいまま2学期まで会えないんじゃないかと思っていただけに――ありがたいことだった。
小さく微笑んでから、僕は顔を上げて、じりじりと照り付ける太陽を睨んだ。
青い空、白い雲。夏はまだ、始まったばかりだと――
※ヤバイ男はヤクザ(神成先輩)が注意しておいてくれました。多分、もうしないでしょう。
そして、今池君はこの日1日、ちゃんと音無さんを恋人としてデートしたそうです。もうくっついちゃえばいいのにと思う。