グローリ・ワーカ   第2章:災難

「行くゾ――――ッ!!」
「おー!!」
 勢いよく叫ぶストームに、つられてティルも元気よく叫ぶ。
「はぁ……」
 マニュアは横で溜め息を吐いた。
(なーんか……ティルちゃん――だんだんとストームのペースに嵌められてきたような気が……。私も嵌められつつあるけどさ)
 物思いに耽っているマニュア。
 マニュアは大事なことを忘れていた。
「マニュアちゃん!? なにやってんのぉ!!」
「おい! ホワイト!! 危ねーぞ!!」
 ――戦闘中だということを。
「え? ゲ!! わ――――っ!!」
 とっさに避けるが、魔物の爪はマニュアの腕に一筋の赤い線を作った。
「もぉー!! なんてことするの!!」
 怒ったティルが叫ぶや否や、ティルの指先が光り出した。同時になにかを呟きつつ、光る指で空中に魔法陣を描き出す。
 その魔法陣が完成すると同時に、なんとそこから魔物が飛び出した!
 とうぜん驚くストームとマニュア。
「うわわわわわわ!? 魔物っ!?」
「これ――……魔法……!?」
「大丈夫! この子は仲間だから!」
 そうティルは言って、呼び出した魔物を敵であるほうの魔物にけしかけた。
 呼び出した魔物が魔法を放ち、敵を一掃する。
「しゅ、しゅげぇ……」
 驚きのあまり、舌が回っていないマニュア。
「よ、よくここまで、魔物が懐いたね……」
「えへ。なんでだろうネェ」
 照れたように笑うティル。
 しかし、マニュアは純粋に不思議でしかたなかった。
(でも、あっさり大好きな魔物を一掃しているのは、いいのだろうか……)
「おい! まだ来るぞ!」
 その後ろで、ストームが悲鳴に近い声を上げた!
 2人もまた身構える。
「しかも、さっきよりも強そう!」
 またもティルが魔物を呼び出すものの、きりがない。
 いくらフィールド上――そして、森の中だとはいえ、数が半端ない。どうやら、魔物の巣窟に紛れ込んでしまったようだ。
「もー! 作者、どうにかして!」
 って、おい、マニュア!! だから、そーゆーことをこっちに頼むなよ! 物語としておかしいだろ!?ι
「いーじゃん!」
 ティルちゃんまで……。よかないっての! こんなのマニュアの歌で一発だろ!
「ま、待って!!」
 ティルが顔面蒼白でマニュアを止めた。
「……なんで?」
 不思議そうな顔のマニュア。
「こ、心の準備がまだ……」
 そう言うティルの様子に、ストームもなんだか不安になってきた。
「お、おい。大丈夫なのか…?」
「ナニそれ。それじゃ、今度こそいっくよー!!」
「わーっ!! タイム――ッ!!!!」
 しかし、叫び空しく。

 魔物も、ティルもストームも気を失った。
 気絶を治すためには、復活の粉を使えばいいのだが――
「なーに寝てんの!? 起きて! 朝だヨー」
 ……だめだ、こりゃ。